知らない天井 4
「知らない天井......」
...神木、お前もか。
俺達が起きて一時間程経ったらだろうか、俺と征ちゃんが幽閉されてる牢屋の向かいの牢屋に投獄されたビッチウィッチという何とも不名誉なジョブを与えられた女生徒こと神木 鈴が目を覚ましのだ。
お約束の言葉をお約束の状況で呟きたくなるのは人の常というもの、わからんでもない。
だが、それも3回目となるともういい加減ハイハイ ソウデスネっていうよううなもんである。
でも俺はそんなこと冷たいことは言わない。
なぜなら俺は大人でありコイツらの先生でもあるので、皆の手本となってコイツらを立派な大人に導くという責任と使命があるからだ。
決して演算先生から神木のスリーサイズを教えてもらい、着痩せするタイプなんだなと感心したのと同時に少し罪悪感を感じたからではない。そんなことはあり得ない。
「大丈夫か神木。」
「大丈夫でござるか神木殿。」
「いてぇ~、あのケツあご野郎思いっきり殴りやがって、ぜってぇ許さねぇ。
ん!?......ジンパチ? ......と私の後ろに並んでたキモい変態やんけ、なんやあんたら!牢屋に仲良く入れられてるやん、マジウケる、ちょっと写メ取っとこ。」
「いや、神木お前も牢屋に入ってるからな。」
そうこの生徒や一部のヤンチャな生徒からは呼び捨てで呼ばれたりするが、そんなことで一々腹をたてては教師なんか務まらない。
「うぇっマジか!うわどういう状況やねんこれ!?」
「神木、写メは撮ってもいいが無事帰れたら余計な誤解を生みかねないからその写メ絶対消そうな。
後、取り敢えず紹介しとくな、この一見犯罪臭プンプンするおっさんは俺の幼馴染みで、色々偶然が重なってパンツ一枚であの教室にいて今回の出来事に巻き込まれたんだ、だから犯罪をおかそうと思ってあの場にいたわけじゃないんだ。
本音は犯罪を犯すつもりだったかもしれない、けど建前上は犯罪を犯すつもりはないと言っているから、そこはなるべく出来たらでいいから信じてやってくれ。
さ、征ちゃん自己紹介して。」
「ジンちゃん、悪意に満ち満ちた紹介ありがとうでござるよ。
拙者、白椿 征四郎 ジンちゃんとは中学校まで一緒だったでござる。
教室には身内を探しに行ったでござるよ、教室に入ろうとしたら上から水の入ったバケツが落ちてきてビショビショになってしまってパンツ一枚になったでござるよ。
だから決して犯罪者ではない、人畜無害なもののふでござるよ。」
「水の入ったバケツ... あ~そういや仲良し四人組が何かジンパチに食らわすとかいってセッティングしとったな~、陰険な奴等が何かしとるわ思って見てたけど、そういうことやったんか。」
仲良し四人組とは学校一の金持ち+イケメンの東条 誠也、学校一のスポーツマン+イケメンの西村 誠、学校一の美少女の黒金 結、学校一の才女の白川 七海のことだ。
彼等は所謂スクールカーストの最上位と言えるような所にいるにも関わらず退屈しのぎに弱いもの苛めを煽ったり、今回みたいな幼稚な嫌がらせをしてきたりする。
本人たちはそれらが上手くいこうが失敗しようがどうでもいいらしく、取り敢えず退屈しのぎになればいいだけで、そこに善悪の垣根は著しく低かったりする。
だから必ずしも悪人というわけでもない、クラスメイトを助けたり協力したり笑いあったりもする。
彼等は善悪の区別をつける倫理観がまだ育っていないのか、他人の痛みを想像する能力が欠如してるのか、善にも悪にも躊躇なく傾倒しやすい危うさがあった。
本来ならば成長していく過程で悪い行いは注意されたり、その行いが自分に返ってきたりなんかして気付き身に付いていくはずなのだが、いかんせん彼等は恵まれ過ぎた環境や容姿、優秀すぎる能力のせいで周りから矯正されることなく育ってきたのだろう。
俺も教師という職業についてる以上、彼等を正しく導く立場ではあるので責任の一旦はあるのだろうが、苛めを叱るも他者に対する態度を注意するも、優秀すぎるがゆえにそれだけを良しとして褒め称えたりする大人もいたりして、不甲斐ないが彼等の倫理観を成長させるに至らずに一年が過ぎその責務を終えようとしていた。
まぁ日本の今の時代の教師という社会的地位や安月給でそこまで求められても困るし、なんとかせにゃイカンというような情熱も最初の半年くらいで見事に消散してしまった。
まぁ簡潔に言えば暇と能力と金と人望を持て余した高スペックな幼稚なガキなのだ。
だが、それに付き合わされる周りはいい迷惑である。
因みにヤンキー茶髪ツインテの神木はこの四人とは余り仲は良くない、というかその迷惑を受けた事のある被害者でもあるのでメチャ嫌ってる。
まぁ今回も征ちゃんから聞いたときに恐らく彼等の仕業だろうと感じてはいたが。
つくづく平穏を愛する俺からすれば、生徒と先生の関係でなければ一番関わりたくない人種ではある。
そんな奴等が勇者、拳聖、聖女、賢者等という大層なものを宛がわれて、それがプラスに働けばいいが今のところ不安の方が大きい。
「......おい、征四郎!」
えっ!神木いきなり征ちゃんを呼び捨てっすか!
「おい神木、征ちゃんは俺と同じ年だからな、年上をいきなり呼び捨てはないだろ。」
「いや、ジンちゃん拙者はいいでござるよ。」
「いや、そういうわけにはいかんだろ、こういうのは最初が肝心なんっ」
「ジンちゃん!! ......ジャマすんな(ボソッ)。」
えええぇぇぇ! 俺邪魔してたのー?よく見りゃこの変態少し喜んでんじゃねぇか。
「征四郎!」
「はいぃぃ!!」
「お前を私の舎弟に任命してやる、文句はないな。」
初対面の目上の人とのはじめての会話で、いきなり舎弟にしてやるってどういう神経してんだよ。
「えぇ~流石に拙者もいい年した大人でござるから舎弟というのはちょっと...」
「ぁあ?ええのかお前それで、私のジョブ知ってんやろ?ビッチウィッチやで、ビッチの舎弟になれるんやで、それを断るってことはビッチである私の御褒美とかお仕置きとか要らないってことやねんな?
もう一度聞くで、征四郎お前はなんだ?」
「拙者、何時いかなるときも鈴殿の舎弟でござるぅぅ!」
征ちゃんチョロすぎだろ!顔を会わして1分も経ってないのに年下に会話だけでここまで上下関係ハッキリさせられるなんて、幼馴染みとして涙が出そうだよ!
まぁ確かにビッチ神木の御褒美とお仕置きには俺も少し心を動かされそうになったけども。
「ククッそうかそうか、搾りカスになるまで馬車馬のように使ってやるからな。」
「搾りカスになるまで搾られるんでござるか!はうぅぅ」
こらこら征ちゃん前屈みになるな、何を想像してるんだ君は。
たぶん神木の言い方のニュアンスだと、征ちゃんの想像してるような事はないと思うぞ。
「おい、俺の幼馴染みで遊ぶのはその位にしておけ、引きニート童貞である征ちゃんは女子と会話だけで興奮するんだから、それい以上煽るとイってしまいかねん。
流石に俺もパンツをカピカピにした幼馴染みと一緒の牢屋に入るのは嫌だからな。」
「ジンちゃん!酷いでござる!拙者はそんなに早くないでござるよ!!
そういうジンちゃんも鈴殿が起きるときイヤらしい犯罪者の目で見てたくせに、あれは鈴殿のスリーサイズを演算スキルで見てたでござろう。」
わっバカ、征ちゃんなに言ってんだよ!
「ぁあああ?スリーサイズ?どういう事やねん、ジンパチィ~」
「バッバカ、こんなパン一男の言うことを信じるんじゃない、仮にも俺はお前の先生だぞ、着痩せするタイプなんだなとか思ったりするわけないだろ。」
「征四郎!」
「はい!着痩せするんだなと呟いてました、あとパンツが見えそうで見えないのかスカートがジャマだなとも言っていました。("`д´)ゞ」
しまった~声に出てたか~
「神木、これは必要なことだったんだ。
俺たちはジョブと一緒にスキルも発現しているんだよ、俺には固有スキルとして演算スキルと死霊術、通常スキルとして格闘系のスキルが少しあったんだ。
それの演算スキルの確認作業にために目に写る色んな物を数値化してて偶々お前が目に入ってしまっただけだ、だからやましい気持ちなぞ一片もないぞ、パンツはその~あれだ、お前が連れていかれたときにパンツを没収されてないか確認するためにだな見ていたわけで~......」
「.....….」
「...............」
「........................」
なにこの沈黙、そしてその鋭い睨み、眉間のシワが怖いんだけど。
「......ジンパチィ~私にはな心眼って言ってウソを見破るスキルがあるねんで。」
「すいませんでしたぁぁー、エロい目でスリーサイズやらパンチラを眺めてましたぁぁ。」
間髪入れずに無意識に覚えたての身体強化Lv4を駆使し我ながら見事な後方伸身2回宙返り4回捻りすなわちシライ3を超えたカザマSPを披露しながらそのまま土下座で着々するという荒業にでたのだが。
「ククッアハハッハッハァッーヒィーヒッヒッヒー なんやその動きキモすぎ~マジウケる~ウソじゃジンパチ~、心眼なんか持ってるわけないやろアホー、カマかけただけや~これでお前も舎弟やで、断ったらクラスの女子にスリーサイズ盗み見られる事バラすからな。」
ぐぬぬ、このビッチめ先生を謀るとは、よく考えれば今まであいつ気を失ってたんだからスキルなんか確認できるわけないじゃないか、こんなことで俺の一年間保った生徒たちからの威厳が脅威に晒されるとは。
「あ~おもろかった~でもまぁそろそろ真面目な話しよっか。」
「あっはい。」
いきなり誘拐されて、牢屋にパンツ一枚の征ちゃんと入れられて、挙げ句の果てには先生から生徒の舎弟に成り下がって異世界散々だよコンチキショー!!
ストーリーが余り進まないので明日も投稿します、たぶん
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