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らぶくま!

作者: 狩屋ユツキ

【台本利用規約】

ここに置いてある台本については、商用、無償問わず自由にお使いいただけます。

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但し自作発言、大幅な内容改変などはお控え下さい。


出来たら作品名、URL、作者名をどこかに書いていただけると嬉しいです。

らぶくま!

作:狩屋ユツキ



もも

溌剌とした少女。

夢見がちなくせにリアリスト。

高校二年生。

剣道部。



じゅん

クールで冷静な性格に見えて中に熱いものを秘めている。

行動力は人一倍。

高校一年生。

弓道部。



さとる

少々臆病だがやるときはやるタイプ。

頭がよく、お金持ちの家の子。

高校三年生。

帰宅部。




40分程度




男:女

2:1




桃・くま♀:

潤♂:

悟♂:




※セリフに重なるところがいくつかありますが、ずれても問題ありません。


------------------



(幼い頃。近くの公園にて)


桃「私、お姫様役ね!!」


潤「お姫様が剣持って戦うなんて聞いたこと無い!!!」


悟「そうだよ、お姫様は王子様が助けに来るまで大人しく捕まってて……」


桃「うるさい!!お姫様が自分で自分を助けて何が悪いのよ!さあ悪人ども、私に勝てるものならかかってきなさーい!!」


潤・悟「うわああああああああああ!!!!」





(同じく近くの公園、夕方)


潤「……なんてことも昔あったな」


悟「言われてみれば。あのときは剣代わりの木の枝でボッコボコにされたっけ……」


桃「なによう、昔の話でしょー。今はおしとやかで可愛い桃ちゃんで通ってるんだから」


潤「おしとやか……?」


悟「かわいい……?」


桃「アンタたち、小さい頃の二の舞を味わいたいようね」


潤・悟「結構です」


桃「ふう……で、今日の依頼はコチラ」


潤「何々……『いじめられています。助けてください。城崎しろさき高校二年、相澤優子あいざわゆうこ』」


悟「いじめの原因は何なんだろう」


桃「なんでも、彼女、いじめの現場に居合わせて、いじめに加わらなかったんだって。そうしたら今度は彼女がターゲットになっちゃったらしいわよ」


潤「女のいじめってそういうとこあるよな。混ざったら仲間、拒否したら敵」


桃「女でひとくくりにしないでよ。男だっておんなじでしょ」


悟「と、とにかく、いじめをやめさせれば良いんだね。いじめの主犯格はわかってるの?」


桃「依頼書に書いてあったわ。佐伯さえきあすか。この子が主犯ね」


潤「それじゃいっちょいじめの主犯の心を入れ替えてやりますか」


悟「程々にね?!潤、時々やりすぎるから怖いよ」


桃「私達の秘密、誰にもバラしてないでしょうね」


悟「バラしたところで誰も信じてくれないよ」


桃「じゃ、みんな、準備はいい?」


潤「いつでも」


悟「うん、OKだよ」


桃「じゃあ……佐伯あすかの心の闇を、残さず全部お掃除してあげましょう!!!」





桃「私達は、不思議な力を持っている」


潤「その力に目覚めたのは、ある男に出会ってからだ」


悟「ヒーローごっこをして遊んでいたある日、その男は僕たちに声をかけてきた」


桃「『本物のヒーローになりたくないかい』」


潤「俺は当然断った。知らない人間の、しかも胡散臭い男の言うことを聞く気はなかった」


悟「だけど桃は違った。僕らを抱き込んで、二つ返事で請け負った」





桃「私、ヒーローになりたい!!戦うお姫様になりたいの!!!」





潤「……それから、俺達は、人の心に巣食う闇を倒すことが出来るようになった」


悟「異世界に潜り込んで、具現化した魔物を倒す。そんなRPGみたいなことが出来るようになった」


桃「基本の姿形は変わらない。だけれどファンタジーな衣装に身を包み、武器を携えた姿はまさしくゲームの中の世界で」


潤「でも、ゲームと違うのは、それが本当に人の心に影響を及ぼすということだった」


悟「僕らは桃の提案で、人の心の闇を払うことを仕事にすることにした。駅の掲示板に「心の掃除人」宛で書き込むと、いつの間にやら解決しているという噂を、三人で学校問わず流しまくった」


潤「最初は面白半分で書き込むやつも居たが、最近ではガチの依頼しか来なくなった。やり取りは全てLIMEらいむのメッセージのやり取り。成功報酬はもらっていない」


桃「だって正義のヒーローは見返りなんか求めず、救いの手を求める人に手を伸ばすものでしょう?それにお宝なら、魔物を倒せばいくらでも手に入っちゃうんだから……」





(佐伯あすかの心の中。嫌にファンタジーな世界に、巨大な女王の姿をしたモンスターが暴れている)


桃「到っ着ー!!」


潤「公園のコンクリート管を、呪文を唱えて通るだけで行けるようになるって誰が知ってるんだろうな」


悟「『心の闇を持ちし〇〇(まるまる)よ、我が名は心の掃除人、貴様の闇を掃除する!』って、普通に考えるとダサいよね」


桃「ダサいとかそういうのはいいの!!問題は、その呪文を教えてくれたあの男の人が何者だったのか、どうして私達を選んだのかだって、話、昔したでしょ?こうやって活躍が広がれば、またあの人が出てくるかもしれないじゃない!!」


潤「出てこない可能性も十分あるがな」


桃「うっさい!!」


潤「いってえ!!剣の鞘で殴るなバカ!!」


悟「……二人共、言ってるそばから魔物だよ。あれが佐伯あすかの心の闇らしい」


桃「うっわー……何あれ、自分が女王様気取りってこと?けばけばしくてド派手ー」


潤「縦横無尽に暴れてるな。それに他の心の闇も吸ってどんどん巨大化してる……」


悟「調子に乗ってるか、それとも彼女自身も自分の心の闇に怯えているか、どっちかだね。ともかく早く倒そう。フォーメーションはいつものでいい?」


桃「オッケー!!じゃ、潤、いつものお願い!!」


潤「はいはい、っと」


潤M「俺の“職業”は弓兵きゅうへいだ。俺は矢をつがえて心の魔物……佐伯あすかの目を狙う。それが戦いの合図」


悟「ナイスショット!!敵がこっちに気づいた!!行って、桃。潤は後ろからバックアップよろしく!!」


桃「もち!!」


桃M「私の“職業”は騎士きしだ。オールマイティに立ち回り、相手にダイレクトな物理ダメージを与える。攻撃の要と言っても過言ではない」


悟「桃、その魔物は胸が弱点だ!胸の真ん中にあるネックレスの宝石を狙って!!」


悟M「僕の“職業”は魔法師だ。相手の弱点を見抜き、魔法でダメージを与える。だけれどこの世界では魔法はあまりダメージソースにならないらしく、大抵は桃が倒してしまうのだけど……」


桃「固っ!!悟、このネックレス異常に固い!!それからブンブン振り回されてる腕がウザい!!」


悟「了解、ネックレスに弱体魔法と、腕に遅延魔法をかける!!!」


桃「あと潤、こいつ顔は普通に剣通るみたい!」


悟「じゃあ潤、顔中心に、矢を集中!!!怯むかも!!」


潤「了解!!!喰らえ、五月雨撃ち!!!」


桃「さあて……どう料理してあげましょうか……!!私は天下無敵のお姫様!!女王様にはご退場頂いちゃうんだから!!」





桃「っく、ぅ……こいつ強い……!!」


悟「レベルの概念はこの世界には無いはずだから、僕らの手に負えないほど、こいつの闇が強いってことなのかな……」


潤「諦めんな!!だんだん弱ってきてるのは確かだ!!さっきより動きが鈍くなってやがる!!」


桃「わかってるわよ、はあああああ!!!!」


潤「喰らえ、三段撃ち!!!!」


悟「硬度弱体化魔法、発動!!」


桃「!!ヒビ入った!!潤、このヒビ狙える?!」


潤「任せろ、俺を誰だと思ってやがる。おおおおおおおっ!!!!」


悟「強化魔法発動、潤の矢に攻撃力倍加の魔法を!!」


桃「ネックレスが割れた!!……ああ、そこにあったのね、闇の渦」


悟「桃、止めを!!」


潤「やっちまえ、桃!!」


桃「わかってるわよ!!『いざゆかん、我、貴殿の闇を掃除し浄化する者!!!闇の渦へ我らを導け!!!!」





(佐伯あすかの心の闇の中。真っ暗な空間に少女が一人しゃがみこんで泣いている)


桃「ここが佐伯あすかの心の深層……」


潤「なんにもねえな」


悟「彼女が佐伯あすか……?」


桃「多分ね。私が話しかけてみるわ。……ねえあなた、どうしてこんなところで泣いているの?」


潤「……どうだ?」


桃「……リーダー格として誰かをいじめてないと、自分を保てなくなっちゃったんだって。初めは遊びのつもりだったのに、どんどん周りが大きくなってやめられなくなって……」


悟「それを後悔してるってこと?」


桃「うん。でも、もうやめ方がわからないんだって。……そうだよね、一度始めたことはなかなかやめられないよね」


潤「そんなこと言ったって、いじめが悪いことだってわかってるなら即刻やめるべきだろ!大体被害者はそれを望んでるんだし……」


悟「潤、そんな簡単に言うけどさ、いじめをやめるって言った途端、自分がいじめのターゲットになるって考えたらそうも言えなくなる気持ち、僕はわかるよ」


桃「うん、私もわかる」


潤「……それでも勇気を出して言うのが筋ってもんだろ。始めたのはお前なんだし」


桃「……大丈夫。君のことは私達“心の掃除人”が守るよ。もしいじめられたら、駅の掲示板に私達の名前を書いて。すぐに助けに行くから」


潤「おい、いたちごっこな発言してんじゃねーぞ」


悟「でもそれが一番彼女にとって安心できる言葉じゃないかな」


桃「うん……うん、わかってる。怖いよね。でもね、あなたの言動一つで大きく変わることがある。救われる人もいる。現に、私達に依頼してきた人はあなたが変わることを望んでいた。あなたの言葉で傷ついていた。あなたの動きで、身動きが取れなくなってた」


潤「いじめってのは連鎖するもんだ。いつまで経ったってなくならない。特に学校って場所じゃあ、一人をいじめの対象にすりゃ仲良しこよしのグループを作るのも簡単だしな。だけどそれが本当にいいと思ってるなら、お前こんなところで泣いてなんかいないだろうがよ」


悟「本当は気の弱い優しい子なんじゃないかな。いじめられるのが怖くて、先にいじめる側に回ってしまった。一度決めた立ち位置はなかなか変われない。だからこうして泣いているしかなくなっちゃったんじゃないかな」


桃「可哀想だけど……私達はあなたの心の掃除人。闇を結晶化し、それを頂いていく。明日目覚めたら、罪悪感にあなたは泣くことになるでしょう。学校を休むかもしれない。でも、それがあなたの罪だから」


潤「悟」


悟「わかってるよ。……『闇よ、心の闇よ。結晶化し、我らの前にその姿を現せ』」


桃「……くまのぬいぐるみ……?」


潤「ボロボロだな」


悟「きっと、彼女が大事にして心の拠り所にしていたものだよ」


桃「……じゃあ、これ、もらっていくね」


潤「心の拠り所は、別に自分で探すんだな。お前の周りにいじめが楽しいだけじゃなくて、お前自身を好きで居てくれているやつがいることを祈るぜ」


悟「潤ってば素直じゃないよね。ちゃんと相手のこと心配してる」


潤「うっせ」


桃「じゃ戻るよ!潤!!」


潤「ああ。『我ら心の掃除人、任務遂行完了。我らが生きる本当の地獄へ、我らを帰還させよ!』」





(近所の公園。三人は真ん中にぼろぼろのぬいぐるみを置いたまま立ちつくしている)


潤「これじゃあ換金しても大した額にはならないな」


悟「換金できるかも怪しいよ」


桃「……この子は私が引き取るよ(ぬいぐるみを抱き上げる)」


潤「……ま、それが妥当だろうな」


悟「桃はなんだかんだ言って優しいからね……って痛っ!!(蹴りを食らう)」


桃「一言多い!!」


悟「照れ方が可愛くない!!」


潤「じゃ、今日のところは解散か。後のことはまた後日ってことで」


悟「そうだね。どうなるかわからないし」


桃「……上手くいくといいんだけど」


潤「……お前さー、行くときはノリノリなのに帰ってきたらしおらしいのホントどういう精神構造してるんだよ」


悟「まあまあ、桃だって女の子なんだからセンチメンタルになることくらいあるって……いった!!!!!(再び蹴りを受ける)」


桃「……ま、いいや、また明日、ここに集合!いつもの時間ね、OK?」


潤・悟「OK」





(次の日。近くの公園、夕方)


潤「って言ってたのに桃来ねえし」


悟「遅いね……いつもなら最初に来て「遅いよ潤、悟!」って叫んでるくらいなのに」


潤「……桃の家、行ってみるか」


悟「そうだね……」





(桃の家)


潤「すみませーん。あの、おばさん、ご無沙汰してます。俺、潤です。幼馴染の……。で、桃は……え?」


悟「どうしたの、潤」


潤「今日の朝出てからまだ帰ってないって……」


悟「(呟くように)あの桃が、僕らへ連絡もなしに……?」


潤「あ、はい。……連絡もないです。そう……ですか」


悟「あのっ」


潤「悟?」


悟「桃、昨日ぼろぼろのぬいぐるみを持って帰ってきたと思うんですけど、それって部屋に飾ってありますか?!」


潤「悟、お前何言って」


悟「……持って帰ってきてない……?」


潤「え、それっておかしくね?だってあのとき桃は」





桃「……この子は私が引き取るよ」





悟「……ありがとうございました。あの、帰ってきたら桃に悟と潤が連絡待ってたって伝えてもらえませんか。はい、……はい、失礼いたします」





(近くの公園。夕暮れ時)


潤「おかしくね?!あれから三日経つのに連絡の一つもなくて、桃、失踪したままだぞ!!!」


悟「落ち着いて、潤。そりゃあおかしいと思うよ。桃の家に行ってみたら、「桃って子はうちにはいませんけど」って言われたしね」


潤「はあ?!お前桃の家いつの間に行ったんだよ」


悟「今日ここに来る前。捜索届とか出てないかなって気になって行ったらそう言われて。この“世界”では桃はいない者になってるみたいだよ」


潤「それって……あの“世界”と関わりがあるってことか?」


悟「多分。ぬいぐるみごと桃が消えたことといい、桃の存在自体が僕らの頭の中にしか存在しないことといい、多分僕らにしかできないこと……“心の掃除人”に関係してると思われる」


潤「くっそ、だからこういうことに首突っ込むのはこれが最後なって何度も俺が言ったってのに……!!」


悟「結局桃に押されて乗ってたんだから今更言ってもしょうがないよ。……で、ここからは仮説」


潤「おう」


悟「桃は、佐伯あすかの心の深層に囚われている可能性が高い」


潤「はあ?」


悟「ぬいぐるみが消えているのが良い証拠かな。今までの物品は全て売り払うか捨ててきた。でも桃は今回の物品を捨てようとはしなかった。桃はなんだかんだ言って心の優しい子だ。佐伯あすかの心に寄り添いすぎたのかもしれない」


潤「それって……あの化け物をまだ倒しきってなかったってことかよ」


悟「そこまではわからない。でも、……向こうに行ってみる価値はあると思う」


潤「……」


悟「僕は行くよ。潤はどうする?」


潤「行くに決まってるだろ。桃を助け出す」


悟「僕の仮説に乗ってくれるってこと?」


潤「お前の仮説が外れたことねえし。大体、桃が捕まってるなら王子が助けに行かなきゃなんともだろ」


悟「あれ?魔法使いが助けに行ったって別にいいと思うんだけど」


潤「……あ?」


悟「……ん?」


潤「……お前まさか桃のこと」


悟「……潤、まさか僕も自分も桃を好きなこと、今まで気づいてなかったの?」


潤「……」


悟「……鈍い鈍いとは思ってたけどそこまで鈍いとは」


潤「なんだよお前かよ……そりゃライバルになるならお前だとは思ってたけどよ……」


悟「じゃなきゃなんだかんだ言って桃に付き合ってもう何年も“心の掃除人”やってないよ」


潤「……だよな」


悟「じゃあ、どっちがお姫様を救出するか競争だね」


潤「……妨害魔法かけるとかは禁止な」


悟「(笑って)そんなことはしないよ。戦いはフェアじゃなきゃ、お姫様に嫌われちゃうからね」





(心象世界。ファンタジーな世界にぼろぼろのくまのぬいぐるみが待っている)


くま「ようこそ、ぼくの心象世界へ!!歓迎するよお!!!」


潤「……何だコイツ。なんで桃の声で喋ってる?」


悟「……さあ」


くま「二人はお姫様を助けに来たんだよね?ぼくはそのお姫様を捕らえる悪ーい悪ーいくまなんだ、ヒヒッ」


潤「!!(矢をつがえる)」


悟「潤待って!!……どういうことだい」


くま「(歌うように)お姫様は今あの茨の城で眠っている。ぼくの心の闇を受けて魘されている。だからね、君たちはぼくを倒さなきゃいけない。姫騎士の力なしにぼくを倒さなきゃいけない。お姫様は眠りの中、らんらら、王子は二人もいらない」


潤「わかるように言え」


くま「痛っ、蹴らないでよお。……だからね、ぼくはこうして大きくなるんだ。誰かの夢を吸って、誰かの悪夢を吸って、大きく、大きく、大きく、大きく……(どんどん巨大化していく)」


悟「!!潤、離れて!」


潤「ちっ!!!」


くま「さあ、王子は二人もいらないよぉ。ぼくを倒せたらお姫様は返してあげる。でもね、眠りから覚ますには王子のキスが必要だ。どっちがお姫様の王子様なんだろうねえ……ヒヒッ」


悟「潤、戦闘準備を!!」


潤「うるせえわかってる!!何処を狙えばいい!!」


くま「ぼくの弱点は心臓の位置だよー。縫い付けてあるハートがその証。そこを狙えば弓でも魔法でもぼくは倒せるよー」


潤「そんな戯言たわごとに乗るバカが何処に……!!」


悟「潤、嘘じゃない……。あのくまの弱点は縫い付けられたハートの模様だ。あそこに攻撃を!!」


くま「ふふっ。どっちのキスで目覚めるのか、お姫様の心はひとつなのにねー」


潤「んなこたぁ今どうでもいい!!!桃を返しやがれ!!五月雨撃ち!!」


悟「唸れフォイア!!!」


くま「おっとっと。素直だねえ、王子様達。でもねーそんな攻撃だけじゃぼくは倒せないよー(腕を振り上げ、振り下ろす)」


潤「うわっ!!!」


悟「潤!!」


くま「そーれ、もうひとふりー(もう片方の腕も振り上げ、振り下ろす)」


悟「わわわわわっ!!!!!」


潤「悟!!!……くっそ、決定打が足りねえ……ここに桃が居たら」


悟「その桃を助けるために、僕達は協力してアイツを倒さなきゃいけないんだろ!!」


潤「わかってるよ!!!」


くま「あれあれー?仲間割れー?いいよお、存分に仲間割れしてくれてー。茨の森のお姫様が待ってるのは王子様なんだから、一人でいいよね?」


潤「……」


悟「……」


くま「あ、どっちも王子様じゃない可能性もあるか。その場合はどうなるんだろうねー。お姫様は目覚めないのかな。それとも誰も王子じゃなくても目覚めてくれるのかな。ふふっ、楽しみだなあ」


悟「……潤」


潤「……おう」


悟「僕に策がある。乗ってくれるかい」


潤「……聞くのかよ、いちいち」


悟「君が桃の王子様なら、僕はいらないから。あのくまはそんなに強くない。君の弓か、僕の魔法だけでも十分倒せる」


潤「そうかよ」


悟「でも、最短で倒すには協力する必要がある」


潤「乗った」


悟「潤……」


潤「選ぶのは桃だ。あのくま野郎の言う通り俺じゃないかもしれないし、もしかしたらお前じゃないかもしれない。それでも俺は桃を助け出す」


悟「……同意見だよ、潤。僕は桃の王子様になりたいんじゃない。……桃の一番になりたいとは思う。でもそれが潤なら……、悔しくないって言ったら嘘だけど」


潤「俺もお前なら諦めが付くぜ。もちろん、諦めたあとで奪わせてもらうけどな」


悟「それはこっちの台詞」


くま「なーにをごちゃごちゃいってるのかなー?どっちが王子様になるかの算段ならぼくを倒してからにしてくれないかなー。暇なんだけどー」


潤「おい、くま!!!お前が何者かなんて知ったこっちゃねえが、なんで俺達に倒されたがってるんだ!!」


くま「それがぼくの存在理由だからだよー。ぼくはね、誰かの身代わりなんだ。大事にしてくれた人の身代わり。あの桃って子は優しいねー。ぼくを連れ帰って、ぴかぴかに洗ってくれて、ちゃんとお部屋に飾ってくれたよー。だからぼくは彼女の身代わりをすることに決めたんだー」


悟「桃自身がそれを望んだのか!!!」


くま「ううん。これはぼくが好きでしていることー。桃ちゃんは関係ないよー。桃ちゃんの気持ちを確かめたい、ぼくのお節介かなー」


悟「なら、迷いは晴れた!!潤、あのハートを狙って!!僕が追い打ちをかける!!」


潤「了解!!……一矢入魂いっしにゅうこん、貫けェ!!!!」


悟「潤の矢に炎をエンチャント!!フォイア・エンチャンテ!!!!!」


くま「うわっ、何この矢、燃えてるのにまっすぐ飛んでくる……!!え、ぼく、こんなので倒されるの?王子様を決める戦いに、王子様同士の共闘なんて聞いてない……!!」


潤「残念だったな、くま。俺達は王子様の前に仲間なんだ」


悟「桃を大切に思う心と同じくらい、僕は潤を信頼してる」


潤「そして俺も悟を信頼してる。倒れろ、くま」


くま「……きっと、あとで後悔するよ。それでも……」


潤・悟「俺(僕)達は揺るがない」





(茨の城前)


潤「茨の城、ってここだよな」


悟「茨、焼き払ってみようか」


潤「…………おい、茨が勝手に動いて道を作ったぞ」


悟「まるで茨姫のお伽話だね」


潤「そうなのか?」


悟「潤はもう少し本を読んだほうが良いと思うな」


潤「うっるせ」


悟「じゃあ道もできたことだし、お姫様のもとへ行きますか」





(茨姫の寝所)


潤「桃!!」


悟「潤、落ち着いて!眠ってるだけだよ」


桃「すー……すー……」


潤「寝息まで立ててやがる……」


悟「ふふ、桃らしいね」


潤「さて、どうする?お姫様の目を覚ますには王子のキスが必要らしいが」


悟「それならもう決まってるよ。……キスの場所は、何も唇だけとは決まってないだろ?」


潤「なんだよ同じ考えかよ。とことんだな、俺ら」


悟「(笑って)じゃ、いちにのさんで」


潤「OK、いち、にの、さん」


(二人同時に桃の頬に口づける。ついでに頭をぶつける)


潤・悟「痛ぇ!!!!!!!」


桃「う、うーん?……あれ?潤?悟?何悶えてんの二人して」


潤「いってててて……おう、目が覚めたか、ねぼすけ」


悟「……ま、まじで痛い……。おはよう、桃」


桃「ん?んん?私なんでこんな豪華なベッドに寝てるの?それにここって心象世界だよね?なんで私こんなところにいるの?」


悟「それは話すと長くなるから帰りがてら話すよ……」


潤「ま、とりあえずは一件落着ってことで」


潤・悟「おかえり、お姫様」





(近くの公園、夕暮れ時)


桃「な、なんかすっごくこっ恥ずかしい展開を聞かされているんですケレドモ」


悟「まあ、僕も潤も桃が好きだっていう話だからねえ」


潤「さあ、全部話せることは話したぞ。お前の答えを聞かせてもらおうか」


桃「う、ううー……」





潤M「それからも、俺達は三人で“心の掃除人”をやっている。掲示板に書き込まれる数は増えるばっかりで、俺達三人以外にも手がほしいと最近はぼやいている始末だ。それでも俺達は、多分三人でやっていくんだろう」





悟M「僕達の関係は少しも変わらなかった。たとえ桃が誰を選んでも誰も選ばなくても変わらない自信がそこにあった。僕達の絆を舐めるんじゃない、とあの時のくまに言ってやりたい。ちなみにもちろん言うことはできないけれど、桃はそう叫んでいた」





桃M「私達は“心の掃除人”。困った人を助けるために、心の闇を掃除する正義のヒーロー。私が一番なりたかった姫騎士に私はなった。二人の王子様に助けられて、本当の姫君になったんだ。まさかあのくまが私の願望を写していたとは思いたくはない……けど、嘘にもできない気持ちがそこにあった。だから、私達はまだこれでいいんだ」



(次のシーンからは桃役の方に読む読まないをお任せいたします。社会人になった三人の後日談です)













桃「おっそーい二人共!!社会人になったって、“心の掃除人”が消えたわけじゃないんだからね!!!」


潤「流石にコンクリート管をくぐるのも腰にくるようになってきたけどな…………」


悟「ふあ……僕、仕事で寝てないんだけど……今夜も行くの?」


桃「あったりまえでしょ!!姫騎士を守るのは誰だと思ってるのよ!!」


潤「それは俺」


悟「それは僕」


桃「はいよくできました!!……答えを先延ばしにしちゃってごめんね、二人共」


潤「いーよ別に。もう慣れた」


悟「三人でいるのが当たり前になってるしね」


桃「でも、今日結論を出すから」


潤・悟「えっ」





桃「私を守る王子様は……」



(選択肢が3つあります。どれを選ぶかは、桃役にお任せします)



1,王子は潤


2,王子は悟


3,選べない





1,桃「私のハートを射抜いた弓兵、潤だって!!」



長い間



悟「あーあ、潤に負けたかあ」


潤「悪いな、悟。俺の矢は姫君のハートも射抜くんだ」


桃「でもでも、悟を手放す気はないからね!!」


潤・悟「は?」


桃「姫には側近も必要でしょ?だから今後も、三人一緒!!!」


潤「……そりゃ無いぜ」





――了





2,桃「私のハートを燃え上がらせた魔法使い、悟だって!!」



長い間



悟「え、……僕で、いいの?」


潤「あーあ、最後に美味しいところ持って行きやがって」


桃「でもでも、潤を手放す気はないからね!!」


潤・悟「は?」


桃「姫には側近も必要でしょ?だから今後も、三人一緒!!!」


悟「……ははっ、欲張りな桃らしいや」





――了





3,桃「結局選べないから、まだまだ二人共私の王子様で居て!!」



長い間



潤「桃らしい理由だ」


悟「本当にね」


桃「何よ、これでもかなり悩んだんだからね!!!」


潤「でも結局、俺達二人共お前の王子だってことだろ?」


悟「どっちから言い寄られても、別に嫌じゃないってことだよね?」


桃「えっ」


潤「……これから覚悟しとけよ、桃」


悟「……じっくり、僕達の愛を受け取ってもらうからね」


桃「や、やっぱりどっちか選べばよかったかもー!?」





――了


イメージBGM:大塚愛「PEACH」


参考資料台本:

SP-AI-RAL(JAKE様)(作品をご削除なされています。ご了承ください)

カットスロート・マスカレイド(久遠様作)

緩々百合心中(紅遠風財様)


【連絡先】

@MoonlitStraycat(Twitter。@を半角にしてください)

kariya.yutuki@gmail.com(@を半角にしてください)


反応が早いのはTwitterのDMです。

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