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カル&マクのどろり二人旅  作者: ブーブママ
第二章

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魔族ストリウス(前)

『少々時間をかけすぎたようだな──』


 薄気味悪く空洞に響き渡る声。


 不気味で耳障りな──それでいて強大な力を感じる声。


「ああーっ、お気づきで?」


 に、師匠の媚びた声が応じた。


「……な、何ですか、今の」

「上級魔族の方だよ、マクナスくん。なんでも、泡の遺跡に封じられていたそうでね」


 とんでもないことを、師匠がさらりと言った。


「いやあ冒険者たちに連れられて行った遺跡で、こう、誰か仕掛けを動かして解放してしまったらしくてねえ。その後捕まって、街の方角を聞かれてね。死にたくないから案内したら、目隠しされた状態で大きな音はするし揺れるし放置されるし何がなんだかさっぱりだったよ。ま、目が出てたところで地下なんだろう? 真っ暗で見えなかったろうけどねえ。はっはっは」

「──なるほどな、合点がいったぜ」


 師匠の笑いを押しのけて、カルが言った。


「魔族でもないゲランドが人間の街まで来たのはどーいうワケか考えてたんだが……やるじゃねえか、ハゲ」

「おっ、そうかい、名も知らない冒険者さん? ちなみにタスカーというのが自分の名前で──」

「ああ。テメエの案内のおかげで街の下に大穴が空いて沈没して、被害者がケッコー出てるぜ」

「──へっ?」


 師匠の禿げあがった頭部がサッと青くなる。


「そ、そんな──そんなつもりじゃなかったのだよ。あの方が、人のいる場所を教えないと食うって言うから、それでだね」

「その言い訳を街の連中が聞いてくれりゃいいがな」


 カルがイヤらしく笑う。


「助けてくれ、だったか? 構わねえぜ。魔物に食わせるより、人間どもが袋叩きをしているところを見る方が面白そうだ」

「な、なな、なんてことを」

「まァ、オレも魔族じゃねェ。報酬次第では、黙ってやっててもいいが?」

「なっ、なんでもするぅ! だからとにかく助けてくれえ!」


 師匠の悲鳴を聞いて、カルがゲラゲラと笑った。その背中を、ボクはこっそりとつつく。


「だ、大丈夫なの?」

「ア? 何がだ」

「本当に……助けられる? だって、上級魔族って話なんだよ!?」


 それも、泡の遺跡に封じられていたといういうことは……遥か昔、強力な魔物が地上に溢れかえり、人類が滅びの危機にあったという、あの伝説の泡沫戦争期の魔族の生き残りってことになる。


「ハッ──封印されていた時点で、大したヤツじゃねえよ。上級なんて名乗ってるのもハッタリだろ」


 カルはあざ笑う。


「何百年も時代に取り残されてるボケ野郎さ──だいたい、あの姿でデカいクチ叩けるか?」

「えっ──見えてるの? い、いるの? どこ!?」

「あそこだ──ああ、暗くて見えねえか。チト待て」


 カルが精霊の言葉で光の精霊に呼びかけると、光の玉がふるふるっと震えて、次第に大きくなって……辺りが明るくなっていく。


 そうしてボクにも見えるようになった。カルの指す先──ゲランドの女王の頭の、その側面から生えているモノが。


『愚かなダークエルフが……』


 そいつは、ゲランドの女王の頭から生えていた。ギトギトに光る糸のカタマリ──よく見れば腕と顔らしきものがあって、声にあわせて口のようなものが動いていた。


 ──確かに、大きさでみたらゲランドの女王のほうがよっぽど怖い。


 けど、アイツからは──イヤな力を……魔力を感じた。


『この上級魔族ストリウスの力が分からぬとはな……』

「聞いたこたねえな、んな名前」


 それでもカルは余裕の態度を崩さなかった。


「だいいち、オレが用があるのはテメエじゃねえんだよ。おい、タスカー」

「なっ、なんだい?」

「ゲランドの根腐れ薬、それで黙っといてやる。作れるか?」

「根腐れ薬? そんなものでいいなら──って、君、女王を倒すつもりなのかい!?」


 師匠があわててぐちょぐちょと揺れる。


「やめた方がいいと思うな! 庭の除草程度なら、他の材料でも作れるから! わざわざゲランドの根腐れ薬なんて……女王の腹をさばいて材料を取り出すなんて、必要ないよ! ここはさくっと自分を助けて、とっとと逃げだそうじゃないか!」

「あいにくオレが除草したい相手はそこらの草花じゃねーんだ。やらねェならテメエは街の衛兵に引き渡す」

「うぐぐ──ど、道具はあるんだろうね。材料は女王の腹の中にある卵の、その卵液だ。新鮮なうちじゃないと作れない」

「マク、持ってきてんな?」


 持ってきてる。背負い袋はタイヨウを取りに行ったときのままだ。……それにしても。


「カル、庭なんて持ってたんだ」

「ちげーよ……」

「──というか、もしかして」


 ボクは気づいてしまった。


「最初からそれが目的で、それで来たの?」


 師匠を助けるんじゃなく?


「なんだ、今気づいたのか?」


 カルはあっさり認めた。……そう、だったのか。なるほど、師匠が死んでいたとしても……錬金術の心得のあるボクなら、その代役が務められるもんな。なんだ、そうか……見直して損した。


「んだよ、お互いに利益のある話だろ? タダで命張れるかっつの。で、タスカー。やれるな?」

「君が無事に勝ってくれるのを祈るばかりだよ」

「ハッ、煽ってくれるじゃねえか」


 カルはニヤリと笑って、ゲランドの女王に──魔族ストリウスに向かい合った。


「よう、待たせたな糸野郎。ちょんぎってやっから、覚悟しな」

2021/12/31改稿

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