夢魔と夢
霊を見るようになってからどれくらいだっただろう〜。
はじめ見たのは高校生に入る前くらいかなぁ〜?
高校に入ってからは学校が仏教高だったからよく見てた…。(行事でお寺に行くことがあったし。)
みんなの注目の的になったこともある。
何せ霊が見えるのだから皆興味津々で。
見えない人が何が楽しいのだろうと何度も考えたが、実害がなかったので僕もそのままにしていた。
しかしそれがのちに恐怖となって僕を襲う事になるなんて思いもしなかった。
ある日、何時ものように夜に寝ていた時の事。その日は何度も寝返りをうっていた。そう、眠れなかったのだ。
何故そうなったのかわからないが、夢と現実が分からなくなっていた。
夢の中では僕は誰かに追われていた。何故かは分からない。気がついたらそこから始まっていたのだ。
僕は汗びっしょりかいていた。
何から逃げていたのだろう?
誰かの影?自分の影?それとも…。
そうこうしているうちに目の前に大きなドアが出現した。
重そうなそのドアは鍵がかかっているようで開かない。
ドアノブを回して何とか中に入ろうとしていた。だってすぐ後ろから誰かがやって来るんだよ?怖いじゃないか。
ヤバイヤバイヤバイ。
そこで目が覚めた。
やはり全身汗びっしょりかいていた。
手もヌルヌルする。
気持ち悪くなった僕は深夜にもかかわらずシャワーを浴びに行く事に。
しかしシャワーを浴びている時にも嫌な感じがした。まるで誰かに覗き見されているような…そんな感じだ。
ササっとシャワーを浴び、浴槽に入るのはやめてとっとと出た僕は慌ててタオルで体を拭き、服を着て脱衣所を後にした。
なんなんだ?
一体?
僕は携帯を手に室内を動き回った。
何かあったらすぐ電話できるようにしている。部屋の中をぐるぐると回ったが特に何か変わったところはなかった。
だが怖くて携帯が手放せない。
布団に潜ったが、目が冴えて眠れやしない。
今の時間は深夜12時を回っている。
諦めて部屋の明かりをつけた。はずなのに電源がつかない。
焦ったよ。
夢でも見てるんじゃないかって…。
でも周りの部屋を見ても電気がついているところが所々あった。まだ起きている人がいるようだ。もとが落ちたのかもとブレーカーを探しに玄関に向かった。
ブレーカーは玄関を出てすぐの場所にあるからだ。
携帯の明かりのみで玄関まで行き、ドアを開けた。
そしてブレーカーの箱を開けて確認すると確かにブレーカーは落ちていた。
再度確認しながら全ての電源を入れ、部屋に明かりがつくのを確認するとホッとした自分がいた。
部屋まで戻ってくると電気をつけた。そこにいたのは真っ青な顔をした男性だった。
ビックリした僕は叫び声をあげてしまったことに気づかなかった。
両隣の部屋の電気がつく。起きたようだ。しまったぁ〜。マズイことしたな。とは思ったが、こちらもビックリしているので周りに注意がいかなかったようだ。
トントンと玄関のドアを叩く音が聞こえてきた。僕は慌てて玄関に向かう。
男の霊が出たなんてどうやって説明したらいいのか…。そもそも本当に出たのか?
玄関のドアを開けると見慣れた住人が立っていた。
「どうかしたのかい?叫び声が聞こえた気がしたんだけど…。」「あっ、はい。なんでもないです。すみません。こんな時間に起こしちゃったみたいで。」「ああ、これから寝るところだったからそれは問題ないよ。それにしてもすごい叫び声だったよ。まるで何かに驚いたような。」「はい、あの〜、実は…。」僕はそう話を切り出した。
すると隣の人は玄関から部屋に入って来た。
部屋という部屋を確認したらしいが何もないという事らしい。
気のせいだったのかもしれません。怖い夢のせいかも…。
「何かあったらいってくださいね〜。」「ありがとうございます。もう大丈夫です。」僕がそう言うと心配そうな顔をしながらも帰って行った。
僕は部屋に戻り、今日はとにかく部屋の明かりをつけたまま寝る事にした。
幸いさっきの男の霊はいない。
徐々に眠りについていった。
夢の中で僕はやはり何かから逃げていた。何から?何で?わからないがとにかく人通りが多い場所に向かって走っていた。
途中何度もつまづきそうになった。焦っているのだから当然かもしれない。
一度足を止めた時、誰かの足音のような物音を聞いた気がした。
カツッ、コツッ。
確かに足音が聞こえる。
恐怖が勝ち、僕は慌てて走り出した。
逃げても逃げても追っかけてくる。
人ごみが見えたのですぐに潜り込んだ。
ホッとしたのもつかの間、足音は確かに近づいてくる。僕を狙っているのか?一体何故?僕が何をしたって言うのか?
これは夢だ、夢に違いない。なら早く目覚めなきゃ。
そうは思ってもなかなか思うようにならない。両目をギュッとつぶり、それから目を開けるのだが何も変わらないのだ。
じゃあ、これは夢じゃないのか?そう思い、頰をつねってみるが痛みは感じられない。何が何だかわからない。
ただ痛みがないと言うことは夢だと言うこと。これは確かだろう。
問題は現実でも同じ目にあっていると言うことだ。
とりあえずは起きなければと思い、何度も目をパチパチしていたら目が覚めた。ホッとした。これでとりあえずの恐怖は去ったのだ。夢の中の悪夢は…。
あとはリアルの方の恐怖をなんとかしなくてはいけない。
そこで僕はある方法を取って見ることにした。
その方法とは…。
追いかけられたと思ったら最寄りの派出所に駆け込むと言うもの。
相手が気づかないうちに徐々に近づかなくてはならず、これはなかなかほねがおれた。
なんせ相手は気づいて途中でいなくなってしまうこともざらだったからだ。
それでもつけられたと感じたらすぐに足をそちらに向けた。
それから何時間か後にようやく解放されることになり、僕はようやく肩の荷が下りた気がした。
それから自宅へと帰り、今日あった事を思い返したがわからないままだった。
そして電気をつけると現れるこの霊の存在も忘れてはいけない。実害はないはずだったのだが、いきなり目の前に現れて混乱して悲鳴をあげそうになることも少なくない。その度に隣の住人には(迷惑をかけてるなぁ〜。)と言う自覚もある。とは言うもののなんともしようがないのが実情だ。
それなのにあの日から変わってしまった。そう、悪夢を見るようになってからだ。
霊は徐々に僕の方に近づいているような感じがして気味が悪い。
無表情だった顔にも変化が現れ不気味にニヤリと笑う姿が怖い。そして何より怖いのは片手を体の後ろに隠していることだ。なぜ隠す必要がある?何かを持っている…とか?
じゃあ、その何かって何?と聞かれても答えようがなかったのだが。もしかしてあれなのかもしれないって言うのはあった。そう、包丁だ。なぜそんなのを持っているのかって?僕を殺すためだよ。
対処方法は…お守りを持つこと。お札を部屋中に貼ることくらい。それでもないよりはマシだと思っていた。
お札を張ったその日から霊は来なくなった気がした。気配も感じられないのだ。その他のことをよく知っている友達に聞くと霊はここには入らないからここにいれば大丈夫。もし、出てくるようなら考え直さないといけないとは言っていた気がする。
つけられている感じもしなくなった気がする。肌身離さず持っているお守りのおかげか…。ズボンのポケットにいれているのだ。
その日もいつものようにズボンのポケットにお守りを入れてからズボンを履き、服を着替えた。外出時にはいつもこうしているのだ。
たまには気分を変えてウインドウショッピングをして見ることに。
ちょうどGパンがダメになってきたものがあったので何度も履いたりしていたらちょうど気に入ったズボンがあったのでそのまま履いていこうと思い、お守りの事をすっかりと忘れてしまっていた。
買い物を終え、帰宅する途中から何か不気味な気配のようなものを感じていた。
何度も振り返りながら歩いていたが、それがなぜなのか理解していなかった。
あのお守りの事をすっかりと忘れていたのだ。
慌てて荷物を持ち走った。
コワイコワイコワイ…。
何から逃げているのかわからないまま自宅に着いた僕は部屋の中を見てようやくそれがなんなのか気がついた。お守りが貼ってあったのだ。ズボンを買った時履き替えたままだったので慌てて袋からズボンを出し、お守りを出した。お守りはボロボロになっていた。まるで身代わりにでもなったかのようだ。切り裂かれていたからだ。
新しいお守りを手に祈った。どうかもうコワイ思いをしませんようにと。
それからは何も起こらなくなった。
あの男性の霊も出なくなった。
僕はホッとしている。




