表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自殺人カザミ  作者: みつい ひふみ
3/9

存在価値

「あいええええええええええ!?」

そらこんな反応するだろう。確かに死のうとした事は事実だが現に今、寒咲は生きているのだ。だのに社会では死んだことに……

「ちょっと頭がこんがらがってきたんスけど……」

この数分で色々な事を吹き込まれ、軽いパニックに陥っていた。

「まぁ、君には理解出来んだろうな。我々の組織は君の考えている数万倍は大きな権力を持っている。全世界の政府、警察、研究団体は我々の味方なのだよ」

彼女は吸っていた煙草を地面に優しく落とし、靴のつま先で踏み潰した。

「だから、君の存在くらい簡単に消せる。簡単にな」

しかし寒咲は腑に落ちないところがあった。それは親の存在だ。いくら彼女の勤める組織が大きな権力を持っていたとしても、両親はそう簡単に息子の死を受け入れるものなのだろうか?ましてや、自分はここに居るため遺体なんかも存在しない。流石に怪しむはずではないか……

「ちなみに、君のご両親なら三千万円で手を打ってくれたよ。あんなクズ人間いりません!だとさ」

ワオ……これが現実だ。そりゃあそうだと我ながら思う。実際に、寒咲自身が自分に愛想を尽かして自殺しようとしていたではないか。

いや待て、クズ人間だと?両親は寒咲が勉強もバイトもしていない事を知っていたのか?

「とまあそういう訳で。全世界が我々に協力してくれるほど大規模な実験になる訳だが……まずは君の役割。存在価値から説明しようかな」

彼女は胸元から手帳を引っ張り出してきた。正直、寒咲はその胸元をガン見してしまった。無論、後悔はないし罪悪感もない。

「人権を失い、既に死人として扱われている君には、これから命懸けの仕事を毎日こなしてもらう。それも、今を必死に生きていらっしゃる方々の為にだ」

「命懸けってことは、もしかして死ぬ可能性とかありますか?」

「当たり前だ。というより、死ぬ事を大前提とした仕事をこなしてもらうことになる」

ああ、良かった。ついそう考えてしまった。実際、今の状況が完璧に呑み込めている訳ではないが、面倒くさそうなのは理解した。ならば、早く死んでこの組織から開放された方が幸せだろう。

「何か文句あるか?」

「いえいえ!寧ろ大歓迎でございますです!はい!」

明らかにゴミを見るような目で見られた。そりゃあそうだ。死ぬかもしれない仕事を大歓迎など、ドMを超越したキチガイだろう。

「ま、死に対して恐怖感を持ってない方がこちらとしてもやりやすい。だが、君はモルモット第一号だ。流石に1日で死ぬなんて事はないようにな」

勿論一日目で死んでやるつもりである。当たり前だ。

「それで、具体的な仕事内容だが……君には兵庫県に行ってもらいたい」

「兵庫……ですか」

そうだ。と彼女は手帳を数ページ弄りながら答えた。

「お前が死ぬ……いや、死のうとした二日前。兵庫県で起こった殺人事件を知ってるか?」

「兵庫の殺人といえば……」

寒咲が自殺を決行した二日前。兵庫県北部で小学生児童15人が、無差別で殺された事件があった。犯行時刻は午後4時半頃と推定されており、犯人は現在も逃走中。殺された児童は皆首を切り離されており、15人中8人いた女子児童に至っては、全員が目玉をくり抜かれており、さらに数名は耳を引きちぎられたような痕が残っていた。そうニュースでやっていたのを思い出した。

「我々の組織が動けば、その犯人は簡単に捕まえる事ができる。だが、それでは我々が組織を結成した意味が無い。そこで、死んでも構わないモルモット……寒咲君の出番な訳だが」

いくらクズ人間な寒咲でも、この後の事はすぐに察しがついた。

「まさか……犯人を捕まえろと?」

「捕まえるなんて甘い事はせんでいい」

殺せ。そう解き放たった彼女の顔は、余りに冷淡で無表情だった。

「こっ殺すったって……俺、当たり前だけど殺人なんてした事ないし、そもそもそんな凶悪犯とまともに殺り合えるなんて思えませんよ……」

「まともに殺り合う必要はない。どんな方法を使ってでも殺せばいいのだ。それが君に課せられた最初の仕事だ」

余りにも無茶苦茶だ。殺人素人の寒咲が殺人鬼相手に何が出来る?無駄に辛い思いをして殺されるだけに決まっているではないか。

「まぁ、流石にイキナリ殺人鬼を殺せなんて言われて、はい殺ってきますなんていかないだろう。そんなの誰でも想像出来る事だ」

手に持っていた手帳を再び胸元にしまい込む。寒咲は彼女の胸元を1度チラッと見たが、すぐに目線を逸らした。

「じゃあどうするってんですか?まさか、殺しの講義でも受けさせる気ですか?」

そんな事をしている時間はない。そうハッキリ言われた。少しボケたつもりだったのだが、相手は間に受けてしまったのだろうか?

「これから、君の脳内にとあるソフトを導入させてもらう」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ