『ドラゴンスレイヤー』
「ん?」
ちりっとした不思議な感覚を首もとに感じてターリャは足を止めた。
この感じは身に覚えがある。
セリアを見つけた時のものだ。
思わず辺りを見回してセリアを探したけどそれらしいものは見付からない。
気のせいだったかなと思い直し、ターリャは人混みに紛れそうになっているトキを慌てて追い掛けた。
ギルドに着いた。
「やっぱり国柄が出るな」
「うん」
アイリスは基本石造り、ウンドラは装飾が凄い。そしてイクラートは木製が多い。
やはり獣人が多いからだろうか。
頭の中に何故か『自然保護』という言葉が浮かんだ。
この世界は絶賛自然の方が圧倒的優勢な勢力なのだが。
面白いなと思いながらギルドを観察しながら進み、受付にやってきた。
途中にあった掲示板にはドラゴン関係は記載されてなかったから、受付で直接聞くしかない。
受付には犬のような獣人。
「すみません。ドラゴン関係の依頼などはありますか?」
犬の獣人が俺を見て、鼻を鳴らした。
「えー、冒険者タグの提示をお願いします」
冒険者タグを提示して、それを受付が目を細めて確認。すると、突然目をカッと見開いた。
「ドッ、ドラゴンスレイヤー!!?」
受付の驚きの声に辺りがざわつき、俺に一気に視線が集まった。
なんだなんだ??
このギルド内には人間の冒険者もいるが、その大半は獣人だ。しかも大体が肉食系。
四方八方を肉食系獣人からの視線が注がれる。
なんだこの状況。
俺が内心冷や汗掻いていると、受付がいつの間にか後ろに下がってたようで、バタバタと違う職員を連れてきた。
太った虎だ。眼鏡を掛けている。
チラリと胸元を見るとギルド長の証のバッチがある。何故ギルド長が?
ギルド長はカウンターをぐるッと回って俺の前に来ると、俺の手を両手で掴んで激しく上下に振った。
「はじめまして!貴方がかの有名なドラゴンスレイヤーですね!!お会いできて光栄です!!」
「ちょ、ちょっと待ってください!ドラゴンスレイヤーってなんなんですか!?」
そういえばリーンに詳細聞こうとしたけど忘れていたんだったと慌てて訊ねると、ギルド長と受付が「またまたー、ご謙遜なさってー!」みたいに言われた。
受付がカウンター後ろに貼り付けられている額付きの新聞を外してこちらに持ってくる。
「ほら、こんなに大々的に記事になっているじゃありませんか」
額付きの新聞をターリャが受け取り、「わ!」と驚きの声を上げて俺に見せてきた。
「見てこれ、こんなに大きい写真が貼り付けられてる。しかも、このドラゴンって、グーラニで倒したドラゴンじゃん!」
「うわ、本当だ。くそー、どこで隠し撮りしてたんだ…?」
「それにしても良く撮れてるねぇ。あっ!見てみて!ドラゴンスレイヤーの解説入ってる!」
「解説ぅ??」
「うん。ドラゴンスレイヤーの称号は通算5体のドラゴンをほぼ個人で狩ったものに与えられる称号だって!」
「へぇー」
ほぼ個人。……ターリャは弟子だからカウントされないのか?
しかし個人でドラゴン狩りまくるんだったら、きっとガルアもドラゴンスレイヤーなんだろうな。
にしても隠し撮りか。ターリャのドラゴン食べている様子とかは書かれてないけど、これからは用心しないといけないな。
ギルド長に手を離してもらった。
肉球柔らかだったな。
「えーと、では、話を戻しますけどドラゴン関係の依頼などを貰えますでしょうか?」
「ええ!ええ!勿論ですとも!!ロン、ドラゴンスレイヤーさんに渡してあげなさい!」
「はい!分かりました!」
受付がとんでもない厚さの書類を俺の手に乗っけた。
「重ッッ!?」
ずっしりである。
俺今手に持っているの2リットル飲料ですか??
「こちらが今周辺で確認されたドラゴン、及び竜種の資料であります。前編がそのドラゴン一覧で、中編及び後編が生息している場所、特性、性質等々を事細かに纏めております」
試しにバラララと捲ってみた。
眠くなった。
「ありがとうございます」
「他にも何かありましたら、すぐに手助けいたしますから遠慮無く仰ってください!」
「分かりました」
と言うことで、早速お手軽な宿を教えてもらった。
「いや、スゲーなこれ」
「おおお。こんなの始めてみたね」
宿が大木の上に構えられていた。
いわゆるツリーハウスだ。規模はかなりでかいが。
というか、他にも木の上に建てられている家が多い。下の家と何が違うんだ。
「ルシー達はすぐ下の建物に預けるんだよね。預けてくるからトキは宿の手続きお願い」
言うやターリャは俺からゼウイの綱を引ったくって、2頭を連れて行ってしまった。
行動が早い。
「あいつももう立派な冒険者になったな」
しみじみ感じる。
さて、俺もターリャに習ってさっさと手続きするとしますか。
ゴロゴロと遠くて雷が鳴っている。
イクラートについて思うのは雨が多いと言うこと。といっても霧雨的なものが多いから、まだ動き回れはする。
「ふぅー。キッツいねアレ」
「ああ」
目の前にいるのは鹿のような姿の竜種だ。名前をエロゥショ。
ヘラジカのように大きく、尻尾が蜥蜴のような竜種は翼がないが、その代わり厄介な能力を持っていた。
角を大きく振りかざして喉を鳴らし始めた。タンキングだ。
「来るぞ!!ターリャ下がれ!!」
エロゥショが口から凄まじい電撃を放出した。
「ぐううっ!」
セリアのなんか比べ物にならない威力で、腕が痺れる。
電撃が収まったが、手のしびれは残ったままだ。
「大丈夫!?」
「まぁ、なんとかな。おかげでチャージは満タンだが効かんだろう」
再びエロゥショが咆哮して突進してきた。




