いざ!能力者へ!
「液体を……操るですか?」
「そうだ」
彼女はそのままの意味だと言わんばかりに頷いた。しかし、こちらとしては具体的な説明をしてもらいたいものだ。
「あの、具体的にどんな感じなんでしょうか?」
なんだ、不満か?と少し怪訝そうな顔をして見せたが、まぁお前に拒否権はないがな。と、自らを説得するかのように、能力について説明してくれた。
「お前も子供の頃、よくゲームや漫画で見た事があるであろう『水を操る能力者』みたいな奴がしていたことをお前も出来るようになるという事だ」
具体的な事を言えば
「視界の中に入っている液体を、自分のイメージ通りに操る事ができる。湖の水をすべて使って、大きな家を建てたり、1滴だけ垂れた水道の水を小さな刃物に変えたり、水溜りの水を宙に浮かせて相手にぶっかけたりもできるぞ」
「なんすかスゲェ!!」
まさにヒーローが使いそうな能力だ。自殺を試み、クズ人間の生活を全うしていた自分が言うのもなんだが、これからの人生は本当に楽しくなりそうだ。そもそも、今の説明を聞いたところでは、今回の犯人殺害任務はかなり簡単なものとなってしまうのではないか。
「そんな能力があれば、その辺の殺人鬼なんて余裕でぶっ殺せますよ!なんたってこっちは能力者なんですからねぇ!」
その気になれば、目の前にいる彼女も殺せるのではないだろうか。なんて野暮な事を考えるのは……今は止めておこう。
「……そうだな。では、これから君の脳内にチップを埋め込む作業に取り掛かる。心の準備はいいな?」
「バッチシですよぉ!」
最初は、厄介な事に巻き込まれたと思って聞いていたが、どうやらこれは神様が僕にくれた、人生やり直しの機会だったようだ。それも強くてニューゲームのだ。
「では、失礼する」
彼女の手に、キラリと光る何かが見えた。こんな薄暗い部屋に、勿論光が差し込むなんて事は無い。じゃあ何故光った?
そんな呑気な事を考えていたその直後、彼女の手は勢いよく寒咲の額へと突き出された。
ベグチャア!よくホラー映画などで聞く、血が飛び散るときの効果音が聞こえた。それも、外からではなく……頭の中から。
「え?……え?」
首は金縛りにでもあっているかのように、微動だにしない。仕方なく目玉だけを動かし、音のした方へ意識を向ける。
寒咲の瞳に反射した光景は、彼女の手が、寒咲の額の中へ抉りこまれているところだった。
「すまんな。生憎様、有能な医者が丁寧に手術する訳にもいかないんだ。お前のようなクズぐらいでな」
ズブズブ……と、彼女はゆっくり、ゆっくりその手を引き抜く。彼女の手は血で真っ赤に染め上がり、指先には何かグチャグチャになった固形物がくっついていた。
「おや、脳みそが少し取れてしまったか」
ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛
寒咲は意識を失った。