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『ドラゴン』

 ドラコンが怒りの咆哮をあげる。


「…あいつ、俺の事覚えてるな」


 初っぱなからぶちギレモードときた。

 遊ぶ気なしの本気の咆哮で、尻尾なんか横の岩場にバシンバシンと勢いよく打ち付けて怒りを露にしている。

 そりゃそうだよな。

 その全身に刻み付けた傷痕、俺の攻撃が原因だもんな。


 ドラゴンが突進してきて、同時に煙を吐き出した。


 こいつ、俺の弱点も把握済みってか?

 だが残念だな。

 俺もそいつの弱点を把握してんだよ。


 ガルアの助言で買っておいた、打ち出し型簡易火種弾(形状は太いペン)を煙に向かって発射すると、煙が燃え上がって俺に届く前に霧散した。

 あの爆発は、竜のタンキングで煙に着火しているだけらしいので、竜が吐き出している最中に燃やしてしまえば解決する。


 現に、ドラゴンが燃やされた瞬間に慌てて飛び退いているからな。


 不満そうに吠えるドラゴン。

 次の瞬間、牙を剥き出して襲ってきた。


 手加減する気一切なし。

 はじめから全力攻撃で、たった一撃で盾のチャージが半分埋まった。


 地鳴りのような唸り声を上げながら、この前よりも激しい攻撃を浴びせかける。

 頭上からは全体量を乗せた爪が振り下ろされ、横からは遠心力で速度を増した尾の薙ぎ払い。

 一分にも満たずにチャージはマックスだが、まだだ。

 今はまだその時じゃない。


「はっ!」


 ドラゴンが後ろに飛んで翼を広げた。

 ガルアの言っていたドラゴンの最大武器。


 すぐさま盾を縮小させてターリャとは反対方向の岩影へと飛び込んだ。

 次の瞬間、ドラゴンが大きく翼をはためかせて暴風を巻き起こした。

 竜巻にでも襲われているんじゃないかと思うほどの暴風に、身を隠している岩が飛んできた石によってガリガリ削られている。

 良かった。

 ガルアにあらかじめ聞いてなかったら絶対に盾で防ごうとしていただろう。

 そうすれば、あっという間に吹っ飛ばされてたか、地面に押し潰されてた。


 咆哮交えでまた翼をはためかせる。


 俺だけを狙っているからターリャには被害がいってない。

 けれど、いつまでもこうしているわけにはいかない。

 隠れている岩はどんどん削られていて、おそらく正面はヒビでも入り始めているだろう。

 嫌な音がする。


 しかし、俺はこの時を待っていた。


 ロックの外れた柄を握る。

 まずは、一つ目。


 勢いよく抜き放った剣から、溜めに溜めきったダメージが放出されてドラゴンへ向かって飛んでいく。

 一瞬変な音がしたかと思えば、遅れて衝撃波がやって来た。

 風が弱まってる。

 隠れながら様子を伺えば、ドラゴンが血だらけになっていた。

 だが、前よりかは傷が浅いようにも見える。


 なんでだ?と、ドラゴンを観察すると、ドラゴンの足元に奇妙な跡を見つけた。


「あれはもしかして噂に聞いていた種族固有スキルの“装甲”か?」


 妖魔は人間同様スキル持ちが存在する。

 それは特に竜種に多く見られ、しかも複数所持する個体もいる。

 そのなかで厄介なのが“装甲”だ。

 通常の鱗などの防御力に加えて、魔力で更に外側に装甲のごとき結界を張るのだ。


 その証拠にドラゴンの周りには俺のダメージチャージを弾き返そうとした跡が残っていた。

 体に触れる前に何かに接触して弾き返された衝撃が地面を抉っている。


 装甲を突破するにはするには、その更に上をいく威力を出して叩き割らないといけない。


 なんとかさっきのダメージチャージは通ったようだけど、もし何度も使えるのなら、最悪俺が逆鱗に触れる前に弾かれる可能性がある。

 バレないように動かないと。


「!」


 バチバチとドラゴンの口から激しくはぜる音がする。

 怒り狂ったドラゴンが煙を吐き出すと同時に翼をはためかせた。

 予想外の合体技に逃げる判断が遅れた。

 煙に巻かれ、大爆発を起こす。


 とっさに岩影で縮こまって盾で防御して凌いだが、凄まじい威力だ。

 今の一撃でチャージが溜まった。


「うおっ!?」


 移動しようとした瞬間、ドラゴンの爪が盾を掠めすぐ横に落ちてきて、すぐさま逃げる。

 ドラゴンは攻撃方法を変えたらしい。

 今までは接近戦だったが、それだと俺の盾で防がれると踏んで、炎を多めにして仕留めようとしてくる。

 それなら!


 盾を縮めて身を軽くすると、縦横無尽に駆け回って攻撃を受け流した。

 煙に巻かれる前に抜け出し、ドラゴンの方へと接近していく。


「!」


 羽ばたきで吹っ飛ばされた。


 空中で身をよじって着々体勢を整えようとすると、すぐ近くにドラゴンが口を大きく開けて俺を喰おうとしていた。

 すぐに盾を戻して口を殴り付けて回避。


(あれか)


 首の根本の逆鱗を確認した。

 あの距離なら、いける。


 バッグからミント液入りのビンを出してドラゴンへ向かって投げつけた。

 体に降りかかるミントの香りが辺りに広がって爽やかな空気を作っている。

 着地後転がって立ち上がり、ドラゴンの元へと駆ける。

 ドラゴンは巨体な分、振り返るのが遅れる。


「!?」


 煙が地面を這ってくる。

 ドラゴンめ、地面に向かって煙を吐いたな。


(けど、そんなのは関係ない)


 大きく地面を蹴り、岩を蹴り、ドラゴンの動きに合わせる。

 煙が爆発するが、俺は今その攻撃範囲外だ。

 ミントのおかげでドラゴンは今匂いで俺の位置を把握できてない。

 ドラゴンの視界から外れたまま地面に到達し、ドラゴンの懐へと入り込んだ。

 ドラゴンは見失った俺を探しているが、俺はもうお前の懐深くに入り込んでるぞ。


 ロックが外れた柄を握り、引き抜く。

 チャージは溜まったまま、青白い光が剣を取り巻いている。

 ドラゴンはまだ俺に気が付いていない。


 ガルア直伝中段突きの構えをとり──


「ふっ!」


 全力で逆鱗を突いた。

 鱗の隙間の皮が裂けて、剣が深く突き刺さる。

 そこでようやくドラゴンが俺に気が付いた。


 痛みに叫ぶドラゴン、次の瞬間には怒りに任せてどんな攻撃をしてくるのか予想もつかない。

 その前に仕留める。


「吹き飛べ!!!」


 溜めきったチャージを解放する。

 視界が白に包まれ、爆音が周囲に響き渡った。










「……いった」


 あまりの衝撃に吹っ飛ばされた。

 俺、ヘルメット装着してから戦った方が良いかもしれない。

 今のところ頭を打ってはいないけど、そのうちしこたま打ちそう。


「どうなった…?」


 起き上がりつつドラゴンを見ると、体のあちこちから煙を吐き出して倒れていた。


 炎耐性のあるドラゴンでも、さすがに体内で爆発が起こればどうにもならなかったようだ。

 焦げ臭い匂いを撒き散らすドラゴンに近づいて生存確認をする。


「……ふぅー…、やった」


 ドラゴンは息絶えていた。

 俺の勝ちだ。


「ターリャ!もう出てきていいぞ!」


 俺の呼び掛けにターリャがルシーと共に顔を出してこちらを見ると、すぐさまやって来た。

 ターリャがドラゴンを見て、わあ!と声をあげる。


「すごい!トキがドラゴン倒しちゃった!」


 ルシーから降りて近くでドラゴンを眺めるターリャ。

 そんなに近付くと、さすがにまだ熱いぞ、と声をかけようとしたその時。


「!!」


 ドラゴンの体とターリャの体が光り、ドラゴンの中から特に光輝く何かが抜け出した。

 それはまるで小さな太陽のようで、ふわふわしながらターリャの元へと飛んでいく。

 ターリャが手を差し伸べると光は手の中に収まり、それをターリャが食べてしまった。


「た、ターリャ?」


 何をしてんだ?


 ごくんと、喉を鳴らしてターリャが光を飲み込むと、再びターリャの体が輝いて、膨らんだ。


「え」


 光が収まった時、俺は驚いた。


「ターリャ、お前…」

「ん?」


 ターリャがこちらを振り返る。


「さっきよりも背が高くなってないか?」


 ドラゴンの光を飲み込んだターリャの体が、成長していた。




三章終了

書き留め期間に入ります

追記でガルアとかの情報はあげるかもです

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