『腕試し大会①』
ここから基本他人視点で展開していきます
腕試し大会、ユ・シシュワは闘技場で行われる。
ウンドラだけではなくアイリス含め周辺国でもわりと有名な大会であるが、ここまで大規模なのは初めてだった。
……にしても、魔法って凄いな。視界が良好すぎる。
まるで何も着けてないみたいだ。
装備も軽いし、呼吸も何の問題もない。
盾もなにも変わってないように見えるけど、他人から見たら片手剣に見えるんだろうな。
どんな形に見えるんだろう。
見渡せばたくさんの人でごった返している。
参加する人と、観客。
まず最初に乱戦で数を減らすらしい。
だいたい16人ほどか。
その数に近くなったところで勝者が集められてトーナメント戦になるんだと。
特別観覧席を見る。
ここからは遠くて見にくいけど、ターリャが座っているはずだ。
舞台に司会者が立ってマイクを手に取る。
さて、ターリャの為に頑張りますか。
一般観客席よりも頑丈な魔法が掛けられたガラスが張られた席から身を乗り出してトキを探す。
「うーん」
「おりましたか?」
護衛と保護者代わりの顔見知り職員ハバナがターリャに話し掛ける。
ターリャは目を凝らして人混みを見つめ、青と緑の装飾が入っている鎧を見つけた。
トキだ!
「見つけた!」
「どちらですか?」
「あの列のはしっこの方」
「あ!おりましたね!いやぁー、サイズが合っているようで安心いたしました」
なんだかトキの周りが不自然に若干空いている気がするけど、ターリャはトキに向かって「がんばれー!」と声を上げた。
隣に頭のおかしい竜種装備フルセットの大男がいる。
見たところ武器は巨大な盾だけなんだけど、威圧感が凄い。
なんだこの人、超怖いんだけど。
目の前で司会の人が開会の言葉を述べているが何も耳に入らない。
神様。
どうかこの隣の人と当たりませんように!!
神に祈りを捧げた所で、スタッフに呼ばれてどこかに行った。
なんだ?
思わず目で追っていると、まさかの各組織からのゲストの一人だと紹介された。
ギルドからのゲスト、名前はザルスとかいうめちゃくちゃかっこいい名前だった。
誰なんだろう。
リストで見た覚えも無かったし(上級だと名前が載る)、なにより記者たちがあんな凄い姿の人を放っておくはずがないだろう。
「すげえなあの装備」
「なんの竜種だあれ?」
「さぁ?青ってことは水か氷に縁があるって事だろ?でもあんまり見ない色だな」
周りもギルドからのゲストに興味津々なようで、そんな声があちこちから聞こえてきた。
もう一度ザルスを見てから、他のゲストも見てみた。
商人代表のルルエブに衛兵代表のオーモダズィ。
この辺は常連で、お遊びだ。
といってもオーモダズィは衛兵代表なだけあって本気で来るだろうけど。
ん?
あれは魔法師の見習いバッチ?
また今年も経験積ませに来たのか。
『それでは!まず生き残り戦を始めます!選手方は配られた番号ごとに集まってください』
会場入りするときに渡された札を見ると一番だった。
壁際に大きく数字が書かれた看板が掲げられている。
よーし!頑張るぞ!
負けた。
「お疲れリヨンド。負け組は大人しく観戦してようぜ!」
「ううう……、くやしぃ……」
さすがに冒険者三年目だとキツかったか…。
この闘技場には怪我をしてもリタイア室に転移すれば即座に回復してくれる高度な魔法が張られている。
だから生き残り戦で負った怪我はもう痛くないのだけれど、心が痛かった。
秒でやられるとは思わなかったのだ。
背中を袈裟斬りでざっくりだ。
凄く痛かった。
そのまま戦い続ける狂人もいるのだけれど、いかんせんリヨンドはちょっと喧嘩が強い冒険者三年目の人間だ。
生き残った化物とは違うのだ。
リタイア宣言するのが悔しかった。
でもそうしないと転移魔法が作動しないし痛いままだった。
友人が歩き販売している人から水を買ってきた。
「負けたからには応援頑張ろうぜ」
「そうだな」
水を飲む。
体にすーっと染み渡った。
「ところでリヨンドは応援したい奴はいるか?」
「んー。あ!」
そういえばと、リヨンドは友人の方を向いた。
こいつは参加してないでずっとここで見ていたから分かるだろう。
「あいつ生き残ってるか?」
「あいつ?」
「全身竜種装備の男だよ!確かザルスとかいう」
「ああー、あいつか。普通に生き残ってたぞ」
「おお!」
さすがはゲストなだけある。
やっぱり俺がリストで見逃しただけで凄い奴だったのか?
「いやぁ凄かったぜ!あの目立つ装備だもんよ、周りの奴らが一斉に攻撃してきたところをあいつなにしたと思う?」
「なにしたんだ?」
ぶふっ!と友人が思いだし笑いをした。
「あの装備でめっちゃ高く飛び上がって、襲ってきた連中使って玉突き事故起こさせていたよ(笑)
あんな戦い方有りか??」
ゲラゲラ笑う友人。
そんなこと不可能だろと思ったとき、そういえば竜種装備は恐ろしく軽いと聞いたことがある。
ならば可能か?
いや、だとしても脚力半端ないだろう。
その後の話を聞いていると、奴は武器を一切使わずに勝ったらしい。
なんで武器を使わなかったのかというと、生き残り戦で丸腰参加してたんだと。
それを聞いてリヨンドは鳥肌がたった。
「決めた!俺はザルスを応援するぞ!」
「ターリャさん」
「はい?」
「トキ様はいつもあんな戦い方を?」
あの体格では考えられない動きでトキは生き残っていた。
跳んで避けて殴って蹴る。
たったそれだけなのに、集中砲火を受けていたはずのトキは襲ってきた連中全て伸していた。
「トキは人間相手なら凄く強いんだって」
「へぇー…」
そんなトキに軽い竜種装備は、まさしく鬼に金棒。
期待以上の成果を残してくれそうなトキにハバナは身震いをしたのだった。




