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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

深夜の廃校舎

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 誰が最初に言い始めたのかはわからないが、俺たちはそこにいた。

 場所は五年取り壊されかけた小学校の成れの果てである建物だ。

 木造校舎で、建てられたのは明治の中期、当時の財産家グループが作ったものらしい。地区に住む子供達のために、将来の投資という名目で設立されたのだそうだ。

 その学校も歴史が進むにつれ、子供達が学ぶ場だけはなく、町の社交場、戦時中は仮設病院の病室として使われていた。

俺達も5年生の途中までその木造校舎で勉強していたのだが、町議会によって建て直した鉄筋コンクリートの校舎に引っ越すこととなったのだ。

 木造の方は、他の事に再利用という形で残されることとなった。だが、残されたものの何故か再利用される事が短期間というもので、それにともないとある噂が囁かれ始めた。


   あの校舎には、幽霊が出る。


 他愛もない噂だった、最初のうちは。 木造校舎は、しっかりした造りではあるものの、古い建物ゆえにそうしたものを連想しやすいのだと思われていたのだ。

 然し、噂が噂でなくなってしまった。

 というのもある年に、小学生が深夜忍び込んで、二階から飛び降りてしまったのだ。小学生は足を骨折しただけで未遂だったものの、理由を聞かれたときに二階に誰かがいて呼ばれたからと、飛び降りた小学生は言った。

 その出来事が一回ならず、二度三度と起き始めたのだ。小学生に限らず、中学生から順繰りに繰り返された。ただひとつの共通点が飛び降りたのが女の子ということだった。


「・・・結局、何で俺達、こんなとこ来てんだよ。」

 そう愚痴るように言ったのは、エイジだ。自分の頭を掻きながら、俺の方を睨み付ける。

「何で俺を睨む? 睨むなら、言い出しっぺにしろ。俺も被害者だ。」

睨み付けられたので睨み返し返事を返す。実際、家でのんびり映画鑑賞と洒落込んでいたときに、水を差す様に呼び出されたのだ。行かないという選択肢もあったわけだが、その選択肢を取ると、後々鬱陶しい口攻撃が待っているので、来るしか道はなかったという訳だ。

「さて、今夜は実に良い夜と思わないか?」

 ここに呼び出した張本人のタカオが、気取ったように言い出しやがったので、どつきたくなったがそれだと話が進まないので、震える拳を納めてドスの掛かった声色で聞いた。

「お前さぁ、こんな変なとこに呼び出していったい何をしようっていうんだ?」

 俺の言葉に反応してニヤリと黒さが掛かった笑みを浮かべるタカオ。何か本当に嫌なことを企んでいるように見える。然し、奴の答えはオドロオドロしいものではなく。

「久しぶりにこっちに帰ってきたからさ、みんなで肝試しでもしようかと。」

 あっさりと告げるタカオに、俺達はキョトンとした。エイジが眉をつり上げて、興奮したように怒鳴る。

「てめぇ! しおらしく電話してきたと思ったら、ガキみたいに肝試しやろうだと!? 何考えていやがるんだ!!」

「だから、言ったろう。肝試しだって。」

 全く悪びれていないタカオに、エイジは背中を向ける。

「付き合いきれんわ。」

「お前、恐いの?」

 言葉を切り込んでくるタカオ。切り込んでくるタカオの言葉に、エイジは足を止め彼の方を向く。恐いというより、頭に来ている様子だ。

「恐かねーよ。何で恐いと思うんだ?」

「だって、逃げようとしてるじゃないか。」

「慎重なだけだ。ここは立ち入り禁止って言われて、言われてたじゃねえか。見つかったらやべえだろうが。」

 エイジの言葉にキョトンとするが、再び先程の人の悪い笑みを浮かべ

「エイジは随分と弱腰になったと思わないか?」

 こちらに水を向けてくるので睨み返し、

「俺に振ってくるんじゃねえよ。確かにタカオの言うとおりだぞ。わざわざ立ち入り禁止の場所に入ることはないだろ?」

 俺の言葉に、タカオはやれやれといった感じで首を竦める。

「お前もかよ。やれやれ。」

 そして俺達を見つめる。その表情は、先程の彼と違い、生が抜けたように見えた。無意識にタカオの方に手を伸ばす。何だか捕まえなくてはならない、そんな気がしたからだ。

「何、行く気になったか?」

 そういうタカオの表情には、生気が戻っていた。

「いや、そんな気は起きそうにないんだけど…」

「なんだよ、いきなり掴みやがって。ああ、あれか、怖いから俺にしがみつきたいって、乙女かよ。」 

 憎まれ口を叩いてきたものだから、ついタカオの両頬を捻ってやる。

「誰が乙女だ?」

 タカオは、いたたと言いながら俺から一歩離れ、足を校舎の方へと向けだす。

「タカオ?」

 俺は、校舎の方へ向かいだすタカオを止めようと呼ぶ。然し、俺の声など耳に入らないのか、歩みは止まらない。そして小声でぼそりと言った。

「きっと真相が掴める。」




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