十月二十二日(火) -16-
「まあ、いいわ。仮に犯人の目的が、この伝承を最後まで進めることだとして。その先になにがあるというの? 来訪者とやらが現実に現れたとして、どうなるの?」
「来訪者が現れた時については言及されていません。ですが、それに類する話は世界中にあります。それらに共通する最後は破滅のみです。話によって大小の差はありますけれど」
「アカデミーの全てが、狂気と絶望の犠牲となる」
ぼそりと彩音が呟いた。
その一言が部屋の空気をどんよりと重くする。
来訪者。
現実には有り得ない存在が、厚みを増して乗しかかってくるようだ。
「怪談話は、もういいでしょう」
沙耶がくいっと眼鏡を上げて、動揺を心の隅に押し込んだ。
「我々がすべきことは、桝村先輩を襲った犯人を見つけることです」
「しかし、もう犯人はこいつしか……」
真樹が純理を一瞥する。
「待って。テープだけじゃ、決定的な証拠にはならないわ」
「どういう意味だ?」
「このテープが犯行に使われた物とは限らないからよ」
「それは、そうかもしれん。しかしだな」
「いい? 今回の犯人を特定する最大のポイントは、あの時間、あの場所に桝村美佳子が来ることを知っていた人物ってことなの」
「なんだそれは。当然の話だろう」
「そう、当然よね。でもそれが不思議なの」
「どこが不思議なんだ?」
「アタシが桝村美佳子を呼び出したのは、深夜零時だったからよ」
「ちょっと待ってください。もし、そうだとするなら」
「そうよ、副会長。犯人が時間を変更したの。つまり、来訪者と実行犯の連絡手段を知っていたことになる。更に、アタシ達が呼び出した時間まで知っていた。しかも風紀委員の目につかない時間帯に変更したということは、風紀委員の見回りスケジュールを把握していた可能性も高いわね」
リアルの説明に、誰もが絶句するばかりだ。
「どちらにせよ。この件については本土へ捜査を依頼した方が良さそうですね。私達がどうこうできる範疇を超えています」
沙耶の提案に彩音が頷く。
「ただのイタズラで済むレベルじゃないしね。じゃあ、今日は遅いし、一旦解散しよっか」
既に日付が変わろうとしていた。
明日の授業を考慮すると妥当な判断だと言える。
「現場保存については、風紀委員に任せて下さい」
「鷹壱先輩、悪いけどお願いします」
「あの、神有祭はどうなるんですか?」
ハチがおずおずと尋ねる。
「中止せざるを得ないわね。ここに来ての中止は痛いけど、なんとかなるでしょ。ね、沙耶」
「なんとかなるではなく、なんとかするが正確な表現ですね」
「はいはい。なんとかします」
「もちろん、私も全力で補佐します。この難局を見事乗り切りましょう」
彩音と沙耶のやり取りに、純理が皮肉な笑みを浮かべた。
が、口にするようなヘマはしない。
「じゃあ、今日はこの辺りでお開きに」
「ちょっと待って」
リアルだった。
「やっぱり動機なの。動機がないから割り切れないのよ」
半ば独り言に近い呟きを続ける。




