利き香
「早かったですね。準備など必要ありませんよ。魔法を使うだけですから。」
(私とアリスに気を使ったかと思えば、今度はずいぶんと挑発的な言動。どこまで察して振舞っているのかいまいちわかりにくいのですよね。)
タイミングこそ良かったものの挑発的な言葉を並べた当夜にフィルネールはここまで順調に進めなかった焦りも相まって内心ざわついた感情を抱いてはいたが勤めて冷静を装った。
「へぇ。」
「では、早速始めましょうか。トーヤ、気持ちよくなったからってすぐに寝ちゃわないでくださいよ?」
フィルネールの気持ちなど気づくことなく、生返事のみの薄い反応を返した鈍感男に僅かでも意趣返ししてやろうと彼女なりの挑発をつなげた。それでも、当夜から帰ってきた言葉にはあまり響いた様子もない。他人事では気持ちを察することに鋭敏である彼が自身のこととなるとあまりにポンコツな性能になり下がる様は如何にも気づいていないふりをしているだけようにフィルネールには感じられるのだ。そうなってくると度量を試されているようで下手を打つわけにはいかないとついつい弱腰になってしまう。もちろん、当夜にそんなつもりは無いし、彼の鈍感さは地球に将来戻ることを考えての予防線によるものが大きい。
「そんなに効くんだ。ちょっと自信が無いな。なんだかんだで精神を日々削られているからね。」
「トーヤが~?」
アリスネルはフィルネールと自身の立ち位置を入れ替えた普段の光景を想像して2人のやり取りを自らへの憐れみをもって傍観していたが、当夜の呑気な言葉に次第にやきもきし始めて思わず声を出して反抗してしまう。当夜が目で抗議する。
「なんだよ、アリス。僕だって大変なんだぞ。」
「ふ~ん。だってさ、フィル?」
「フフフ。こういうことは本人が一番わからないものですよ。さて、では始めましょうか。」
2人だけで納得したように頷く様子に眉間を寄せながら訝しがる当夜は改めて問う。
「我慢大会を?」
「あはは。大丈夫よ、トーヤ。寝ちゃったら顔にいたずら書きしておいてあげるから。まぁ、利き香は女性のたしなみだから私たちは強いよ~。」
(まぁ、トーヤは戦力外というよりはお目当ての品だから相手になんてしていないわ。問題はフィルね。戦いに明け暮れていたと聞いているし、この手のことに秀でているとは思えないけどこんな会を主催するくらいだもの油断できないわね。ここは譲れない!)
当夜のことなど敵ですらないと判断したアリスネルは、フィルネールに鋭い視線を向ける。対するフィルネールはこの会の主催者でもあるせいかどこか余裕を持って受け止める。
「我慢大会ですか。言い得て妙ですね。とは言え、本来はリラックスするためのものですから安心して寛いでいてください。とは言え、寝てしまっては何をされても致し方ありませんよ。そして、それは私たちにも言えることですから。トーヤが寝てしまった無防備な少女たちに手を出したとしても誰も咎めませんよ。」
(まぁ、トーヤのことですから私たちが無防備に寝ていても手を出してこないでしょうね。だからこそ、私たちが仕掛けるしかないのでしょうけど。そのあたりはアリスもわかっているようですね。リラックスどころか目がギンギンに冴えているみたいですから。ですが、私も騎士団にいる頃から自室で一人寂しく利き香に勤しんでいた身。その力を甘く見られては困りますね。とは言え、抜け駆けなどするつもりもありませんし、先にアリスが寝てしまったら起こしてあげるとしましょう。)
「はははっ。そんなこと言って。獣をこの輪の中に入れたことを後悔させちゃうぞ。」
2人のそっけない反応に少し寂しさを覚えた当夜は対抗心剥き出しで本人も知らないうちに爆弾を放り込む。
「「え?」」
目線を交えていた2人が不意に当夜に向き直ると、野生のライオンが獲物を狙うような鋭さが込められた迫力を当夜に向ける。当夜にはそれが利き香を汚された怒りに思えた。
「あ、いや、冗談です。ごめんなさい...。」
(ぎゃー! その上で誘ってくれたものだと思ったけどやっぱり勘違いかっ? 仮に誘ってくれていたにしても今の発言はまずいだろ。これはまずい。空気が香りでごまかせなくなるくらいに悪くなる!)
ここまでの強気も一気に吹き飛び、小鹿のように小さくなる当夜を見た2人は欲望のまなざしを止め、慌ててフォローに入る。こんなことで逃げられでもしたら目も当てられない。そもそも冷静に考えれば当夜がそのようなことを本気にするはずがないと察しが付くのだが、空想の中で描いてきた当夜を自らのものにするという光景が間近に迫っているために欲望が理性を上回ってしまったのだ。そして、2人は互いにこの後の展開を思い描く。
「あ、い、良いんじゃない? ほら、それくらい意気込んでくれないと張り合いないし!」
(ううん、油断しちゃ駄目よ。トーヤは口だけで大体終わっちゃうんだから。勝利を確実に得るには甘い誘惑に負けちゃ駄目なんだから。でも、トーヤが私を選んでくれたならそれはそれで...。)
「そ、そうですよ! そうなら私も負けるわけにはいきませんね。トーヤも盛り上げてくれますね。」
(危ないですね。トーヤのこの一言が危険なのですよ。一番の敗北は2人が眠りに落ちてトーヤが呆れながら布団をかけて立ち去っていく流れです。容易に想像できるのがなおさら怖いのです。)
「ああ、うん。ちょっと盛り上げてみようかなって。もちろん、寝ているところを襲うなんてしないから安心して。」
(いや、ここで襲わない発言するのは彼女らの容姿を否定するような気がするな。)
「だ、だけど、2人とも美人なんだから完全保証できないぞ。3人で仲良くぐっすりがベストだよね。」
「う、うん。」
「え、ええ。」
想定内の当夜の言葉に納得と落胆を同時に頂戴しながら微妙な相槌を打った2人は互いの顔をみて苦笑いする。
「さて、ではまず小手調べにアイオリスからいきますか。アイオリスは精神安定と疲労回復の効果があります。では、【火よ舞い、風よ踊れ。ウォーム ブリーズ】。」
フィルネールを中心とした温かい風が巻き起こる。その風に差し出した手の中に握られたアイオリスの葉が宙で霧散する。天井にぶつかった風の流れが当夜の顔を撫でる。
「ん?」
(う~ん? ミント系の爽やかな香りに柑橘類の酸味の効いた香りが感じられるな。とは言え、だいぶ弱いな。もう少し待たないとわからないのかな。)
爽やかな香りというところであるが、それこそ地球で強い香りに慣れてしまっている当夜からすればそれはあまりに薄かった。少し待ったのだが変化はむしろ減退する方向に進んだ。2人の様子をうかがえば目を閉じ、上を向いて降りてくる香りを楽しんでいる。
「いつ嗅いでも良い香りね。かなり量を使ってくれたから結構強く感じるね。」
「ええ。ですが、まだまだ始まったばかりですから頑張りましょうね?」
しばらくして目を開けて小さくほほえみあうアリスネルとフィルネールはどこか幸せに包まれているようだ。やがて、フィルネールが次なる粉末を取り出す。
「?」
2人の受け取った感覚と同等のものを得ているとは思えない当夜は腑に落ちない様子で首を傾げる。
「さてと、次はファネルの花ですね。ちょっと刺激が強めですので驚かないでくださいね。」
「ファネルかぁ。懐かしいなぁ。盛り上がっちゃうかもしれないなぁ。」
フィルネールの注意事項にアリスネルがうんうんと頷いている。
再びフィルネールが魔法を発動させると彼女らの言う通りペッパーに似た刺激的な香りにバルサム調の芳香と知られるイランイランが加わったような甘みを足された例えるならセクシーとでも表現すべき香りが部屋に漂う。アイオリスよりは断然強い香りではあるが、所詮はこの世界の基準で考えればという強さだ。それでも当夜は2人にあわせるために少し誇張して評する。
「これは結構刺激的な香りだね。何だか気分が昂るよ。」
「はぁ、ほんと。トーヤもわかるんだね。」
(だったらちょっと甘えてもいいかな。)
アリスネルは当夜の傍に体を寄せるとそのままの勢いでしなだれかかる。
「ちょ、ちょっと!? 何くっ付いてきているんだよ?」
当夜が慌てて離れる。アリスネルがキョトンとした表情を浮かべて当夜の顔色をうかがう。当夜の顔にそれほどの気分の高まりが見えないことに気づいたアリスネルは大げさに離れる。大げさに離れたせいか、あるいは支えを失ったせいか、アリスネルはバランスを崩してふらつく。そんな彼女を当夜は抱き寄せると顔を逸らす。アリスネルは顔をその胸に埋めた。
「う、うん。ちょっとぼーっとしちゃって。」
(あ、あれぇ? おかしいなぁ。トーヤもこういう気分に中てられているはずなんだけど...。)
「ま、まぁ、それじゃあ、しょうがないよね。」
「...うん。」
しばらくそのままの状態で抱きしめられていたアリスネルはファネルの効果などとうに抜けているにもかかわらず弱った姿を演じる。少しでも当夜と密着するために。
「ん? だいぶ香りが飛んだみたいだね。もう大丈夫かな?」
「...ごめんね。」
「だ、大丈夫だよ。」
短い時間、それでも【時空の精霊】のいたずらか2人にとっては不思議と長く感じられる時間が過ぎた。フィルネールは瞳を閉じて香りの完全になくなった部屋で2人の邪魔をすることなく静かに佇んでいる。その姿に気づいた当夜は抱きしめていた手を緩めるとアリスネルに終わりを告げる。アリスネルはどこか寂しそうに当夜を見上げたが、そのぬくもりが逃げ出すのを抑えるように自らを抱きしめて離れる。フィルネールはその光景に目を細める。
(う~ん、惜しいところで効果切れですか。本来ならば、次は媚薬の出番だったのですが...。レムに邪魔されていなければ今頃、)
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(さて、アリスはずいぶん温まったみたいですから次が勝負ですね。気合を入れますか! それにしてもトーヤは強いですね。沈静薬を飲んでいる私とほぼ互角ですか。)
フィルネールは今回は幹事であることに徹するために鎮静剤を服用することでここまで気持ちの平準化を保ってきている。それはこの会の幹事として、当夜の恋人としては先輩であるアリスネルを立てる後輩としてことを成し遂げるために選んだ道である。次はハルフの実から抽出された媚薬である。強い興奮作用のほかに強すぎる催淫効果があるといわれているために容姿に自信はあるがプライドの高い女性が囚われている娼館でとくに珍重されている。同時に高価であることもあり、それこそ貴族の下種な愉しみに使われるケースを除いて個人的に使うようなものでは無い。まして、女性が利き香に用いるようなものでは無い。
「では、本日最後の香りはハルフの実から抽出したエキスです。」
「え゛!?」
(な、なに考えているのよっ。このタイミングで使うなんて聞いてないよ。そんなの利き香に使うようなものじゃないって! そもそもフィルだって、ま、まさか解毒、ううん鎮静剤をっ?)
「ちょ、ちょっと待って、」
フィルネールはさも利き香に当然のように使われる素材であるかのように何の淀みも無く最終兵器の名を告げる。もしもこの世界の男性が聞けばフィルネールやアリスネルのような美しい女性からの愛の誘いに思わず飛び跳ねてその媚薬の効果に関わらず襲い掛かったことだろう。だが、その例から見事に漏れる当夜は依然として2人の意図に気づくこと無く言葉をただ受け流していた。
「女も勢いが必要です。さぁ、行きますよ。」
「うぅ、フィル、ずるい...、」
「ふふふ。ごめんなさい、アリス。でも、チャンスですよ。」
薄紫色の霧が部屋を染める。一時的に耐性を得ているフィルネールが満を持して合い席する2人の様子を確認する。アリスネルが当夜に抱き留められて体を小刻みに震わせている。間違いなく彼女の準備は整っているはずだ。つまりは媚薬の効果が現れている証拠だ。そして、当夜もまたそんなアリスネルの体に熱いまなざしを送っている。深い口づけが交わされて...、
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「2人は一線を超えてしまいました。」
(となるはずだったのですが。はぁ。)
「フィル! 声に出てる、声に出てる!」
「ん、んん!?」
アリスネルがフィルネールの口を押えるために飛びかかって押し倒す。当夜がそんな2人に苦笑しながら首を傾げる。
「ん、一線を超える? どういうこと? 僕ならまだ起きているよ。それにしても、アリスはずいぶん元気になったみたいだね。そんなに飛び跳ねて。そうだ、せっかくだから僕の持ってきたやつも試してみようか。」
(地球側で嗅いだ香水と比べてずいぶん弱かったからな。一応、ここまでの流れを見るにきつい香りが無かったからこっちはものすごく少量でいいよね。)
当夜が治療薬の空き瓶に移してきた透明な液体を試験管を振るような動作で2人にアピールする。
「そうだね。私、楽しみだな。」
「え、ええ。ですが、少しお待ちを、」
(何だか私の勘が嫌な予感を訴えています。ここは止めた方が、)
「そ、そう言えば、トーヤが時空魔法以外を使っているところを見たことありませんね。使い慣れていない魔法は暴走するといいますから止めておきませんか? アリスも十分休めたようですし。」
当夜の指の間で揺れる透明な液体に一人は期待を、もう一人は不安を覚える。後者であるフィルネールは普段から当夜が時空以外の魔法を使った様子が見られないどころか生活魔法すら使ったところを見たことがないことに理由を付けてその不安要素を排除しようと試みる。
「大丈夫だよ。実はさ、結構魔法の練習はしているんだよ。それに香りの素もたくさんあるからアリスはもちろん、彼女を励ますために頑張ったフィルにも楽しんでもらいたいんだ。」
フィルネールは自身の耳に口を近づけて囁く当夜にその耳を両手で隠して顔を赤らめて抗議の目を向ける。
「もう! そういうことを平気で言うのですからっ。いいでしょう。受けて立ちますよ。」
(まぁ、沈静効果もまだ残っていますから問題ないでしょう。問題なのはどうやってトーヤを媚薬なしにその気にさせるかですね。)
「よし。行くよ。少量でやってみるけどきつかったら言ってよ。」
「うん。」
「ええ。」
「こんな感じか?」
当夜は瓶から数滴手のひらに落とす。途端に甘い香りが当夜の鼻に届く。それと同時にフィルネールが起こした風と同じものが当夜の体を包み、部屋中にゼラニウムの香りを広げる。フィルネールが絶句する。当夜にかかる精霊の加護の実情を聞いているフィルネールからすればそれは違和感著しいものだった。なぜ、彼は詠唱も無しに魔法を行使しているのか。そこへ追い打ちをかけるように香水の成分が襲い掛かる。
「ト、トーヤ! 起句と結句はっ? こ、これ、はっ、」
「あ、あれ? フィル、大丈夫?」
体を自ら抱きしめるようにして床に膝をついたフィルネールの様相にさすがの当夜も不安を覚える。ふと、アリスネルの様子を確認するとひざを折り曲げて体を丸めて痙攣している。
「つぅううぅぅ~~~。」
(な、なんですか、これは! か、体が、あ、熱い!?)
沈静効果に完全に油断していたフィルネールは自身を襲う感覚がいったい何なのか理解できずに体の違和感に振り回されて他人どころでは無い。増して、鎮静剤を飲んでいないアリスネルに至っては思考回路がフリーズしてしまっている。
(ま、まずい! 換気、換気!)
「だ、大丈夫? 換気はこれで行き届いたはずだけど。」
当夜が部屋の空気を入れ替えるために突風とでも評するような強い風で緊急的に香水の成分を吹き飛ばす。
「んああ、ハァ、ハァ、んっ、」
(———体がまるで動かない? トーヤの息が、声が体に響く。これって、まさか媚薬? アリスは?
アリスもですか。やっぱり、媚薬効果ですね。それも沈静薬の効果を超えるほどの威力とはなんてものを。)
喘ぐように息を整えるフィルネールは徐々に冷静さを取り戻していく。
「これは横にして、回復体位にしないとまずいよな。医者、はどこにいるかわからないな。それより、レーテルにまずは聞いてみるか。」
(ひぁう! 触れられただけで体がピリピリする?)
思考はだいぶ落ち着きを取り戻してきたものの一度体に入り込んだ成分はそう簡単に抜けるものでは無い。敏感になった体が当夜に触れられただけその部位に過剰な電気信号を走らせる。それと同時に当夜の一挙手一投足から目を離すことができなくなっていることに気づく。問題の当夜が額と額を合わせての計熱を始めた時には意識を失いそうになってしまった。
「ん~、熱もあるのか? おっと、アリスも運んであげないと。」
(あ、ああ。トーヤの手が気持ちいい。このままずっと抱っこされていたい。
って、もう終わりなの。ま、待ってよ。まだ全然足りないよぉ。)
アリスネルもまた、当夜に触れられたところに走る刺激がフィルネールと違い沈静効果の恩恵にあやかっていないゆえに直接的に快感に換算されていくためベットに寝かされる際には離れるのを拒むように当夜の腕に爪を立てて抗議する。それでも当夜はどうにか2人の異常を解決するために離れる。
「じゃあ、レーテルを呼ぶからもう少し待っていてね。」
(レーテルは、隣か。)
当夜はフィルネールの部屋を出ると隣の部屋で休んでいるレーテルの部屋の戸を叩く。
「夜分、申し訳ない。当夜だけど、レーテル、起きてる?」
「は、はい。トーヤさん? ど、どうしたのですか?」
中から出てきたレーテルは息を荒げ頬を赤く染めながら恥じらいの表情で出迎えた。
「え、えっと、実は、」
(息を切らしている? 何か運動でもしていたのかな。)
当夜が利き香の話や当夜の香水の話をするとレーテルは肩を震わせながら俯く。やがて、顔を上げるとそこには元からあった恥じらいに怒りを足した感情が浮かび、涙の抗議を浮かべていた。
「あ、貴方がただったのですか!? ほどほどにしてくださいよっ。」
レーテルは怒気の含まれた声で叱責すると扉を音を立てて閉める。
「あ、待って。フィルとアリスが調子悪そうなんだっ。」
当夜もここで引き下がるわけにもいかないと扉越しに意見を求める。
「それなら放置で大丈夫です。心配なら見守っていてあげてください。決して手を出してはいけませんよ! 絶対ですからね!」
やや落ち着きを取り戻したのかしばらくして帰ってきた返事には意趣返しの目論見が含まれているのだが当夜がそれに気づくことは無い。この後見事にレーテルの仕返しはことを成すことになる。
その夜、アリスネルとフィルネールは心配して見守る当夜を、恋する相手を前に無様を見せるわけにもいかずにただただ襲い来る本能的な衝動を抑え込むことに精神を使い果たすこととなる。翌朝、ようやく事態の発端となった当夜の香水成分が抜けた2人が目元にくまを浮かべて水浴びの合間に溜息を幾度もつく光景が広がっていた。




