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『冒険者に戻れた』

 しばらく待っていると、受付がここの責任者らしい人を連れてきた。


「お、おおお待たせいたしました!!」

「…はい」


 なんで待たされたのか分からんけど。


「汗掻いてるね」

「何でだろうな」


 慌てたからなのか走って来たからなのか汗だくの責任者。


「それでは、ええと、角を持ってきたとか」

「はい。換金できますか?」

「まずは本物かどうかの確認をさせていただきます。失礼」


 机に置いた角を鑑定し始める責任者。

 息が荒い。

 大丈夫か?

 風邪でも引いてるか?


「ちょっと…、アサラくん、君も見て確認して…」

「え…」


 近くにいた換金所の人を捕まえて、その人も一緒に【鑑定】。


「……どう?」

「…本物です……」


 当たり前だ。

 ちゃんと角持ちシルバーウルフの上半身を見付けて剥ぎ取ったんだから。


「あの…」

「はい?」


 おずおずと責任者がこちらを見る。


「冒険者の資格証明書を確認したいのですが、提示していただけますでしょうか?」

「無いです」

「………………え」


 固まる責任者。


「無い……?」

「ええ」


 チラリと登録の受付にいる人を見る。

 ビクッとして慌てて視線を明後日の方向に向けた受付の人。


「前回資金不足で登録申請を受けつけられませんでした。まぁ、まさか五万ネルすると思わなかったので情報不足での資金不足はこちらの非があるのですが、年齢のことで罵られたりあからさまに登録を嫌がられたりするとは想定外でしたね」

「ごまっ…!???」

「?」


 なんでか責任者の人が変な顔をしている。

 そして俺の視線を追って責任者が受付を見る。

 さりげなく逃げようとしている受付。

 おや?

 おやおや??


「まさかとは思いますが、それがこのギルドでの教育方針です??」

「いえいえとんでもありません!!!!!──おい!!」


 責任者が近くの男性のスタッフに呼び掛けた。

 そして視線をくいっと。

 走り出すスタッフ複数。

 行き先はあの受付の逃げた先だ。


 なんだろう。

 俺そんなにナメられやすいかな。


「あの!!!この節は本ッッ当に申し訳ありませんでしたアアアアア!!!!」

「!!!!????」


 責任者が突然カウンターを飛び越え、土下座をしてきた。

 その見事なジャンピング土下座っぷりに軽く感動した。

 なにこの人、土下座のプロ??


「おおー、飛んだ…」


 ターリャも感動したようだ。


「お詫びと言っては何ですが!、今すぐ!!資格証明書を発行いたしますので!!!」


 お、おう…。


「それは、ありがたいです」


 なんだろうこの棚ぼた状態。

 ラッキーだけど。


「作れるの?」

「作れるんだってさ」

「やったね!」


 うん。


「そうだな」


 ということで、本当に即行で作ってくれた。


 懐かしの冒険者タグ。

 あれ?


「なんですか?このランク」


 ランクが初期のEではなく、Bになってる。

 責任者さんがペコペコしながら説明してくれた。


「は、はい。実はあの角持ちは高難易度のクエストでして、ヤツに15人を再起不能にされてからは一月以上放置されていた、当ギルドで一番厄介なクエストだったのです。アレがいるせいで北の森は広範囲で高危険エリアとなっていたのです。それを、今回はお一人で倒されたということで、そのようにランクを付けさせて貰いました」

「なるほど…」


 初期の状態から再スタートかと思ったら、元のランクに戻れてしまったという。

 ターリャと出会ってからは俺は運に恵まれっぱなしだな。


「あと、よろしければこれを」

「ん?冒険者タグがもう一つ?」

「はい。あの、娘さんと行動を共にされるのでしたら、こちらを着けていた方が良いと思いまして。場所によっては一般人立ち入り禁止のエリアもありますし」

「ああ、確かに」


 言われてみれば、これがあった方が色々動きやすくなる。

 なんなら弟子とか説明すれば、合同クエストにも連れていける。


「……むすめ…」


 ボソッとなにやらターリャが小さく呟いた。

 ……そうな。年齢差を考えたら兄妹よりも、親子だな。


 それにしてもこんなにも良くして貰えるなんて。


「気を利かせていただきありがとうございます。ええと、それでお代は」

「五千ネルで結構です」

「え?でも年齢うんたらって」

「ああ、あれはあの受付が嘘を吐いていたのです。先ほど尋問をしましたら、ああやってお金を巻き上げているそうで。安心してください!既にクビにして罰を与えました!もちろん知っていて放置していたもの達全員です!」


 責任者は良い笑顔だった。

 罰か、罰金と百叩きかな。

 お疲れ様です。


「では、二人合わせて一万ネルを」

「いいえ、いいえ、五千で結構です。……あの、その代わりと言ってはなんですが」


 お?これは取引か。


「……是非とも、この事はここで終わりと言うことで……」


 ギルドも良くない噂を流されたくないってか。

 まぁ、俺としてはきちんとやることをして貰えたら文句はない。

 ニッコリ笑って、


「角持ちの換金を誤魔化し無く、ちゃんとしてくれるのでしたら考えます」


 と、言っておいた。


「もちろんですとも!」


 責任者は笑顔だったが、冷や汗を流していた。


 あらかじめ釘を刺しておいたからなのか、換金をちゃんとしてくれた。しかもちょい割り増しで。


「あの、よろしかったらうちのギルドに入会を──」

「いえ行くところがあるのでお断りいたします」

「そそそそうですか!残念です!」


 書類記入や口座開設などのやることをやってギルドを出た。

 最後、所属冒険者にならないかと勧誘されたけど断った。

 残念ながらターリャが先約だ。


 首に下がったタグをターリャが嬉しそうに見ている


「ふふ。トキとお揃い」


 幸せそうなターリャを見て癒された。

 完全にターリャは俺の精神安定剤だな。


「さて、忙しくなるぞ」






 宿に泊まりながら旅の準備を進める。

 携帯食料は勿論、手に入ったお金で俺やターリャの装備も旅専用のものにした。軽く、頑丈で、雨風に堪えられるものだ。

 といっても、これらは今持っている鞄には到底入りきらない。


「取りに行くか」


 約束の2日が経ったので、魔術師の所に向かった。


「こんにちは、魔術師さーん?」

「まずつしさーん?」

「ターリャ、噛み噛みだな…」


 扉を開けて呼び掛けると、魔術師が『んおっ』と変な声をあげて机の下から起き上がる。

 前もそこから起き上がってたよな。

 もしやそこが寝床なのか。


「あ?ああ、来たか。ちょうど出来上がったよ。こっち来な」


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