放課後大戦
「剣くん早くー」
ロッカーから靴を取り出す俺を急かす優の声。
「優、ちょっと待ってな」
これから優とクレープ屋に行くことになっている。
「剣一郎!」
後ろにはニヤニヤ笑顔の太陽が居た。
「リア充ライフ頑張れよ」
「お前もな」
太陽は1つ上の先輩と付き合っている。
因みにこの高校はカップルの聖地と言われるほど
カップルの数が多い。
「剣くん、まだー?」
「今、行くぞー」
太陽に手を振った後、優の元へと向かった。
「クレープ美味しいね」
クレープを買った後、意味もなくふらついている。
幸せそうな顔でクレープ頬張る優。
それを見て、和む僕。
この幸せが永遠に続けばよいのだが…。
「剣くんはどう?」
「うん、とっても美味しい」
「優も剣くんのクレープ食べたい」
可愛く優がお願いしてきたので
「分かった、1口だけな」
そう言い、クレープを優の方へと向ける。
「ガブリ」と食べる優。
「うむ、美味」
何とも独特な感想を述べる。
「ねえ、剣くんこれからどこ行く?」
「そうだな、近くのショッピングモールでも行くか」
郷愛学園の近くには何でもある。
先程行ったクレープ、ショッピングモール、遊園地。
娯楽には困らない市とは素晴らしいものだ。
「じゃあ、今からショッピングモール向かうんだ」
「うん、ここから真っ直ぐ行けば…」
今、俺たちは静かな住宅地に居る。
本来であれば危険など無いはずだが…。
「優!避けろ!」
優の上から降ってくる何か。
それから優を守るため、"力”を解放する。
手のひらを空に向け、硝子のような円を形成し、落下物を防いだ。
落下物と円はぶつかり合い、爆発する。
「ふぅ…大丈夫か優?」
「ゲホゲホ…うん大丈夫だよ」
爆発した時の煙が俺たちを包む。
(周りに一般人の気配がない…結界か)
「これを防ぐとは…やるな中野」
「誰だお前は」
煙の中にある人影。
こいつが俺たちの命を狙っている。
「あ、あなたは…」
煙が消え、表した正体。
その正体に優は驚いている。
「そうか、お前も参戦してたか」
目の前に立つ男の姿。
ぽっちゃりでボサボサ髪に眼鏡。
加えて、汗だく姿に低身長。
「そう、俺は出坂 桐也」
出坂 桐也。
1年にしてパソコン部の副部長。
見た目に反して運動神経抜群。
そして、彼が右腕に付けている盾。
「お前は盾だな?」
「いかにも、この力で貴様を倒す」
「そうはいかん、俺は優の願いを叶えなければならない」
「優…優ちゃん」
下を向き、プルプルとしている桐也。
「優ちゃんは俺のものだ!!!」
こちらを向き、怒りを顔に表している。
「死ねぇ!中野ぉ!」
怒りに身を任せ、突っ込んでくる。
想像以上の瞬足に一瞬驚いたが…。
「避けて!剣くん!」
恐れるに足りない。
それが今の感想だ。
俺はこの戦争に最も知識がある。
このような初心者相手なら負けるはずがない。
「愚か!」
目をつぶり、右手を開く。
その一瞬で剣を作り出す。
作り出された剣は西洋剣。
その剣は薄く青色に光っている。
僕は剣を強く握りしめた。
「そんな剣!俺の盾でぇ防いでやるぅ!」
乱れた顔で盾をこちらに向けてくる。
盾はカウンター攻撃などが得意なクラスであるが…。
「ふん!」
盾と剣先がぶつかり合う。
ただ、その戦いは呆気なく収束した。
「はぁ!?」
間抜けな声を発する桐也。
彼の盾は噛み砕いた飴の如く崩れたのだ。
盾を砕いた剣先が彼の首の前で止まる。
「お前の主人は誰だ」
桐也は剣先に怯えて硬直している。
「い、言えねぇ」
俺たちの正体を瞬時で見つけたのは
こいつの主人で間違いない。
ならば、主人見つけ出し他の敵の情報を吐かせたい。
「ち、ちくしょう覚えてろよ!」
桐也の周りがオーラで包まれていた。
「"呪術"で逃げる気か」
シュン!という音と共に大きな図体が消えた。
"呪術"とは従者の力を引き出す呪い。
主人は4回使用することができる。
使う程に力を増すが、制御できるかは従者次第である。
「とりあえず、一安心だな」
既に結界の気配は無く、相手も逃げたようだ。
「ねぇ剣くん、これからも戦うの?」
心配している目で見つめる優。
「仕方ないさ、これが戦争なんだ」
「剣くん、今日はもう帰ろうか」
「そうだね」
さすがの俺でも戦闘後は疲れる。
「そうだ、優」
「何?剣くん」
「出坂桐也にな気をつけろよ。同じクラスだろ?」
アイツは要注意人物だ。
優は俺の彼女であり、主人だ。
もし優が殺されたら俺は消失する。
「うん分かった、もしもの時は助けてね?」
僕は自信に満ちた顔で
「任せろ」
「じゃあ、私はバスで帰るね」
「了解、俺は歩いて帰る」
残念なことに僕の家と優の家は正反対のようだ。
「バイバイ~」
笑顔で手を振る優。
それに合わせて、俺も手を振った。
「ただいま~」
優と別れてから15分後、家に辿り着き、自分の部屋へと向かった。
(やはり、自分の部屋が一番落ち着くな...)
フカフカのベッドの上では誰もがそう思うだろう。
今の状況がまさにそれだ。
戦い終えたことでもあったのだが、僕は少し眠りについた。
たとえ、睡眠中であっても大戦のことが頭から離れない。
これからもそうだろう。
全ての参加者を止めるまで、僕は止まるわけにはいかないのだから...。