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MEMORYS

微熱の溜め息

「う~、まだ下がらない~」

 体温計を見ると、37℃台。平熱が35℃台後半の私にとっては、かなりの高熱だ。

 本当は薬を飲んで学校に行こうと思っていたんだけど、母親に必死で抑えつけられてしまった。

 まあ流石にこんな熱で学校に行っても授業に集中出来ないだろうし、保健室に直行・強制帰宅なんてことに為りかねないだろうから、大人しく寝ていることにした。

「……あいつ、ちゃんと授業出てるかな?」

 あいつというのは、うちのクラスの問題児……というかサボり魔だ。べつにサボるくらい……学校には来ているし、成績だってそんなに悪いわけじゃないし、なんていうのは生徒側からの意見で、先生達にとっては大問題らしい。

 毎日どうやってあいつを授業に出席させるか、サボっているあいつを見つけ出すかに頭を悩ませているらしい。


 そこで白羽の矢が立ったのが、私、だ。

 理由は簡単。隣の席だから。

 そんな理由でこんな役を押し付けないで貰いたい。

まぁ確かに何故か私はあいつの居場所がすぐ解るし、あいつも素直に授業出てくれるけどさ。でも、それはそれだと思う。教師なら、そこは丸投げすべきじゃない。

 ……とは言っても、結局私はあいつを捜しに行っているんだけど。


 と、そんなことを考えている時、私のケータイが鳴った。この音は、メールだ。

「? 誰?」

 もしかしたら、クラスの友達が心配してメールでもくれたのかな? と思いながらディスプレイを見ると、知らないアドレス。件名は“何で今日休んでんだよ”

 それだけで誰からのメールか解った。

「誰にアドレス訊いたわけ?」

 あいつが私の友達にアドレスを訊いている様子を想像すると可笑しくなって、笑いながら身体を起こし内容を見る。




 FROM : escape from zero visibility@ezwave.ne.jp

 件名 : 何で今日休んでんだよ





 本文 : お前がいなきゃ、学校に行く意味ねーんだよ





「え?」

 笑いが引っ込むと同時に顔が一気に熱くなり、手を口元に当てる。

 体中が、熱い。




 ……起き上がったせいで、熱が上がったみたいだ。




 本当は、それがメールのせいだってことは解っている。けれど、そんな風に理由をつけないと治まりそうもない。

 頭から布団を被り、無理矢理寝る為に瞳を閉じる。





 明日、どんな顔して会えばいいんだろう?






このアドレスにメールしても、彼には届きません←当たり前です

そして彼は、彼女に見つけて欲しくてサボっています。

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