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『竜種装備』

 二週間があっという間に過ぎた。

 基本村で作業とかターリャの修行を見ていたら光のごとく過ぎ去った。

 いつの間にかターリャが新たな技を開発していた。

 技名はすべりだい。

 水の帯と水の盾を合体させて、帯の上を滑るように移動できるようにしたとか。

 ちなみに移動対象は俺。

 ターリャは滑らないのか?と訊ねたら「怖い」といわれた。

 自分で作っといて……。


 それはさておき。


「装備を取りに行こう」

「楽しみだね!」


 工房へ行く途中に何人かの職人とすれ違い挨拶をした。

 この二週間、ちょくちょくここに来ていたからすっかり顔馴染みになった。

 特にターリャなんかはドラゴンの加工をみて「凄い凄い」と誉めちぎっていたからか、職人の癒しとの称号がついていた。


「よお、早かったな」

「おはようございます」

「リープッタさんおはようございます!」

「おおお!今日もターリャは可愛いなぁ!」


 リープッタさん。

 顔デレデレですよ。


 そんな俺の視線に気が付いたリープッタはゴホンと一つ咳払い。


「ささっ、こちらへどうぞ」


 案内された部屋に装備が置かれていた。

 お願いしていた手甲にマント、上着の下に着る防刃チョッキ的な服。

 そして脚用のカバーも出来上がっていた。


「これがドラゴンの牙の短剣。アホみたいに切れる」


 ほれ、と普通の刃物では切る事すら出来なさそうな鎖を寄越してきた。


「切れるんですかこれ」

「やれば分かる」


 嘘だろと思いながら切ってみたら、少し抵抗があるものの切れた。

 よくよく考えたらこの牙って研がなくても鉄の鎧貫通するもんな。

 そりゃ研いだらこうなるわな。


「専用の鞘だ。全部で3つある」

「分かりました。ターリャ、はい一つ」

「ん!」


 短剣を受け取って腰のベルトに差した。

 結構刃こぼれしてきていたし、良いタイミングだった。


「この剣軽いね!何も無いみたい!」

「重かったらドラゴンは飛べないからな」

「そっか」


 そんな理由で竜種、特にドラゴン装備は頑丈なくせにやたら軽い。

 他の装備と比較して圧倒的に動きやすい理由から大人気なのだ。


「着替えてみてくれ。寸法が合わなかったら微調整する」

「分かりました」


 リープッタが部屋から出て、俺達は着替えてみた。


 凄いな。

 マントも軽いから置き忘れる可能性がありそうだ。

 気を付けないと。


 扉がノックされる。


「もういいか?」

「どうぞ」


 リープッタが入ってきて俺達をまじまじと見る。


「うん。サイズは良さげだな。可動域はどうだ?体を動かしてみろ」


 いわれた通りに動かしてみた。

 跳んだりしゃがみこんだりその場でもも上げなど。


「問題なさそうだ。ターリャは?」

「動けるけど…、少し大きくない?」

「ターリャは成長期だからな。今ぴったりに作ってしまうと後々大変になる」

「そうなの?」


 ドラゴン食べて成長するターリャだ。

 急に成長するから致し方ないだろう。

 といっても今回はドラゴン食べて成長しなかったから、まだ量が足りないってことなんだろう。

 オウリも言っていた。

 セリアはドラゴンを食べて成長するけど、毎回成長するわけではない。

 成長する度に食べるドラゴンの量が増えていくらしいと。

 ターリャはあと何匹で成長なんだろうな。


「良さそうだな。じゃあ残りのドラゴン素材の鑑定に行くか」









 目の前のパンパンに詰まった麻袋を見つめる。

 重っ。


「これ本当に加工代抜いたんですよね?」

「おうとも。ドラゴン自体にそこまで大きな傷跡も無かったからな。骨は折れていたが、それを差し引いてもかなりの上質といえる」


 ということは、おそらく逆鱗一突きで仕留める連中は更に報酬が上がるってことか。

 ま、俺はおそらく無理だろう。

 攻撃手段がダメージチャージしかないもんな。


 麻袋をターリャが持ち上げてみた。


「剣より重いよこれ」

「俺の盾くらいはありそうだな」


 ターリャの持っている麻袋を片手で持ち上げてみた。

 うん。

 なかなかの重さ。


 これで人殴ったら間違いなくやれる気がする。


「ん?どうした?ターリャ」


 ターリャが俺をガン見している。

 いや、俺の持った袋をか。


「決めた。ターリャも腕の筋肉つける」

「……いや、いいんだよ?ターリャは筋肉付けなくて」


 筋肉よりも水の技を磨きなさい。

 というか、確実に育て方を間違えてる。

 どうしよう。


「ギルドで保管して貰えば良いじゃねぇか?」

「やっぱりそれが一番か」


 ギルドには良い印象が全くなかったから、今まで出来るだけ財産を手元に置いておくか隠すかしていたんだけど、そうも言ってられなくなってきたな。

 またデータ破損云々でお金を掠め取られたりしないだろうな。

 あれ割とトラウマなんだけど。


「ん?どうした?そんな難しい顔して」

「……いや、俺の名を語った奴が横取りしないかと少し心配で」

「ふむ。まぁ、そういう心配は仕方ないな。大金だしなぁ」


 リープッタが理解してくれた。


「なら、タグ入力ではなく紋様入力にしておくのはどうだ?それならタグを盗まれる心配はないし、ちと手数料が高いがあんたなら屁でもない金額だろう?」


 なんだ?紋様入力って。


「なんですか?それ」

「ここ最近流行り始めた新しい手法よ。腕のどっかしらに刺青みたいに魔方陣を彫り込んでおくのさ。そうすれば絶対に安全だ」

「腕を落とされる可能性は?」

「何でも血液魔力循環が必須とかで、死体だと意味がないらしい。ただ、そうすると死後親族が故人の財産を相続できなくなるってんでまだ改良途中なんだが、それ以外は優秀だ」

「なるほど」


 それなら安心だ。

 いや、一つだけ疑問があるがそれはギルド職人に聞こう。


「リープッタさん、色々ありがとうございます」

「良いってことよぉ!こっちも竜種素材で潤っているし、互いに利益が出ている。最高の取引だった。嬢ちゃんの癒しもあるしな」


 職人たちはターリャの見学を楽しみに仕事に来ているらしい。

 ターリャがこの村去ったら大変じゃないか?


「いい服をありがとうございました!」

「おうこちらこそだ!」













「えええええええ!!!またあそこ行くの!!!?」

「作って貰いたいのがあってな」


 リープッタに相談して、選別した素材を抱えて占いの館へと向かう。


「なんでなんでなんでなんで???」

「もう腕を折りたくないからな」

「ぷううううう!!」


 いやいやターリャに盛大に服を引っ張られながらも占いの館へ到着した。


「あれ?」


 なんか前と雰囲気変わったな。

 外見変わらないのに。


「こんにちは」

「あら、本当に来たわ」

「?」


 服がおとなしい。

 いや、ベールは着けているけど、全体的に落ち着いているっていうか。


「もう、今日はなにもしないわよ」


 占い師が俺の服を鷲掴んでいるターリャに声をかけたが、離さない。

 信頼ゼロである。


「まぁいいわ。で?どんなご用?」

「衝撃を逃がす魔法具を作って貰いたいんですが」


 言いながら素材を見せる。


「ドラゴン素材をむき出しで抱えてくるなんて、変わってるわね貴方」

「へ?」

「そこの机に置いて、ドラゴン素材だったらあっという間に作れるから」


 示された机に置くと、占い師が魔法陣が彫られた台を持ってきた。

 なんだこの歯車模様びっしりの魔法陣。

 さすがのターリャも変わった魔法陣に好奇心が勝てずに台をまじまじと見つめている。


「さて、どんなものが望みなのか詳しく話して」


 空中で衝撃を逃がす旨を伝えたら軽く引かれた。

 そうだろうな。

 だいたい衝撃を逃がすっていったら、打ち合いか防御の際のだ。

 空中で衝撃を逃がすってなんぞそれ状態。


「……ふーん。面白そうじゃない。ちょっと待って、術式組み立てるから」


 しばし腕を組み、目をつぶって考えている占い師。

 魔法具創作を始めてみたけど、なんつーか、イメージと違ったな。

 美術の時間に出された課題に悩みまくる俺達じゃん。

 完全に既視感。


 黙って待っていること数分。

 カッと目を見開いた。


「閃いた!」


 すぐさま台の上に素材を並べ、台を掴んで魔力を注入。

 すると素材が光輝いて勝手に動き始めた。

 ほどけて結合して縫い合わさっていく。

 その光景に思わず見とれていたら、五分もしないうちに銀色の環が二つ出来上がった。


「ふう。こんなもんね」


 額の汗をぬぐった占い師が環を手に取った。


「ほら、出来たわよ」


 差し出された環を取る。

 まるで夜光貝で作ったアクセサリーのようだ。


「それを足首に装着するの。そうしたら勝手に適正な形に収まってくれるわ」

「足首に…」


 ブーツと靴下を脱いで填めてみると、少し大きめだった環が縮んでぴったりとくっついた。

 ん?これ外れなくない??

 厚みも完全に消えてしまった。


「あの、取れなくなったんですけど」

「…………、……しまった設定忘れた………」

「はい?」

「大丈夫大丈夫皮膚と一体化しているから取らなくても平気。壊れたら外れるけど大丈夫大丈夫」


 大丈夫連発してくるんだけど余計心配なんだが。

 いてててて、ターリャ引っ掻いて取ろうとするな。


「とにかく、これで衝撃は気にしなくていいわ。なんだったらかなりの高度から飛び降りても対応してくれるようにしたから羽目外せるわよ」

「崖から飛び降りる趣味はありませんが」

「万が一によ!さてと、対価はこの余ったドラゴン素材をまるっと分ね」

「……」


 素材を見る。

 結構余ってるなおい。

 いいか、別にもう要らないし。


「どうぞ」

「やったあ!」


 ブーツを履き直した。

 怖いくらい違和感がない。


「じゃあ、ありがとうございます」


 お礼を言って店を出ようとした時、「待って待って!」とまた呼び止められた。


「お嬢ちゃん、貴女にはこれあげるわ」

「…なにこれ」

「水筒よ。容量が見た目以上にあるわ」

「?? ありがとうございます」


 なんでくれたのかわからないけど、お礼を言うターリャ。


「どうせ貴方たち南の砂漠抜けるんでしょ?どうせ要るものだもの。私は要らないから在庫処分」


 理由はどうあれありがたい。


「ありがとうございました」

「いいのよー!その代わり次来た際には貴方の連絡先を──「それでは失礼します」


 店を出た。









 数日後、ターリャが大きな紙がほしいとねだってきた。

 あいにく手帳しかなかったので、道具屋で購入したら、部屋に戻るなり黙々と作業し始めた。


「何しているんだ?」

「お礼」

「お礼?」

「ターリャもなにか形に残るお礼したい」


 邪魔しないようにターリャの紙を覗いてみたら、職人の皆さんと解体されているドラゴンと、俺とターリャが描かれていた。

 なるほど。

 考えたなターリャ。


「色鉛筆買ってくるよ」

「え!いいの?」

「もちろんだ」


 せっかくのお礼だ。

 豪華にしてやろうじゃないか。







 ターリャが渡したイラストで職人全員号泣した。

 怖い。

 数秒後ラミネートされて額に入れられて飾られた。

 怖い。


 でもターリャが嬉しそうだからいいか。









 村を出て首都へと向かう。

 しっかり魔法具を首から下げて。


「楽しかったな」

「うん!」


 さて、そろそろ真面目にドラゴンの情報を集めますかな。


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