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馬鹿は死んでもならない  作者: 二階堂翡翠
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馬鹿の始まり

馬鹿は死んでもならない


俺は馬鹿である

それもそんじょそこらの馬鹿じゃない、大馬鹿だ。

俺の名前は高橋深弦。身長173cm体重63キロの平均的体格をしていると思っている。そんな俺も今年で22になるのに定職につかずにふらふらしている。

趣味といえばゲーセン巡りにカードゲーム、パチンコにカラオケ、それとエロゲー。

まさしくオタクだ。

そしてまた俺は今の仕事を辞めようとしていた。


事の発端は高校三年生の頃だ。

地元の就職向け高校に通う俺は3年生の時に進路という壁にぶち当たった。

何も調べずに学校に送られた企業向けのパンフレットを流し目で見る。基本給、就業場所、仕事内容がどんなもんかしか興味がなかった俺はろくすっぽ考えもせずに外部的に自分で進路を開こうとしていた。

そう、自衛隊だ。身体も鍛えられて資格も山ほど取れるからという理由で俺は試験を受けに行った。正直体力バカが集まるような場所でペーパーテストを行ったところで落ちるわけがない、と甘く見ていたせいか参考書を買ったにも関わらず勉強もせずに周りが進路に目を向けている時に1人遊び呆けていた。そんな舐めた態度で試験に挑んだ俺はペーパーテストの他に作文という巨大な壁に阻まれた。たしかその議題となるのが‘離れた友達について’書けというもので自称文系と言い張る俺にとっては簡単な問題だった。そう、書くだけの話なら。何文字以上何文字以内という当たり前のように付き纏うこの指令をクリアすることが出来なかった。

それでも何とかなってると思い込んでいた俺は皆が就職が決まっている中で一人遅れて結果を待っていた。

試験を受けたことを忘れかけていた頃だ、学校に1本の連絡が入った。残念ながら不合格です、と。

当時世間を甘く見ていた俺は教室に不合格だった事を告げた。ガラッと勢いよく扉を開けて「人生負け組です」と大声で叫ぶと俺はその場を去った。

悔しくて、悲しくて、何よりも心配してくれていた両親の助言も聞かずに俺は不真面目な態度で試験に望んだことに対しての後悔で涙が出た。

高橋家は裕福な家庭ではない、どちらかといえば貧乏だ。

支払いは遅れるし授業料は免除、中学の頃は給食費すら払わなかった程に。

母親は中卒の低学歴で父親も高校中退。両親とも若くして親が病気にかかりやむを得ず就職についた。

父親は頭が良く何処の現場に行っても頼りにされている俺と違って凄い人だ。それでも入った会社の経営が傾いたせいで全盛期の手取りが半分程度になってしまったにも関わらず会社に毎日行き家族を養うために頑張ってくれた。

母親はそんな父親の負担を和らげる為にパートを始めた。

やはり学ぶ機会が少なかった母は周りが考えれば分かるようなことも分からずに劣等感に苛まれながら毎日仕事に向かっていた。頭も良くない上に手先は不器用。

それでも自慢の母親だった。

兄も家を出て住み込みで働き妹は手先が起用で容姿もいい。学校で偶々作った服が県のものづくりコンテスト?みたいなので認められて縫製会社に勤めている。

友達も真面目で仕事も出来る方なので会社では信頼も厚くメキメキと頭角を現していった。

そんな中俺は三年間で職場を三回変える程飽きっぽい性格をしていた。

一社目はプラスチック製造業に勤務していた。

会社の利益が悪くボーナスもない、昇給もない。

友達からボーナスの話が出る度に居心地が悪くなり最終的に職場を離れた。

嫌々仕事をしていたら手が腱鞘炎になって寝る事も出来ないほど痛く腫れ上がっていたので療養という名目で会社を辞めた。

当然次の会社も決まっておらずダラダラと自堕落な生活を続けた結果少ない貯金も底を尽きた。

このままじゃダメだと思い求人雑誌から給料が高そうな会社を選びそこに入った。宅内作業がメインな仕事で仕事自体もそれ程難しくはなかった。

ただ気掛かりなのが通勤距離が往復50キロと遠かった事と日曜日に出勤があるという事だった。

それも最初のうちは仕方ないと腹を括っていた事だったが遊びたい盛りだった俺は会社に行くのが嫌になっていた。理由は手先が不器用で仕事が上達しない事ともう一つは新しく入ってくる新人が有名大学を出ていて超有望と聞いていたからである。

◯◯は仕事が速いな。それに比べて高橋は……と比べられるのが耐えられなかったからだ。

そんな状況が続きモチベーションも殆ど無かった時に辞める転機が訪れた。

隣を走る車が急にぶつかってきて車が破損して動けなくなったからだ。

代車を頼むという手もあったが大雪の影響でスリップ事故が多発していて代車を用意出来ないと契約している保険会社からの通達を受け、仕事に穴を開ける理由にもいかないという理由で俺は仕事を辞めた。

一応事故ということなので一時金と病院に通った謝礼金で生活をしていった。勿論同時に職を探すことからまた始めた。

転職向けの携帯サイトを登録しては転々と周っては保存してと一応就職活動を続けていた。そんなある日兼ねて気になっていたハローワークを覗いてみた。受付を済ませると番号の入ったプラカードを手渡された。この番号の書いてあるのパソコンを使って下さいとの事だった。

ペンタブとは違った液晶画面にタッチして検索を絞っていくという形で検索は行われた。

俺は今度は賞与がある所を選んだ。印刷と書かれた所をタッチすると応募用紙がコピー機から出てきた。これを受付に提出すると企業に電話をしてくれるみたいだというのはすぐに分かった。

早速企業に連絡を取ってもらうと少し話をしてもらった。‘職務経歴書’について。

履歴書は何度も書いたから書き方は知っていたが職務経歴書は初めて見る単語で意味がわからなかったからだ。

それを告げると仕事の内容を書けばいいとアドバイスを貰い早速家に帰るなり履歴書と職務経歴書の作成に取り掛かった。

字を書くことに関してはそれなりに自信があった俺は丁寧に履歴書と職務経歴書を完成させた。

今の履歴書は親切なもので中に封筒封入されていた。

俺はネットで調べて見様見真似でなんとか制作することが出来た。

ポストに投函し連絡が来るのを待つ。3日後に連絡がきて面接をしたいという連絡が来た。道が分からない俺は1時間以上早く家を出たにも関わらず到着したのは指定時間ギリギリといった体たらくだった。


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