『トキ、キレる』
「うおおおおお!ありがとうございましたぁ!!」
「お陰さまで予定通り3日で終わらせられました!!」
「くううう!この達成感!!!」
ギルドに付くなり騒がしい。
というより、予定通りって言葉が気になる。
下手したら予定伸びてたってこと?
「こちらが今回の報酬です」
ジャランと、中にはかなりの大金。
あのレッドマンティスは予想クラスBになったそうだから、それに見合った金額なんだろう。
「トキさん、やっぱりうちのパーティー入りませんか??カラカラさんも合わせて(カラカジョのアダ名)B級盾職が二人いたら、あっという間にてっぺん取れますよ?」
なんのてっぺんだ。
レベリング観測パーティーのてっぺん取ったら何があるんだ。
「あいにく先約がいるので」
しかも今絶賛宿で待たせている。
「ちぇー。カワイコちゃんには敵わないかぁ。まぁいいです。トキさん、気が向いたらいつでも声掛けてください!すぐに入隊手続きしますので!!」
「はははは…。そうですね、気が向いたらお願いします」
そう言えば皆顔を輝かせた。
さて、そろそろ。
「では、連れに顔を見せないといけないのでお先に失礼します」
頭を下げて、ターリャを待たせている宿へと大急ぎで向かった。
宿に着くなり店主が思い切り顔をそらした。
なんだ?
部屋へ着いて、ノックする。
「ターリャ、俺だ。帰ってきたぞ」
シンと反応がない。
物音すらしない。
寝ているのか?と、鍵を開けようとドアノブに触れた。
「……!」
鍵か閉まってない!
「ターリャ!!」
勢いよく開けて部屋の中を見渡す。
ターリャの姿は何処にもない。
それどころか部屋は違和感だらけだった。
やけに整頓された部屋に、隅っこに置かれたバッグ。
机の上に置かれた本も、何故かページ一枚が縒れていた。
「……」
部屋の隅々まで探し、すぐさま宿主の元へ引き返した。
「!」
宿主が俺を見るなり何故か腰を浮かせたので、その肩に手を置いて座らせてやった。
「うちの子、見ませんでした?」
「み、見てませんねぇー。お菓子が足りなくなってお出かけでもしたのでは無いでしょうか??」
「…………なんで見てないのにうちの子が居ないって知ってんだ?」
……あ、とか細く店主が鳴く。
顔が青ざめ始めているが、俺は笑顔を保ったまま言葉を続けた。
「外に出ないように言いつけてありました。それに、外にいったのならバッグはそのままになっているのはおかしいですよね?部屋も妙に綺麗に片付けられてましたし」
「…………」
ガタガタと震え始める店主。
「正直に言わなければ、このままだと肩がゴキン──「本当に見てないんです!!お客の一人が夜変な音を聞いたって言われて確認しに行ったら部屋がぐちゃぐちゃで、机の上に警備隊に言えばかっ、家族を襲うって…メモ書きがあったんですよ!」
これです!と、店主がポケットからメモ書きを引っ張り出した。
確かに書いてある。
店主を離すと、すぐに肩を押さえて呻く。
そのメモを眺め、ポケットに入れた。
「どこか馬が借りられる所は?」
「う、馬? お前さん冒険者なんだろ?ギルドで借りられるんじゃ」
そうなのか。
それは知らなかった。
痛みで脂汗を流す店主を置いて、ギルドへと走った。
ギルドに着くなり、まだ帰ってなかったアウレロに遭遇した。
「おお!トキ!やっぱり戻ってきてくれた……? どうした?顔色が悪いぞ??」
「ターリャがいなくなった」
「ええっ!」
アウレロの驚きの声に、イーサンとウージョンカもやってきた。
「なになに?どうしたの?」
「やだ!顔が真っ青じゃない!」
「トキのお嬢ちゃんが居なくなったんだと」
「まぁ!大変!」
「迷子?急いで探さないと暗くなったら…」
黙って首を横に振った。
俺の様子に、三人はなんだ?と見る。
「迷子じゃない。部屋が荒らされていたんだ」
その一言で理解したウージョンカが口許を押さえた。
「そんな…!」
「で、でもでも、この辺りでそーいうのはご法度だし、見付かったら死刑だよ?なんでそんな危険を犯してまで」
言うか迷ったが、これは言った方がいいな。
「……ターリャは、獣人なんだ。しかも爬虫類系の名前もわからないやつ」
「それじゃあ……」
サアアと、三人の顔色も悪くなった。
そう。
この国では獣人の奴隷は認められている。売買も、狩りも、全て罰則がない。
もちろんこの街でも例外ではない。
ここで見ないのは、彼らの生息地がこの周辺には無いからだけにすぎない。
黙る三人に声を掛ける。
「誰か、馬を貸してくれ。助けにいく」
「それは構わないけどさ、何処に居るのかわかるのか?」
アウレロに頷く。
「ああ…、わかる」




