『空気が読めないだけであった』
3日経った。
いやぁー、森の中だと人の目を気にすることなく過ごせるから好きだ。
妖魔の襲撃はちょいちょいあったんだけど、ドラゴンに比べたら大したことない。
なんならターリャが良いところまで追い込めるくらいのレベルだ。
最も驚いたのが、ターリャが水面歩行できるようになっていたところだ。
まぁ、ターリャが水の膜で俺の足場を作ったりできるから可能なんだろうとは思うんだけど、純粋にびっくりするよね。
しかもわりと立てている時間が長い。
五秒はいけている。
ターリャはこのまま十分持たすといき込んでいるんだけど、最終的に何になりたいんだろう。
最終目標は女王なんだろうけど。
「ふむ、また青くなっている気がする」
盾を大きくして手入れをしようと元の大きさに戻したらまた変化していた。
今度は端にいくほどに青さが際立って、白い線が細かく蜂の巣のような模様を描いていた。
やっぱりこれってターリャが新しい技を覚えると盾も連動して成長(?)しているような、そんな感じだ。
とはいえ、今のところ何が変わったのか分からない。
判明させるためには使うことが一番だけど。
「……正直、新技を解放できそうな練習法が思い付かないんだよな」
そもそも何の技を会得したのかも分からない。
一覧表とかさ、見れたら良いのにな。
異世界に来て十五年。
そんなことを思う日が来るなんて思わなかったよ。
「ムイムイ獲れた!」
「お疲れさま。おお、結構デカイな」
ターリャが四足のヒヨコを捕まえてきた。
これはムイムイ。
凄く美味い鳥だ。
アビ・ムイムイとかいうアホみたいに大きいムイムイは面白い物体を吐き出すらしいが、まだ遭遇していない。
じたばたと暴れるムイムイを押さえて、作り出した水に沈めているターリャ。
絞めるのも慣れてきている。
おかしいな。
普通の女の子として育てようと思ってたのにな。
どんどんサバイバル力が身に付いていっている。
「トキ焼いて!」
「はいはい」
焼きムイムイを食べながらこれからの事を話した。
とりあえず、村によって魔術師を探す事にした。
そこで人に囲まれなくする魔法具なりなんなりを購入してから、俺達を狙っているドラゴンと準備満タンな状態で挑もうというもの。
本来なら依頼を取ってからのがいいかもしれないが、すでにあちらさんは俺達の事をロックオンしてしまっている。
きっと時間が経てば絶対に探し出して追ってくるだろうから、その前に倒してしまおうという感じ。
もう目立つところでドラゴンと戦闘はしたくない。
さらに大変なことになりそうだ。
「ターリャはドラゴンの位置とか分かったりしないか?」
「さすがにむり」
「やっぱそうだよな」
分かれば苦労はしない。
というか、ドラゴンはどうやってターリャ見つけるんだ?
匂いか??
「できたらこの勝負楽になっちゃうもんな」
「練習してみる?」
「一応やってみて」
「よーし!」
もしこれでできたら本気で才能の塊だぞターリャ。
空を見渡してドラゴンを探す。
さすがに三日目だと諦めてくれたか。
実は昨日まで上空をウロウロていたのだ。
ドラゴンの癖に蛇みたいな性格をしている。
ターリャは頑張ってドラゴンを見つけようとしているけれど、どうすればいいのか分からずに眉間に皺を作っている。
「どうだ?」
「んー……????」
「お互いゆっくり頑張るしかないな」
ルシーに合図を出して、地図に書かれているとある村に向かう。
そこは素材を集めて加工する、要は工業村みたいなところで、そこには魔法の材料を求めて魔術師達も集まるのだそうだ。
そういうところは流行に疎い。
きっと過ごしやすいだろう。
(ついでに良さげな魔法具も手に入れたい)
ルシーを走らせ半日、目的の村が地平線に見えてきた。
もともとこの村を目指していたから着くのが早かった。
よし、まずは腹ごしらえをしてから──
「!!」
眉間に皺を寄せて唸っていたターリャがパッと顔をあげた。
「トキ!」
「どうした?」
「後ろからアイツが来た!」
「なに!?」
後ろを振り返ると、あのドラゴンが俺達目掛けて飛んできていた。
「はあ!?」
何だアイツは!
この前はナイスタイミングとか誉めたけど、今回はタイミングが悪い!!
さては空気が読めないドラゴンか!!
村にこいつを連れて飛び込むわけにもいかない。
とするならばやることは一つ。
ざっと周りを見渡してみてもターリャが隠れられる場所は見当たらない。
「ターリャ、あの水の膜で自分とルシーを覆って、あの村で助けを呼んでおいてくれ」
ルシーの上でゆっくり立ち上がる。
「トキは!?」
「何とか粘って弱らせておくさ!」
ルシーから飛び降り、盾を戻しつつドラゴンへ向けて威圧を放った。
ターリャに向いていた意識がこちらになった。
その隙にターリャが水の膜を使って目隠しをしようと水を生み出した、次の瞬間。
突然思い出したかのようにドラゴンがターリャの方向を向いた。
そして、カカカン、とドラゴンの喉からタンキングの音。
「!?」
嘘だろ!!!??
まだターリャは隠れきれてない。
それに隠れるための水の膜だからドラゴンの炎を防ぐには厚みが足りない。
ターリャもドラゴンの予想外の行動に頭が真っ白になっていた。
ドラゴンの口が大きく開かれる。
「このやろう!!!!」
咄嗟の判断で俺は届かないと思いつつも、盾をターリャへの軌道上に全力で向けた。
ドラゴンの口から大量に炎が吐き出され、ターリャへと向かっていく。
次の瞬間信じられない事が起こった。
ズルリと、不思議な感覚が腕に伝わったと思った。
盾の色が変わった場所が淡く発光し、それは大きく広がった。
「っ!!?」
半径五メートルほどもある薄い水色の物体が盾から形成され、炎を受け止めてみせた。
ガクンと炎がぶつかった衝撃がやってきて、すぐさま体勢を整える。
チャージがぐんぐんと上がっていき、満タンになったところで炎が消えた。
ドラゴンが首を振って何かを探す素振りを見せた。
ターリャがうまく隠れて離脱してくれたようだ。
ガチンと枷が外れた。
「さて、ドラゴン。悪いがターリャのご飯になってもらうぞ!!」
勢いよく剣を引き抜き、ダメージチャージがドラゴンへと襲い掛かる。




