十月二十三日(水) -3-
「でも、同時に嫌われてるのも解ってる。風紀委員長は感情表現がストレートだからね」
「誤解もいいところだ。下らないお喋りをしてる暇があったら、さっさと済ませろ」
「はいはい、解ってるわよ。で、生徒会長様は?」
「いいよ、私は付き合うよ。こういう趣向は嫌いじゃないし」
嬉しそうに彩音が同意を表わす。
「じゃあ、最後は」
「またこの展開ですのね。よろしいですわ。時間の無駄にしか思えませんけど」
ブレザーを脱ぎながら純理が答えた。
数刻前と同じ展開に、心底うんざりした様子だ。
「リアル、全部火を点けたよ」
任務を終えて戻ったハチが、リアルにライターを返した。
「ありがと。じゃあ、机の前に移動して、アタシが奥で、隣が生徒会長様、で次が……」
リアルの指示に従って移動する。
一番奥のリアルから時計回りに、彩音、沙耶、純理、真樹と続き。
最後にハチとなった。
それぞれが蝋燭の前に立ったところで、リアルが蛍光灯の明かりを電球だけに変える。
薄暗い中に揺れる小さな炎が、否が応でも不穏な空気を醸し出す。
「じゃあ、始めるわよ。まあ、儀式はアタシがやるから、指示に従ってキャンドルの火を消してくれるわけでいいわ。要は送還の儀式をするってのが大切なんだから」
全員の同意を確認して、大きく息を吸った。
それから、ゆっくりと呪文を口にする。
「ぺてろ、あんでれ、やこぶ、よはね、ぴりぽ、ぱるとろまい、とます、またい、やこぶ、ただい、しもん、ゆだ」
良く通る声で詰まる事もなく三回。まるで何かを読み上げるようだった。
「これで呪文は終わり」
ふうっと前のキャンドルを吹き消した。
「後は蝋燭を順番に消してくんだけど、ちょっと待ってね」
次のキャンドルを消そうとしていた彩音が動きを止めた。
「折角準備したのに、あっと言う間に終わるとガッカリだと思ってさ。ちょっと余興を用意してあるの」
そう言うと、後ろに置かれている会議テーブルまで移動する。
「来訪者を呼び出す呪文。あれって一見意味のない音の羅列にしか見えないけど、ちゃんと意味があるのよ。知ってた?」
尋ねながら、机上に置かれていたダンボールを開ける。
「あれって十二使徒を逆に読んだものなの」
「沙耶、十二使徒って?」
「西洋の宗教ですね。救世主とされる者に従う十二人の弟子だと記憶しています」
「さすが副会長、博学ね。聖なる存在の名前を逆に読むことで、不吉な物として置き換えてるの」
「ただの名前だろう。そんな大袈裟な物でもあるまい」
「それは葵の考え方よ。西洋では聖なる存在を逆さに表わすのはとても忌み嫌われることなの。そういう意味では随分と凝ってるわね。悲しいかな誰も気付かなかったようだけど」
そう言いながら、リアルがダンボールから取り出したのは拳大の石だった。
「さて、準備はこれくらいでいいかな。生徒会長様、火を消してもらえる?」
「なんか凝った趣向で楽しみだね」
二つ目の火が消えた。
「さて、八人目の来訪者を探す前に、一つ解決しておかないといけない事件があったわよね」
「先週の八房さんの件、ですね」
思い至った沙耶が声を上げた。
「この中に犯人がいるの。ハチに怪我させた許せない奴が」
リアルがきっと睨みつける。
それを追って全員の視線がゆっくりと動いた。
「また、わたくしですか。皆さんはわたくしを、どうしても罪人にしたいらしいのですね」
臆する様子を微塵も見せず純理が応じる。
「素直に罪を認める気にはならないのね」
「身に覚えのないことを認めるわけにはいきません。わたくしが犯人だというなら、誰もが納得できる証拠を提示していただかないと」
「じゃあ、少し聞かせてもらえる? 先週火曜の夜、アンタは食堂でハチに声を掛けたのよね」




