『馬車上戦』
次に目が覚めたのは、求めていた人の声が聞こえたからだ。
自分を呼ぶ声。
動かない体を叱咤する。
そうだ。
うまく動かないのは眠いせいだ。
「うう……っ」
必死に服の中をまさぐって針金を取り出し、それを思い切り腕に突き刺した。
激痛が走って一気に眠気が覚めた。
すぐさま起き上がり、格子越しに声の方向に向かって声を上げた。
「トキィィィーーーー!!!!!」
■■■
レッドマンティスに喰らったダメージチャージが満タンのまま保存されていて助かった。
それで門を破壊し侵入し、駆け付けてきた奴らと大乱闘になった。
久しぶりに戦時中の記憶が甦り、体が動く動く。
しかも最初に放ったレッドマンティスの攻撃で館がかなりガタが来ている上、全部出さなくて小出しにして飛び道具として活用した。
改めてあのときのレッドマンティスがかなりヤバイ奴だったと痛感した。
「なんだお前!!なんでこんなこと──」
目の前で騒ぐ奴の襟首掴み上げて訊ねる。
「拐った子は何処だ?」
「!」
嘘だろと言いたげな目。
「そうだよ、取り返しに来たんだよ。まさか追い掛けてくるとは思わなかったか??」
「ふ、へへへ…っ」
「何がおかしい…」
殴られて腫れた顔のままそいつは笑う。
「残念だったなぁ!今頃お前の探しているガキは馬車で運ばれてる所だ!!お前は辿り着くことも出来ずに、ガキは愛玩として貴族の元へ届けられるのを指を咥えてみてるんだな!!ガハハハハ!!!!はがっ!?」
頭突きで沈ませた後、その辺に転がっている瓦礫と武器を手にとり馬の元へと急いだ。
「あっ!!」
繋いでいた馬が逃げてた。
「……あれか、あの初擊レッドマンティスのやつでか」
爆発したみたいな音出たからな。
でもこのままだと追い付けない。
なにか、なにか無いか。
「なにか…、あ」
館から逃げ出したらしき馬を発見した。
暴れる馬を無理やり制御しながら走らせる。
やっぱりこの引っ張られる感じは盾の力だった。
淡く青く光りながら、ターリャの位置を報せてくる。
全力疾走で走らせる馬の恐怖もどうでもよく、ターリャ目指して走らせた。
「!」
すると前方に馬車らしき影が。
まっ暗闇のなか、その馬車の荷台辺りが僅かに明るい。
盾の示す方向も合っている。
あれだ。
間違いない。
アレにターリャが乗っている。
「ターリャ!!!!」
声を振り絞った。
「!」
声が聞こえた。
風に遮られて小さくしか聞こえなかったが、間違いなく俺を呼んだ。
「もっと早く!もっと早くだ!!」
馬の速度を上げる。
何とかしてあの馬車を止めないと。
どんどん近付いてくる馬車、その荷台にある檻にターリャがいた。
「ターリャ!!!」
「トキ!!!」
良かった。
酷いことされてないか心配だったけど、声を張れる元気はあるらしい。
「しっかり掴まってろ!!」
「うん!!」
馬をさらに飛ばして馬車と並走する。
このまま前に行ったとしても止められるわけがない。
それなら!
「よ…、ほっ!」
激しく揺れる馬の上に乗る。
そのままゆっくりと立ち上がり、思い切り馬車へと跳んだ。
目標と少しずれたが、あらかじめ持っていたナイフが外装に突き刺さって固定された。
すぐさまもう片方の手にもナイフを持って壁に突き刺した。
よし、このまま上へ。
なんとか上まで登りきり、前方を確認した。
馬車は徐者の場所と、護衛らしき人が待機する場所、そして荷台で構成されている。
馬車を止めるには馬を何とかしないと。
「って、そんな簡単にはいかんか」
さっきの飛び移った音を聞いて、不審に思った連中が馬車の屋根を確認しに来た。
そして俺と目が合う。
「なんだてめえは!!」
長剣を手に登ってこようとする。
すぐさまソイツの元へ行き、顔を蹴り飛ばして阻止。
男は悲鳴を上げ、顔を押さえながら馬車から落ちた。
「お前!侵入者だな!!」
「殺せ!!」
ホッとするも束の間、反対方向から登ってこられてしまった。
男の一人が銃を発砲し、その弾が肩を抉った。
こんな屋根の上で大きく動けないから仕方がない。
幸いにも弾は抜けたし、あの銃は一回撃つと装填に時間が掛かる。
屋根に取り残されたままだった長剣を拾い上げて男達にぶん投げた。
「ぐああっ!!」
剣は銃を持った方ではなく、ナイフを振り上げて襲い掛かってきた男の脇腹を貫通した。
そのまま胴体にタックルをかます。
「ぐっ!」
背中に振り下ろされたナイフが突き刺さったが、お構い無しとその男の服をワシ掴み、盾にした。
案の定飛んできた弾が盾にした男の体に当たる。
仲間とか関係無いのか。
「オラアアア!!!」
「!!?」
そのまま持ち上げて銃の男へと放り投げる。
半身だけ身を乗り出していた男が咄嗟に避けきれるわけ無く、投げ飛ばした男共々落ちた。
「ふーっ!ふーっ!」
あと何人だ?
何人乗ってた??
ビシュルルルと、音を立てて鞭らしき物が右足首に絡まる。
やばっ!
「落ちやがれ!!」
「!!」
思い切り引っ張られて体制が崩れる。
四人目か!
慌てて倒れながらも落ちないように屋根にナイフを突き立てる。
後ろを見るとやはり鞭。
もしまた銃なんか持っていたら厄介だ。
ナイフを持ち変えて、バッグに触れたものを投げた。
瓶だった。
しかもコショウの。
「なっぶあっ!?」
使いやすいように購入したその日に粉にしていたから男が涙を流しながら咳き込んでいる隙に、次に掴んだ瓦礫を投げつけた。
「げほげっほっごほごほなんっ、ゴッ!!」
瓦礫は見事男の顔に命中して姿が消える。
よし、これで後が楽と思ったその時──
「うおおおっ!!?」
ぐんと凄い勢いで鞭が絡まったままの足が引っ張られた。




