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『行動が読めない』

 ボンッ!と、ドラゴンが燃えた。

 だが、火花を散らして、炎はすぐに消えた。

 ドラゴンはほぼノーダメージ。


「…………うん、そうだよな。そうなるよな」


 火を吐くドラゴンが炎に弱いわけがない。

 妙に納得してしまった。


 そもそもグレイドラゴンも試験のドラゴンも倒せたのは、体内に直接炎をぶちこんだから勝てたもので、外皮に炎をやったことはあんまりない。

 わざと燃やして俺に到達する前に消した経験はあるけど、あれもダメージはなかったはず。

 とはいえ、奴さんは俺の手の届かない上空にいて、倒すにしても反撃するにしても一度降りてきてもらうか、炎以外の攻撃をしてもらわないと俺はどうしようもない。


 まさかこんなアホみたいなことで悩むことになるとは。


 挑発するか?

 でもまた炎だったら正直意味がない。


 ちなみに突然燃やされたドラゴンも軽く混乱していた。

 ドラゴンは自分が燃えたことの意味が分からず、しばらく周りをキョロキョロしていたが、周りに他のドラゴンとかがいないことから消去法で俺が燃やしたと判断したらしい。

 もう一度炎を吐いてきた。

 それを受け止める俺。

 こんな攻撃でチャージたまっても意味ないんですけど。

 しかも一発で満タン。

 何なのこのやり取り。


 ドラゴンと目が合う。


「……」


 ドラゴンと目が合いながら俺はダメージチャージをもう一度ドラゴンに放った。

 燃えるドラゴン。

 すぐに鎮火。

 そこで確信を得たらしい。


『ガアアアアアアア!!!!!』

「!?」


 突然ぶちギレたドラゴンが急降下してきた。

 何なのこのドラゴン。

 行動パターンが全く読めないんだけど。


 ドシンと勢いよく盾に乗ってきてギャーギャー騒ぎながら盾に噛み付いてきた。


「うおっ!!」


 相手が羽ばたいているとはいえ、衝撃がすごい。

 しかも噛み付くと同時に羽ばたきをやめて押し潰しまで仕掛けてきた。

 こいつ、行動がむちゃくちゃだけど、強い!

 押し潰されないように耐えていると、突然すごい力で持ち上げられた。


「うわぁ!?マジかよこいつ!!!」


 盾をがっちりと鷲掴んで、ドラゴンは空へと舞い上がった。


 右に左にと大きく揺られながらどんどん上昇していく。

 このままだとどう頑張っても助からない高度になる!!


 柄を握り引き抜く。


「はなっせ!!!」


 比較的鱗の薄い腹を目掛けて突き出す。

 しかし飛んでいる最中ということもあって、ぶら下がっているだけの俺の攻撃にはうまく力が乗らずにお腹の鱗にぶつかった。

 ドカンと、腹をハンマーで殴られたかのようにドラゴンが大きくよろけて俺を手放した。

 当然ながら空に放り出される俺。


(なんか、なんなの今日。厄日?)


 軽く現実逃避しながら地面に向かって盾を叩き付けた。


「いったぁぁ!!??」


 腕にビリビリと来る衝撃で意識飛び掛けた。

 そうだ、いつも地面に衝撃流すから忘れてた。

 今は流せる場所無かったからそのまま腕に直撃してしまった。


 そのお陰ですぐにチャージマックスだけど。


 ゴロゴロ転がって、すぐさま立ち上がる。


「いつつつつ……」


 よし、折れてない!!まだいける!!

 痛みとわけの分からん事態が重なりすぎてテンションがおかしくなってきた。


「そいやァ!!」


 何回目かのダメージチャージ解放。

 傷だらけになったドラゴンが怒りのままにこちらに突っ込んできていたが、見えない壁に突っ込んだのかと思うほどの衝撃がドラゴンを襲ったらしく、大きく仰け反ったかと思えばそのまま落ちてきた。


 あわててその場から回避すると、ちょうど俺がいたところにドラゴンが落下。

 少し地面にめり込み、大きく広がっていた翼が力無く地面に落ちた。


「……」


 恐る恐るとドラゴンに近寄る。


 動かない。

 足でつついてみた。

 動かない。


 回り込んでドラゴンの顔を見てみた。


「死んでる……」


 目の光が消えていた。

 これは、もしや。

 勝った?


「よっしゃああああ!!!勝ったあああああ!!!!」


 両腕をあげて勝利のポーズを決めた。

 大変だった。

 グレイドラゴンとは違う意味で大変だった!!


「──ああああああ!!!!…、…………」


 なんとなく、視線を感じて振り返ってみた。

 後ろにルシーに乗ったターリャと、ターリャが救援を求めて応じてきた人達が俺を黙ってみていた。





 ……ターリャ、来ていたのなら声くらい掛けてくれよ……。












「ごめんねトキ。凄く喜んでいたから邪魔したらダメかなって…」

「いや、いいんだターリャ。周囲確認しなかった俺が悪い…」


 結局その後、ターリャにドラゴンの光を食べさせないといけない為に、日本ではわりとポピュラーな明後日の方向に指差して大声を上げて気を逸らす作戦でもって何とか切り抜けた。

 そろそろ俺、恥ずかしさで虫になりたくなってきた。


 忘れてたよ。

 助け呼んでたこと。


 結局俺一人で何とかしちゃったしな。


 成長している良い証拠だ。


「おおお!これを一人でっ!」

「見てみろ、状態も結構良いぞ!」

「すごいぞこれ!翼膜もきれいに残っている!」


 ターリャに連れられてきた職人達がワラワラとドラゴンに集まって状態をみている。


「冒険者さん」


 この内の一人が俺の元へとやってきた。


「はい、なんでしょう」


 いかにも職人って感じの男性だった。

 もさもさの髭と凄い筋肉で、本でみたドワーフという種族のイラストが脳内を(よぎ)る。

 その職人がドラゴンを指差して言った。


「あのドラゴンは依頼されたものか?」

「いえ、向こうが勝手に飛んできて襲ってきたので」

「そうか。もしよかったらうちの村で加工することができるがどうだ?もちろんお代は要らねぇ。代わりにちょびっとあのドラゴンの素材をうちの村に回す

 ってのを対価でどうだい?」


 交渉か。


「乗ろう。ただし魔石は洗浄後はそのままこちらに渡してくれ」

「よし、交渉成立だな」


 職人が腰の鞄から発煙銃を空に向かって発砲した。

 煙はくるくる回りながら空高く飛んで、細長い煙の柱を立てた。

 村に向かっての合図だろう。


 ところで。


「……なんだか腕が痛い気がする」


 ズキンズキンと嫌な痛みが脈に合わせて走る。

 まさか。


 ゆっくりと腕を見下ろしてみた。


「トキ、腕なんか太くない?」

「……腫れてるなぁ」


 明らかに腫れてきていた。


「あの、すみません」


 職人に声をかけると、なんだ?とこちらをみた職人が俺の腕をみてギョッとした。


「ついでに回復術士か魔術師さんを紹介してもらえませんか?」




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