十月二十二日(火) -17-
「でも、もし動機がないとしたら。米川純理の言う通り、事件を続けることに意味があるとしたら。そして、それを続けているのが本物の来訪者だとしたら」
「おいおい、お前までオカルトか」
「もう勘弁してください。わたくしは疲れました。早く自室で休ませて頂けません?」
「残念だがそうはいかん。お前はこの事件の容疑者だ。今晩は隣の会議室で過ごしてもらう。もちろん、風紀委員の見張りがつく」
「わたくしは無関係だと言っているでしょう!」
「米川純理、ちょっと聞きたいんだけど」
「なんですの! 何度も言いますがわたくしは、この事件とは無関係です!」
「それはどうでもいいの。『七人目の来訪者』のベースになった二十二年前の事件なんだけど、生徒達はどうして学校を去ったの?」
予想もしていなかった問いに、勢いを削がれつつも答える。
「明言はされてませんが、来訪者から逃げるために、というのが通説です」
「それっておかしいわよね。召喚は失敗したんでしょ? 失敗したはずなのに、何から逃げる必要があったの?」
「怪談話に整合性を求められても困りますけど」
「もし、召喚が成功していたとしたら?」
「その仮定の意味が解りかねますが」
「当時語られていたのは、『六人目の来訪者』。でも学校を去ったのは五人。何を指して六人目と数えたんだろう? なんで六人目の存在が言及されていないんだろう。そもそも六人目は実在してたのかな。もし、実在していないなら、六人目というのはどんな存在なんだろう」
疑問を重ねていくリアルに、他の面々が顔を見合わせる。
「詩方、少し休んだ方がいいんじゃないか。言ってることが妙だぞ」
「ね、みんなの時間をあと二時間ほど貰いたいんだけど」
唐突な発言に、全員が再び視線を交わした。
「ひょっとして、犯人が解ったのですか?」
尋ねる沙耶に、にぃっと犬歯を見せた。
誰もが次の一言を思い浮かべ、期待に満ちた顔に変わる。
しかし、リアルは意外にも首を振った。
「まだよ。まだ足りない。明確な証拠がないの。でも、二時間あれば、絶対に犯人を特定してみせるわ」
「解った。リアルちゃんがそこまで言うなら。みんなも協力してくれる?」
「会長がそう仰るなら、私に依存はありません」
「自分も会長の決定に従います」
沙耶と真樹が直ぐに同意を示す。
「反対しても無駄なんでしょうね。貴重な時間を浪費するのは勘弁して欲しいのですけれど」
しぶしぶながら、純理も了承した。
「ハチは?」
「えっと、うん。私はもちろん大丈夫だよ。リアルのアシスタントだもん」
頼りない胸を張って、そう答えた。
「ありがと、みんな。じゃあ、さっそく準備しなきゃね」
「準備って?」
首を捻る彩音に、リアルがそっと耳打ちする。
「え、それは構わないけど」
「助かるわ。で、お次は」
視線を真樹に向ける。
「アンタのバカ力が必要なの。協力してもらうわよ」
「気は進まないがな」
「みんなはここで待っててね。アタシが呼びに来るまで、部屋から出ちゃダメよ」
全員の同意を確認すると、真樹を連れて部屋を出る。
と、締めかかったドアから、顔だけを中に戻した。
「あ、ハチ。残ってる人間から目を離さないでね。怪しい動きをしたら声を上げるのよ」
リアルの指示に、ハチだけでなく、残った全員の顔が強張る。
それは残ったメンバーの中に犯人がいる事をほのめかしていたからだ。
「じゃあ、後はよろしく」
バタンとドアが閉まる。
最後のリアルの言葉で疑心暗鬼が生まれ、室内はどんよりとした空気になっていた。




