『ターリャとお出掛け』
精霊というのは、ある一定期間で突然入れ替わりを行うのだという。
それは精霊を代表する長が代替えをするためで、代表が変われば世界の気候から何もかもが変化する。
それを『精霊の代替え』という。
四つの光が描かれたイラストを見詰める。
どうやらこの光が精霊らしい。
色は青、赤、白、黒の四つで、それが世界の中心に向かうというもの。
ページを捲っていく。
しかし精霊の代替えは簡単なものではない。
世界の四隅で卵から孵った精霊の主になれる四精は波長の合う人種の助けがなければ中心には辿り着けない。
何故なら四精は幼い姿をしており、か弱く、強い魔力を秘めている。
それを食らうドラゴンに狙われるからだ。
精霊は一人の人種を連れだって旅立った。
祝福を与えて、王になるために進んでいく。
そこで絵本は終わりだった。
前編の文字か、1巻などの文字を探したけど見つからない。
「ターリャ、こういうファンシー系好きだったのか」
そうだよな。
女の子だもんな。
今度本屋に寄ったら買ってあげよう。
ガルアの弟子になって早一週間。
ようやく安定して印を突けるようになってきた。
「よし、次はこれだ」
木から紐で下げられた板に描かれた印を突く訓練が始まった。
固定されたのと違い、こちらは動くから難易度が高い。
でもこれを難なくできるようにならないと、ドラゴンは倒せない。
あのドラゴンはずっと動いていたからな。
動けなくさせる術があれば楽だったんだけど、そんなことをいっていられない。
それと平行して、ダメージチャージを溜める練習も始まった。
まずはダメージを溜めないといけないから、街のそとにある木にぶつけてダメージを溜める。
妖魔しかダメージが溜まる仕様じゃなくて本当に良かったと思う。
さんざんぶつけてメモリをマックスにすると、枷が外れた。
「じゃあ、ゆっくり抜いてみろ」
ガルアの合図にしたがって、慎重に抜いた。
「あ」
抜いた瞬間に衝撃が飛んでいって木が大きく揺れる。
「駄目か」
「溜める感覚が難しいですね」
まるで重力に従って落ちる物を、手を動かさずに止めろと言われている気分だ。
「そもそもお前さんは魔法使えないんだよな」
「はい」
魔力の欠片もない。
「地道に探っていくしか無さそうだな」
「ですね」
そんな感じでコツコツと、どうにかして留めることができないかと模索するも、全く出来ずに二週間が過ぎた。
ちなみに俺の戦闘能力はちゃんと上がり、ガルアとの打ち合いで何とか攻めに応じる事が出来るまでには成長している。
そんな中、ターリャはずっと浮かない顔をしていた。
具合が悪いのかと思って訊ねるけど違うみたいで、ジョコーさんに聞いても困ったような顔をして笑みを浮かべていた。
そして、ちょいちょいと手招きされて、家の裏に連れていかれる。
「実はね、ターリャちゃん貴方を守れるように強くなりたいんですって」
「へ?」
ターリャがなんて?
詳しく聞けば、あの時のドラゴンで俺が死にかけたせいで、守られてばかりではなく何か出来るようになりたいと、ジョコーさんに手当ての基礎を学んでいるらしい。
「でもねぇ、その他にも悩んでいるみたいなの。聞いてみたんだけど、なんだか複雑そうな顔をするばかりで…」
「ううん…」
思い返せば、最近ターリャといる時間が短いように思う。
仕方ないとはいえ、俺はターリャの保護者だ。
一度しっかりと話し合う必要があるかもしれない。
(何かあるのなら、解決してやりたいし。ストレスが溜まっているのなら解消してあげたい)
「……カフェ行くか」
確かジョコーさんが小さいながらもカフェみたいにランチとかデザートを出しているお店があるって言ってたけ気がする。
「プリンがあればいいんだけど」
翌日、ターリャを誘ってみた。
「ターリャ」
「ん?」
肉に何かの仕込みをしていたらしいターリャが顔をあげた。
「その仕事が一段落したら、少し出掛けないか?」
「!」
ターリャの目が輝きジョコーさんを見る。
ジョコーさんが察したみたいで即座にゴーサインをくれた。
「……あれ?」
仕事が一段落ついたはずなのにターリャが家から出てこない。
手持ちぶさた状態で、仕方なく木の幹にある印に指で一点のみを突く練習をしていたらようやくターリャが出てきた。
おめかししていた。
すごく可愛い。
ターリャの後ろで、ジョコーさんが扉に半分体を隠しながらこっちに向かってニヤニヤしていた。
笑い方がガルアそっくり。
「お待たせ!どう!?これ!貸してもらったの!」
「すごく似合ってるよ」
「可愛い!?」
「可愛い」
「ンフフフフフフ!!」
久しぶりに聞いたな、その笑い声。
「早く行こ!」
「ああ」
ターリャが俺の手を掴んで引っ張っていく。
以前行っていたお店よりもだいぶこぢんまりとしていたけど、結構お洒落な感じだった。
席に座り、飲み物とデザートを頼んだ。
幸いにもあのプリンがあって、待っている間ずっとターリャはソワソワしていた。
やっぱり最近浮かない顔をしていたのはストレスが溜まっていたんだろうか。
「トキとお出掛けなんて久しぶり!」
「ここんところはずっと修行だったからな。あまり構ってあげられなくてスマン」
「ううん。あのドラゴン怖かったもん」
「そうだなぁ」
ものすごく怖かった。
怖かったくせに倒す方法を習っているとか狂気の沙汰な気はしている。
「ターリャは最近何をしているんだ?」
だけど今日だけは、そんなことを忘れてターリャにとことん付き合おう。
「あのね!ターリャは最近ジョコーさんに手当ての方法を習っててね!」
そこから長い時間ターリャのお話を聞いた。
プリンを食べながら、ターリャは体の仕組みや傷の手当ての仕方。
そして料理の仕方なんかを習っているらしい。
俺が成長しているように、ターリャも成長していた。
お腹も満足して、俺はターリャを本屋に連れていった。
「トキ?」
「ターリャ、好きなもの選んでいいぞ」
「でも、高いでしょ?」
「大丈夫だ。遠慮するな」
「! わかった!」
ターリャは目を輝かせて本を選んでいる。
きっとあの絵本のようなファンシーな物を選んでくるかと思いきや。
「……これでいいのか?」
選んできたのは俺ですら目を背けたくなる文字密度の謎の本だった。
なんだこれ。
しかも読めない箇所がちょいちょいあるし、謎の図形やらイラストが載ってる。
いやほんとなにこれ。
「これがいい」
これ“で”いいではなく、これ“が”いい、らしい。
「毎度ありー!」
「……」
思ったより三倍は高かった。
おかしいな。
なんであのファンシー系見てて選んだのこれなんだろうか。
「この本重いから、家までは俺が持っておくぞ」
「うん。ありがとう!」
女の子は謎だ。
それから色々回って、そろそろ帰ろうかとなった時、事件が起こった。
全然関係あるようで無いような、この世界での言葉で自己紹介をしてみたトキ
(似てる文字と、発音を載せます)
Оумо!
Майонноуза "Токинуари" Туа Нипумбизеку.
Рутай, "Рупей" Ву Шонённо "Оэ" Туо Кусиньолета.
Панэ Эфукунга Паа Ньяпанди Лукаи.
オウモ!
マヨン ノウザ “トリヌァリ” トゥアニ(プ) ムビズェク。
(ン)ルタイ、“ルぺ” ヴ ショ ンュノ “オエ” トゥオ クシ ニォリェタ。
パネ イフクンガ パァ ニーャアパンディ ルカイ。
※()内の音は発音せずに口の形だけする
《こんにちは!俺の名前は『トキナリ』といいます。以前、『止まれ』を『行け』と勘違いしてました。もう言葉は理解することが出来ますので大丈夫です。




