こうして世界は平和になりました。
薄暗い部屋の真ん中には仰々しいテーブルと向かい合うように椅子が2つ置かれている。
そこに音もなく人影が2つ現れた・・・。
「おっつー」
「おつ」
こんな感じで軽いノリで進んでいく話。
基本2人しか出てきません。
薄暗い部屋の真ん中には仰々しいテーブルと向かい合うように椅子が2つ置かれている。
そこに音もなく人影が2つ現れた・・・。
「おっつー」
「おつ」
二人はお互いに片手を挙げて挨拶をすると、それぞれが椅子に座る。
「今日はタイミングピッタリだったな」
金髪に青い目、腰には立派な剣をさした男が向かい側に座る男に親しげに話しかける。
「確かにな。いつもはどちらかが先に来て待つことが多かったからな」
話しかけられた男は、黒髪に黒目、おまけに黒いマントの前身真っ黒な男だった。
こちらも親しげに返事をしている。
「で、そっちはどんな感じ?」
気がつくとテーブルの上にはお茶の入ったカップが二つ現れていた。金髪の男は気にせずカップを手に取りながら、黒い男へ話しかける。
「変わらないな。そっちはどうだ?今どこら辺なんだ?」
黒い男もカップを手に取りながら答えている。金髪の男は黒い男の言葉に持っていたカップを置きながら疲れた様子で話し出す。
「やっと賢者の塔だよ」
「どうした?今日は一段と疲れているな?」
ため息でもつきそうな勢いの金髪の男の様子に、気遣うように黒い男は尋ねると「それがさぁ」と金髪の男は行儀悪くテーブルに肩肘をつけて話し出す。
他のやつらがマジつかえねぇんだよ。まぁ、それは最初からだったけどさぁ。
でも最近はあいつらも結構レベル高くなってきたし、強くもなってきたのに戦いでは常に俺が前衛で、他の奴らは後衛なわけ。武器だって防具だって他のやつら優先で、俺は後回し。「あなたは力も防御力も私たちより高いから大丈夫ですよね」ってアホか!武器は少し前にゲットしたコイツがあるけど、専用防具はまだ先になんないとゲットできねぇのに俺のつけてる防具パーティーじゃ最弱なんだぜ?
俺が倒れたらお前らがモンスターに狙われるってわかってんのかって言いたいよ。
「・・・溜まってるな」
「あぁ、それに加えて戦闘は俺に全任せなくせに、俺が少し寄り道しようとすると「私たちには使命が!」とかなんとか言って先を急がせようとすんだぜ。そのくせ自分たちが気になったことには寄り道とか関係なく突っ込んでいくし・・・はぁ、マジ疲れるわ」
いつの間にかテーブルの上にはカップの他に菓子などの軽食も置かれている。金髪の男はその一つを手に取り口にする。
それを咀嚼しながら黒い男へ目線を向ける。
「お前の方こそ、本当はどうなんだよ。変わらないとか言いながら疲れた感じだぜ?」
黒い男は「わかるか?」と少し苦笑して答える。
「変わらないことは変わらないんだ。部下達がお前の所に行こうとするのを止める日々だ。」
「あーいつも悪いな。さすがに今一気に来られたら、うちのパーティー全滅だわ」
「だろ?なんだかんだ言って止めてるけど、疲れないわけじゃないからな」
二人は最近の動向をお互いに伝え終わると椅子から立ち上がる。
「じゃ、またな『魔王』」
「あぁ、早く来いよ『勇者』」
そして二人は部屋から消えた。
「これが最後だ!魔王!!お前を倒して平和を取り戻す!!」
「フハハハハハ!!勇者よ!死ぬのはお前の方だ!!」
そして激闘の末、勇者は持っていた聖剣で魔王を倒した。
こうして世界は平和を取り戻したのだった。魔王によって壊された世界だったが、人々はお互いに手を取り合い、生きていく。
白い何もない空間に黒い男「元魔王」がいた。そこに金髪の男「元勇者」が現れた。
「遅かったな。・・・いつものか?」
「あぁ、いつものさ。今回は姫と結婚して国にいてほしいってさ」
元勇者はやれやれといった風に話す。
それを見て元魔王も苦笑した。
「いつも同じだな」
元魔王の言葉に元勇者も「あぁ」と苦笑で返す。そして続けて話し出す。
「いつも通りだが、そろそろ人も気づきそうなもんだけどな」
「ん?」
「いやさ、いっつも同じパターンだろ?
魔王が現れて世界の危機になって、予言された勇者が現れて仲間を集めて魔王を倒し、世界を救う・・・何回繰り返してると思ってんだよ」
「まぁ、確かにな」
元魔王は少し疲れた様子で元勇者の言葉に返す。「だけどな」と元魔王はそのまま続ける。
「それが人なんだろ。裕福になればなるほどそれだけじゃ足りなくなってくる。なんでも良いから理由を作って自分以外に敵を作って、相手を倒して相手の物を奪う。それは物だったり、物以外だったり。そうしてそれを繰り返すんだ。そうしておかないと自分が安心出来ないのさ。
魔王という強大な敵が現れなきゃ、遅かれ早かれ世界は破滅してるよ。そして極端にいえば、人にとって魔王もどこの誰かも分からない勇者も興味無いんだよ。
自分を脅かすもの、自分を救ってくれるもの。ただそれだけさ」
「そんなもんかね」
「そんなもんだろ」
「そうでなきゃ、魔王が現れたからって都合良く勇者が現れたり、魔王の手下が順番に勇者の前に現れる事に対して誰も何も疑問に思わないわけないだろ」
「そっか」
白い空間に球体が現れる。
「お、次はここか」
「休む暇も無いな」
二人は急に現れた球体に驚く様子もなく、話している。
「次はどっちにする?」
「たまには勇者でもしてみるか」
「オッケー、んじゃ、俺が魔王な」
そう言って二人の男は球体に吸い込まれるように消えていく。
次はどんな設定にする?
そうだな。・・・生き別れた双子の兄弟とかどうだ?
えー、5つ前の世界でやったじゃん、それ。俺としては元親友って設定で・・・
お前好きだな。その設定。
いーじゃん!
いいけどな。
じゃ、また後で、勇者!
あぁ、後でな魔王
白い空間には青と緑が美しい球体が残った。
ゲームとかでよく見る設定、ストーリーですが、その裏側でこんな感じで進められていたら・・・と思って書いてみました。
もしかしたら、長編化するかも・・・?