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『ウンドラ国』

 ドラゴンを倒したという合図の携帯花火を打ち上げ、何も剥ぎ取らずにルシーの手綱を引いて登っていった。


 今までのお礼をするつもりだ。

 内部が焼けたとはいえ、爪も牙も魔石も残っている。

 売れば相当な金額になるだろう。


 それに、今はそれよりもターリャが気になってしかたがない。


「本当に大丈夫なのか?」

「うん。特になにもないよ。……ちょっと歩きにくいくらい?」

「え!?それはダメじゃないか!?」

「ちがうちがう!視線がいつもよりも高いから変な感じなの!」

「そうか、良かった成長痛で痛いのかと…」


 俺は成長痛が痛すぎて夜眠れなかったから、心配してしまった。


「成長痛?成長したら痛くなるの?」

「そういうのがあるんだ」

「へぇー!」


 とはいえ、ターリャはなにもなさそうだし、服も大きめのものを購入していたから何も問題はない。

 心配だけど。


 突然大きくなったターリャにルシーも初めは動揺していたけど、だんだん慣れてきたのか山の途中で乗せてくれるようになっていた。


 そうしてしばらく登っていると、洞窟に辿り着いた。

 ここがウンドラまで続いているナーサ洞窟だ。


「さて」


 この世界での洞窟を抜けるときのアイテム、溝抜きといわれる道具を取り出す。

 洞窟が暗くても、地図が見えにくくても迷うことなく進める。

 一見するとただの棒だけど、その表面にはスタートからゴールまでの溝が掘ってあって、更にその溝にはスライドできるボタンが取り付けられている。


 枝分かれの所はボタンが入りきる前に進めなくなっていて、絶対に正解の道しか表示されない。


 道具屋で売っていたけど、高かった。

 けれど、迷子になるよりはずっとマシだ。


「ターリャ、灯りを」

「はい」


 手際よくランタンに灯りをともして、それの光を拡張する包みで覆った。

 半透明の筒なんだけど、何故かこれをすると凄く明るくなる。

 多分、普通の懐中電灯よりも明るいだろう。


 虫除けも、ルシーの鞍と俺のベルトに引っ掛けて。

 これでよし。


「目標は2日だ。いくぞ」

「うん!」








 洞窟内は意外と快適だった。

 広さがあったっていうのはもちろん、土よりも岩が多くて、思ったよりも湿度が低い。


 時折見掛ける壁に書かれた謎の文字のおかげか。


「これジョコーさんがノンラ ドラ トオーユー《簡易音字魔法陣》だって。ターリャもちょっとだけ覚えたよ」

「? のん? よく分からんが凄いものなんだな」


 いつの間にかターリャが魔法陣の書き方を習っていたらしい。

 ついこの前まで文字を覚えるのに必死だったのに、子供の成長は早いものだ。


「俺も覚えようかな」

「トキは魔力ないから発動できないよ?」

「……なるほど。じゃあいいや。別の覚える」


 魔力が欲しいと思うこの頃。

 もし俺に魔力があったらどうなっていたんだろうな。

 そうは思うけど、今の俺にはこの盾があるから、十分なのかもしれない。


 そういえばターリャに何でドラゴンから出てきた光を食べたのかと訊ねたら。


「……無意識…」


 とのこと。

 もしかしたらターリャの種族はなにか特殊な習慣があるのかも。


 突然成長もするし。

 そうだ。

 ウンドラに着いたら獣人関係の本でも購入して少しは勉強をしておかないとな。



 そんな感じで特に何事もなく洞窟を進み、遂に洞窟を抜けたのだった。


 目の前に広がる夕陽に目がやられそうになる。

 西側に出たのか。


 服をターリャが引っ張って、指差す。


「見て、あれ」

「なんだ?」


 示す方向に目を向けると、山脈が真っ赤に燃えていた。

 比喩ではあるけれど、夕陽の光のせいで山が真っ赤になっていて、幻想的な光景を作り上げていた。


「海の夕陽も綺麗だったけど、山も凄く綺麗」

「そうだな」


 ターリャが感動している中、俺は空腹というのもあってか、イチゴケーキが食べたくなっていた。

 あれが全部イチゴなら最高なのにな。


「こんな時間で下山するのはキツい。今日はここで野宿しよう」

「洞窟の中じゃないから火を使っても大丈夫?」

「ああ。今日はスープにしよう」

「やったあ!」


 手慣れた様子で火を着けたターリャが、ウキウキと鍋に水を入れ、携帯食糧の固形スープの元を入れた。

 もともとはスープの缶詰めを持ち歩いていたんだけど、それだとかさばるとジョコーさんに言われ、おすすめの固形スープの元に切り替えた。


 乾燥させた具材をスープに入れ、ターリャが手際よくパンをスライスすると、俺に手渡してきた。


「火が使えて嬉しいか?」

「そりゃ嬉しいよ。洞窟の中では窒息の可能性があるから、冷たいものしか食べられなかったし」

「まぁな」


 キューナンブ石(カイロ的なの)を持っていれば洞窟の中でも少しは温められたけれど。

 あれは恐ろしく高額で、手が出せない。

 もう少し価格が下がらないだろうか?


 ルシーにも残し少なくなってきた干し草を与えた。

 こいつの餌も補充しないとな。

 財布の中身も心配になってきている頃である。


 空一面の星空を二人と一頭で堪能しながら眠りにつき、翌日の早朝。


「いっくぞー!」


 下山を開始した。

 目指すは洞窟から見下ろしたときに見つけた街、の更に向こう側の町。

 国境沿いは兵士がうろついている可能性があるから、なるべく離れた所で行動したい。


 なにせ、ここは元敵地なのだ。


「ウンドラ国か。ご飯美味しいかな」


 俺がそう言えば、ターリャが素早く反応し。


「うん!美味しいご飯が食べたい!」

「だな。よーし、気を引き締めていくぞ!」

「了解!」





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