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『輸送馬車』

 

 さんさんと輝く太陽。

 足取りは軽く、心は晴れやか。


 今はターリャが指し示した南へ行くために、ハズル町の隣にあるサルド町へと向かっている。

 規模はだいたいハズルと同程度だけど、港町、ウナンズ町へと向かう馬車が出ているのでそれを目的に進んでいる。

 幸いにもハズル町からの道が重ならないからちょっと安心。

 でも心配も半分あるからさっさとお金を払って乗りたいと思ってる。


「ターリャ」

「ん?」

「神域ってどんなところなんだ?」

「えー?わかんない」


 わかんないんかい。


「でもね、気持ちいいところってのは分かる」

「?」


 結局分からなかった。

 ターリャは記憶が抜けてる。

 しかも俺と出会う前らへんはほぼすっぽり無くなっていると言ってもいいほど。

 よほど奴隷時代が辛かったのか。

 とはいっても、ここでも子供の記憶抜けはわりとある方なので(戦時中の巻き込まれとか、親族が死んだとか、妖魔に襲われたとか)特に深刻には考えないけど。

 ぶっちゃけ俺も怪しいところあるしな。


(……ターリャの場合、存在自体が謎だから、少しくらいは記憶が戻って欲しいところだけど)


 うっかり食べさせたらいけないものとか食べさせてないか、いつも不安。


 今のところは何でも食べるし、具合も悪く無さそうだから大丈夫とは思うけど。


「思い出したら教えてな」

「もちろん!そうする!」


 まぁ、何とかなるだろ。







 今回は完全に徒歩での移動だったけど、初めての旅が森だったお陰かターリャの足の悲鳴が比較的マシだった。

 あと、グンジからサービスで貰ったダイアベアーの毛皮を入れた袋を布団変わりにしていたからターリャは毎夜爆睡していた。

 それも良かったんだろう。

 睡眠は大事。


 とはいっても俺は爆睡なんてしていいわけないので、夜はカヒの実を食べながら仮眠している。

 一週間なら問題ない問題ない。


 というより、なんだろう。


(あんまり眠くないな)


 大金持ちになって興奮してんのかな。

 ふふっ。

 駄目だ笑いが抑えられない。

 あー!星が綺麗だなぁー!



 という感じで歩くこと一週間、サルド町へと着いた。

 着いてそうそうご飯を食べ、輸送馬車を探す。


 とはいっても、俺も実際見たことはないのでそこら辺にいる町人を捕まえて訊ねた。


「輸送馬車?」

「はい。ウナンズ町行きのを探してます」

「あるっちゃーあるが、高いぞ兄さん」

「急ぎなので、そこは仕方ありません」

「ふーん」


 チラリとターリャへと視線が向く。

 察する顔。


「今日の馬車は終わったが、明日には空きがあれば乗れるんじゃねぇか?ほれ、あそこの──」


 町人がとある建物を指差した。


「あの背の高い建物越えて、南の壁近くに宿屋が集まっているとこがある。そこを抜けたところが馬車乗り場だ」

「なるほど」


 確かに宿屋が近くなら効率が良いもんな。


「ありがとうございました」

「ました!」


 俺の真似してターリャも頭を下げた。

 それ見て笑顔が漏れる町人。


「良いお父さんで良かったなぁ。気ィつけてな!」


 町人が去っていく。

 いい人で良かった。

 ターリャがマントを掴んだ。


「……」

「どうした?」

「……なんでもない」

「??」


 なんでかターリャがむくれている。

 なんか嫌なことあったか??


 ターリャの機嫌が良くないので手を繋いで言われた場所へと向かった。

 手を繋ぐと、ほんの少しだけ機嫌が戻る。

 迷子防止で手を繋いでるけど、機嫌も良くなるとは一石二鳥だな。


 宿を抜けて、馬車らしき看板が見えてきた。

 ここかな。


「馬がいる」

「ほんとだ」


 建物の裏で立派な馬が数頭こっちを見ていた。

 馬屋だったか?

 でも看板は馬車。

 確認のために店に入った。


「こんにちはー」


 壁に掛けられた地図と表的なものと、机に椅子だけの部屋。

 簡素だ。


「はいはい、いらっしゃい」


 奥の扉から店員が出てきた。


「ご用件は?」

「ここは輸送馬車のお店で当たってますか?」

「そうだね。輸送馬車もやってる」


 良かった。

 合ってた。


「ウナンズ町へ行きたいのですが、どう手続きすれば良いですか?」

「残念だけど、本日の分は出てるよ」

「明日でいいんですが。予約とかできますか?」

「ん?」


 店員さんがこちらを見た。


「なんだいチケット購入?」

「ええ」

「ほおー。ウナンズ町までと、人数は二人か?」

「はい。二人分のチケットを」


 店員が机の下から取り出したファイルを広げて説明を始めた。


「一人3000ネル。二人で6000ネルだ。先に言っておくけど、子供料金はないよ」

「了解です」

「出発は早朝6時か、8時の二本。どっちも空きはあるね。荷物は30キロまで。それ以上は断る事があるからあらかじめご了承くださいっと」

「はい」


 思ったよりも説明が細かい。

 輸送馬車って、ヨップファミリー的な感じじゃないのか?


「到着まではおよそ3日。飲食は各自持参で。あと、途中で妖魔や盗賊に遭遇する恐れはもちろんありますので、後程合意書にサインをしていただきます。ああ、もちろん護衛は雇ってますが、一応気を付けてくださいね」

「……」

「休憩は挟みますが、時間は厳守で。でないと行方不明ということで置いていきます。──ここまでで何か質問などは?」

「いえ…」

「では、何時の時間帯にしますか?」


 チラリとターリャを見る。

 俺は何時でも良いけど、ターリャを朝早く起こすのは忍びないな。

 うーん。よし。


「ターリャ、どっちがいい?」

「え?ターリャが決めて良いの?」

「朝が辛いなら二本目でも良いぞ」

「じゃあ一本目で!」

「え」


 予想外。

 まぁ、最悪俺がおぶって来ればいいか。


「では一本目で」

「はい。では、こちらにサインを」

「……読み上げはして貰えるのでしょうか?」

「文字読めんのかい」

「はい…」


 マジかよという顔をされた。

 これは早々に勉強しないと。


 読み上げて貰った結果、馬車で目的地に運びますが、その道中の紛失、怪我、盗難の責任を負いかねます。それでもよければサインをしてください。というもの。


 サインした。


「ターリャ、字書けない」


 ついでにターリャのもサインした。


「はい確かに。では、6000ネルを」


 そしてお金を払ってチケット購入した。

 チケットは木の板だった。溝と数字が彫られた板。


「失くしたら罰金ですので」


 とのこと。

 気を付けよう


 出発も遅れたら置いていくと念入りされた。

 本当に気を付けよう。


 店を出て伸びをする。

 やることはやったぞ。


「これでひと安心だ」

「ターリャお腹すいた」

「そうだな。ご飯を食べてから宿を取ろう」


 そんな感じで夕方までふらつき、夜は馬車屋の近くの宿を取った。

 が、なんでかターリャのテンションがやたら高くて寝付かない。

 まるで遠足前夜の子供だ。


「ターリャそろそろ寝よう。明日は早いんだし」

「…分かってるけど、なんでか眠くないの。このままターリャは朝まで起きられる気がする」


 絶対にそれはない。


「いいから目をつぶってなさい。おやすみターリャ」

「えええええー」


 睡魔が最高潮だった俺は秒で爆睡した。


 朝。


「ま、分かってたよ」


 俺は熟睡ターリャをおぶって輸送馬車の指定した乗り場へと来た。

 広場になっている乗り場はそれなりに人がいた。

 みんな馬車に乗る人達だろう。


 ゴトゴトと音が近付いてきた。


「お!」


 振り替えると四頭だての馬車。

 いや、四頭の馬で牽いたバスがやってきた。


 その後ろからは護衛の人達。


 これは、冒険者達ですね。

 護衛専属の冒険者か。


(俺も馬に乗れればこんな仕事もできたんだろうな。いや無理か。乗馬しながら受け流しはさすがに無理)


「お待たせいたしました。それではチケットを拝見いたします」



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