『ウンドラのギルドにて』
ルシーに乗って目的の町へ進む。
元敵地ということもあって結構警戒していたのだが、すれ違う人を見て首を捻った。
「どうしたの?」
ターリャが俺の様子を不思議に思ったのか話し掛けてきた。
「いや、予想と違うなと」
「予想って?」
道でたまにすれ違う旅人を見る。
身なりは冒険者。
「さっきすれ違った人もそうなんだけど、装備とかを見るとアイリスとあまり変わらないんだよ」
「変わるもの?」
「少しはな。俺が元々いたところは寒かったからマントが厚めだったろ?」
「うん。服に綿いれる隙間もあったよね」
暖かい季節だけど、それでも長袖を着ていないとすぐに風邪を引く。
実はアイリスは大陸の中で一番北にある国だった。
ウンドラはそれよりは南の方にあって、パズルよりも少し暖かい。
そうするとどうなるか?
妖魔の分布が変わってくるから、装備がその土地にあったものになってくる。
しかもアイリスとウンドラは未だに交流が薄い。
国境を越えると装備が様変わりすると思ったのだ。
なのにどうだい。
未だにアイリスにいるのかと錯覚するほどに変わらない。
「妖魔の分布が違うから、普通なら変わるはずなんだよ。…なんでだろうな?」
「うーん?」
二人して首を捻るけど分からなかった。
もしや基本装備を作る妖魔は分布が広いのだろうか?
やっぱり本屋か図書館に直行するべきか。
あればの話だけど。
あれ?そもそも文字同じか?
色々な不安を残しつつも、残った食糧を食べながら目的の町へと辿り着いたのだった。
看板を見る。
読める。
もうひとつの看板も見る。
ギリギリ読める。
「? ここはウンドラだよな???」
少し文字に癖があるとはいえ、読める。
それだけじゃない。
冒険者の登録証で町に入れたし、なんなら冒険者の連中はアイリス系のが多い。
ウンドラの人達はアイリスに比べて顔つきも毛質が少し変わるからすぐに分かるけど、このまちで見掛ける冒険者はアイリス人そのものだった。
あれ?
俺が道間違えたか?
「ウンドラじゃないの?」
「…ウンドラと思うけど……地図買ってくるか」
あったらいいな。
道具屋によって地図を購入した。
この地域限定だけど、きちんとウンドラ国と文字がある。
ということはここは間違いなくウンドラなのだ。
「この町はグーラレーウマと言うらしいな」
「ウンドラだった?」
「ウンドラだったよ」
推測だけど、もしかしたらこの辺りはアイリス寄りの顔つきが多いんだろう。
それか、冒険者は戦争関係なくさっきの洞窟で俺たちがここに来たように不法侵入しまくってたとか?
手にある地図を見る。
そうだよな。
じゃなかったら、アイリスでのお金も使えないはずなのに手持ちの硬貨で買えてしまった。
しかも換金所まで教えてくれるという親切ぶり。
店主はウンドラ顔だったけど、着てるのはアイリス系だった。
もうワケわからん。
「なにか食べる前に換金してもらうか」
「換金って?」
「その国で使えるお金に換えてもらう事だよ」
「ふーん」
看板に交換所と書かれた店に入る。
ターリャにはルシーと待ってもらった。
「へいらっしゃー」
適当な挨拶。
「換金してもらえますか?」
「ふむ。お前さんアイリスか?アイリス人には見えんが」
「出身は違いますが、アイリスです」
「そうか。今んところの平均価格はこんな感じになってる」
アイリスとウンドラの価格比較の一覧表を見せられる。
「……ずいぶん違いますね」
「そりゃあな、アイリスが細かすぎんだよ。こっちのが分かりやすいだろ?」
「まぁ、そうですね」
といってもアイリスは日本的な感じで覚えやすかったのだが。
アイリスは千・五百・百・十・一の5つ区切りで、うち十と一が硬貨だった。
一方ウンドラは五千・二千五百・五百の3つで、全部硬貨。
通称ウンドラ硬貨で、金貨銀貨銅貨という色の違いで分かりやすい。
分かりやすいけど、最初は大変だなこれ。
「端数は?」
「どうせこの辺り以外では使えないんだ。捨てるか、もしくはアイリスに戻ったときように持っているやつもいる」
「なるほど」
というより、使えるのはここら辺だけなのか。
ついでに気になること全部質問して、交換してもらってから店を出た。
とりあえず、なんでアイリス人がたくさんいるのか分かった。
ルシーを撫でてやっていたターリャが俺に気付いてやってきた。
この身長差がまだ慣れない。
「交換できた?」
「できたぞ。ついでに色々聞いてきた」
「あとで教えてね」
「もちろんだ。さて、早速だが、宿を探さないとな」
宿を取って、ルシーの預け先も見つけた。
しばらくここに滞在してお金を稼ぐつもりだ。
「あとはとにかく基本知識を身に付けないとな」
ウンドラでやってはいけないことをきちんと把握しておかないと、めんどくさいことになりかねない。
幸いなことに、この町に小さいながらも図書館があるらしいから、そこで勉強をしようと思う。
「ターリャはあれ覚えたいな」
「なんだ?」
「ギョサィユプ語」
「……なんで?」
「あれで詠唱できたらかっこいい」
「最近の向上意欲凄いな」
「へへっ」
確かにあれはかっこよかった。
俺も使ってみたかったな、魔法。
「あればいいな。ぎょさいゆぷ語の本」
「トキの発音なんか変~」
「口の動かしかた分からんから仕方ない」
タクーンヌォエフクよりも舌が回らん。
やっぱり日本人特有の発音の仕方が足を引っ張るのか。
大変だったもんな、話すのが凄く大変だった。
綺麗に発音できなくて、「ペーザ?」って毎回聞き直された。
「ところでその図書館ってのはどこにあるの?」
「ああ。あそこだ」
俺が示したのは、大きな建物。
ウンドラでの冒険者ギルドだった。




