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世界を渡る石  作者: 非常口
第8章 幕間
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世界樹の崩壊がもたらすもの 4

「おいおいっ、どうなってやがんだ!」


「あなた、これ以上は待てないわ。アリスにこれ以上の罪を負わせるわけにはいかない!」


「わかった。」


「ライラさん、私を殺すの?」


 ライラとワゾルが目にも留まらぬ速さで短剣と斧を振りぬく。その剣筋に一切の迷いはない。【根源の精霊】の加護が二人の強さを極限まで高める。ゴルディロアやフレイアであっても何も反応できないほどの一閃だった。結果、アリスネルの首と胴が分かたれて飛んだ。


「っ!」


 ライラが唇をかみしめる。だが、次に聞こえた声はすぐさま彼女の表情を強張らせる。


「本気というわけね。でも、届かないわ。」


 そこには傷一つなく胴も首もつながったアリスネルの姿があった。


「嘘!?」


「確かに、確かに、ならこれはどうかしら?」


 アリスネルの反撃を許さないとばかりにアンアメスが斬りかかる。振り向いたアリスネルの目がアンアメスの紫の瞳と合わさる。幻覚が彼女を襲う。


「…その目、厄介ね。」


 意識の外からの斬撃。幻覚から解かれるまでのわずかの間にゴルディロアが剛剣を叩き込む。


「ちっ、確実にやったと思ったんだがな。肉体の限界超えてやがんぞ。」


 アリスネルがゴルディロアの剣を親指と人差し指でつまんで止める。勢いを一瞬で消されたゴルディロアがつんのめるように止まる。同時に2人の頭上から太陽と見紛うほどに巨大な火の塊が落下する。ゴルディロアは逃げる様子もなくただ剣を全力で押し込み続ける。アンアメスが結界を展開する。


「ぎぎぃちぃいいっ」


 ゴルディロアの苦悶の声が響く。アンアメスが歯を食いしばりながら余裕なく結界を維持する。結界の内部はただただ白く輝き、結界越しに尋常でない熱量を放出する。


「あっちぃ~~!」


 光が止むと同時に結界が砕ける。飛び退いて地面に転がりながら体を冷やすゴルディロア。【火精の守護壁】という火属性の攻撃を完全無効化するスキルを持つ彼だからこそ助かった。それでもすぐには立ち上がれないくらいに消耗している。大の字に横たわる。


「お前ら、俺ごと殺す気かよ!」


「【火精の守護壁】を持っているって言っていたじゃない。あんたの実力を信じてあげたんだからむしろ喜んでもいいんじゃない?」


 フランベルが欠伸に笑い声を混ぜる。


「あいつの属性は世界樹、火は天敵のはずよ。どう、ターペレットが残した禁呪の威力は?」


 レントメリが膝を折って崩れながらも強がって見せる。その身はすべての瘴気を失って徐々に崩壊していく。


「【星喰】として食うはずだった瘴気をこんな風に使われるだなんて思っても見なかったでしょ?」


 トグメルが爽やかに笑いながらその体を崩しながら満足げな表情を浮かべる。


「あとはあんたが見届けなさいな、フランベル。」


「任せな~、二人はゆっくり休むんだよ。」


中心の地表はマグマのように溶け、急冷されてガラスを形成する。白い蒸気が薄らぎその中心に残る黒い影が揺らいで現れる。


「これならさすがのあいつも…嘘だろ。」


「はぁ、大量の瘴気を無駄に使ってくれたわね。でも、美味しいわ。あなたたちの絶望。」


 アリスネルがゴルディロアの剣の破片を落として手を払う。その姿に一切の変わりはない。


「動けるのは?」


 フランベルがライラに問う。


「私とワゾル、あとは貴女かしら?」


「時間を稼ぐか?」


 ワゾルが斧を強く握り直す。


「その必要はないわ。あなたたちは何もできずに世界が滅びるのを見ていなさい。【静止する世界】」


 アリスネルの姿が消える。


「どこ…え?」


 フランベルの肩にアリスネルが触れる。それだけでフランベルはその瞬間に動きを失う。


「ライラ!」


 ワゾルがライラの背後に現れたアリスネルに飛びかかる。だが、彼女の狙いはもとよりワゾルだった。アリスネルの手が彼の脇腹に添えられる。その瞬間、ワゾルの体が宙に浮いたまま止まる。


「あ…」


 崩れ落ちるライラ。その背後に気配を感じて振り返る。絶望に覆われたライラが時を奪われる。アリスネルがその手でライラの頬を撫でる。


「あぁ、美味しい。絶望の瘴気で満ちていく。」

こちらの本編はサイドストーリーを進めてから再開します(2023/2/4)。

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