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自殺人カザミ  作者: みつい ひふみ
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状況説明

寒咲は、大きな海に1滴の雫が垂れる音を聞いた。その音はどこか聞き覚えがあり、そしてどこか優しげだった。

「俺は……今どこに」

うっすら開けた瞳には、全てを呑み込んでしまいそうな暗闇が映った。光などなく、平穏などとは遠い存在の空間。そんな気がした。

「あ……頭は……」

寒咲はゆっくりと、その手を額へと動かす。かざした手は今までと同じく、平らで健康的なおデコへと触れていた。

「いったい……どうなって」

「ありゃ?よーやく起きたやねぇ」

何の前振りもなく、突如視界は明るさを取り戻し、耳は雫の音ではなく、聞き慣れぬ老人の声を拾っていた。

「あ……え?今度はどーなって」

「いやいやえーから、もーちょいゆっくりしとき」

寒咲は身体を起こそうとしたが、枯れ木のように心もとなく、血管があちらこちらで浮き出している手に、グイッと押し返された。

「あの、いったい私はどうしたんでしょうか? 今の状況もよく理解できていないのですが」

まぁ、そうやろね。と、老人は白髪を数回掻き、話を始めた。

「とりあえず、君の脳内に無理矢理埋め込まれたチップは、我々医師が再度丁寧に埋め込ませてもらったわ。勿論、最新技術を駆使したんだから、痛みも傷もないやろ?」

自らの額を撫でる……が、特に目立った外傷はない。勿論、痛みもない。

「ああ、思い出した。たしか女の人に額を」

「ぶち抜かれたんやろ?ホンマに酷いなぁルイルちゃんは!」

あははははぁ!と、豪快に笑い飛ばした老人は、いかにも健康そうに見えた。

そして、1つ新しい情報が増えた。

「ルイル……っていうのは?」

「なんやアイツ、自己紹介すらしとらへんのか?」

どうやら、僕に色々説明をしてくれたあの女性の事らしい。

「本名はルイス・ルマネティー。やから略してルイルや。本人はあんまし気に入ってないみたいやけど、次に会うたらルイルって呼んでみ」

どつきまわされるかもなぁ!と、案外笑えない冗談を言われた。

「ルイスさんでした?……結構美人さんなのに残念な方ですね」

特に性格。

「せやろ?ホンマに勿体ないわ。そーかルイルちゃん自己紹介すらせんかったか……そしたら結構ガサツに説明してるかもしれんから、君の今の状況やこれからの事を、ワイの方からもっかい説明するで」

そして受けた説明を簡単にまとめよう。まず、寒咲を誘拐した組織だが、世界中がありとあらゆる場所でこの組織に協力するほど、大きな力を持っているらしい。この組織が目指すのは、人権無き者が今を生きる人の為に尽くす社会。というものらしい。人権無き者というのは、寒咲のように自殺をしようとするような人間だ。

そしてその社会実現の為に、最初の人権無き者に選ばれた……ようは第一号のモルモットが、寒咲だということだ。そして、その寒咲に与えられた最初のミッションは、殺人鬼を始末し、今を生きる方々の不安要素を取り除く事らしい。老人曰く、殺人鬼の始末はまだ楽な仕事なのだと言う。つまり、人権の無い人間なのだから、別に死んでしまっても構わない、という考えだ。しかし、そのまま丸腰で殺人鬼の所へ送っても、何も出来ずに死んでしまう、もしくは逃げ出したり、自殺したりするだろう。そこで生まれたのが、能力開発チップだということだ。

「そして、お前の脳内にはそのチップが既に埋め込まれとる。だから、君は既に能力者や言うことや」

老人は、机の上に置いていたコーヒーの入ったコップを、寒咲へと手渡した。

「そんじゃあ、とりあえず。コップの中のコーヒーを浮かせてもらおかな」

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