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自殺人カザミ  作者: みつい ひふみ
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殺人鬼 討伐編

「電車に飛び込むか? いや、それじゃあ大勢の方にご迷惑をかけてしまう……マンションから飛び降りるか? いや、もしも偶然下にいた人にぶつかりでもしたら大惨事だ……」

平日の午後2時頃、街は営業中のサラリーマンや授業終わりの学生達で賑わっていた。この土地はさほど都会ではないと聞いていたが、想像していた以上に人混みが目立つ。だから俺は地元に居たいと言ったのだ。

男はコンビニで缶ビール2本に気持ち程度のピーナッツを購入し、自宅へと帰った。その土地では家賃が高めのランクに入るマンションだ。男は仕事……バイトすら経験したことの無い人間だったので、勿論家賃は親が払ってくれている。

男の名前は寒咲帝(かんざきみかど)21歳。高校時代は成績優秀だったため、県外のエリート大学を勧められ、その意見に流されるがまま、学校推薦で大学に合格した。しかし、寒咲の想像していた以上にレベルが高く、高校教師の過大評価と、何も考えなかった己の怠惰さに腹を立て、そのまま引きこもってしまった。勿論、両親はこの事を知らず、帝は勉強を頑張ればいいから、金銭面は父さんと母さんに任せなさい。と、両親は今も金銭援助を行っている。

要は寒咲帝はクズなのである。

自分に嫌悪感を抱き、本気を出せば大丈夫だと現実逃避を続け、勉強はおろかバイトすらせずに時間を無駄にする日々。こんな生活が続けば、やはりある考えが脳裏に浮かぶのである。

それは自殺だ。寒咲も悪魔ではない。自分が今行っている行動がどれほど下劣で最低な行為なのか自負している。このまま堕落した生活を続ければ、きっと誰も報われないのだ。

「だったらせめて、俺の生命保険で両親の懐でも潤してやろう」

こう言って自殺を決意したのだった。

しかし、立つ鳥跡を濁さずとも言う。極力誰にも迷惑をかけずに逝きたいと寒咲は考えた。生きている時は親に、死ぬ時は他人に迷惑をかけるなど、地獄行きも当然の行為だと思ったからだ。小一時間悩んだ末、家のリビングで首を吊る事にした。そうすれば、誰も迷惑がらずにあの世へ行けると考えたのだ。きっと自分が幽霊として化けて出なければ、幽霊物件になる危険性も無いだろう。だからこのマンションの評判が落ちる事はない……と。他人が自殺した部屋など、誰が借りたいと思うだろうか。帝はそんな簡単な事すら気付かずに、自殺の準備を着々と進めた。

「ロープも固く縛ったし……大丈夫だよな」

小さな椅子の上に立ち、ロープの輪の中に頭を入れた。不思議と恐怖感は無く、走馬灯なんかも感じられなかった。あとはこの椅子から脚を離せばオシマイだ……。

いや、オシマイなはずだったのだ。この時、寒咲は気付いていなかった。リビングには自分以外にもう一人人間が潜んでいた事に……。

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