十月二十二日(火) -11-
「そんな!」
リアルが思わず絶句する。
「保健室に運ばれましたが、意識はまだ戻っていません。かなりの出血で、辺りは血で……」
「副会長、被害者が誰か解る?」
「はい。第四新聞部部長、桝村美佳子さんです」
「とりあえず生徒会長様」
衝撃から一足先に立ち直ったリアルが声を掛ける。
「ここで喋ってても、始まらないわ」
「そ、そうだね。現場に行ってみないと。沙耶も一緒に来て」
「はい、リアルさんもお願いします」
「解ってるわ」
慌ただしく部屋を出る二人にリアルも続く。
そこで時間を確認。
「このタイミングで仕掛けてくるなんて。なかなか楽しませてくれるじゃないの」
時計の針は、二十三時十分を指していた。
※ ※ ※
「リアル、どうしたの!」
会長室から飛び出してきた三人に、ハチが目を丸くする。
「ハチ、北校舎に向うわよ!」
「え、ちょっと待ってよ」
四人で階段を駆け下り、北校舎に向う。
到着した時には既に風紀委員達が、立入禁止のロープを張っていた。
しかし、夜も更けたこの時間、野次馬達はいない。
「お待ちしていました、会長。こちらです」
真樹が出迎えてくれた。
流石の彼女にも当惑と動揺が見て取れる。
「被害者は桝村美佳子、第四新聞部の部長です。彼女は校舎の裏側、通常は誰も近づかない場所で倒れていました」
案内しながら、状況を説明する。
「桝村が倒れていたのはここです。右の手首が深く切られており、粘着テープで目隠しがされていました」
地面のあちこちに赤い斑点が飛び散っており、真樹が指し示した場所には赤黒い滲みが一際大きく描かれていた。
かなりの出血だったのが解る。
「桝村は保健室です。意識はありません。後頭部に強く殴られた跡がありました。犯人は背後から鈍器で殴りかかり、気絶させてから、粘着テープで目隠し。手首を刃物で切りつけたと考えられます」
「なかなか冷酷な犯行ね」
地面にできた血痕を見つめながら、リアルが感想を口にする。
「で、桝村先輩の容態は? その、危ない状態なの?」
青ざめた顔で尋ねる彩音に、真樹が小さく首を振った。
「いえ、命に別状はないらしいです。意識がないのも出血によるものではなく、後頭部への打撃が原因だということです。保険医の安堂は、本土への移送は必要ないと判断しました。ただ念のため、精密検査は行うとのことです」
その返答に、彩音と沙耶が少し安堵の色を見せた。
「風紀委員長、発見時の状況を細かく聞きたいんだけど」
リアルが顔を上げた。
「第一発見者は、副会長だ。発見後、近くの風紀委員を呼び、会長室に向われた」
「時間は何時頃だったか解る?」
「二十三時くらいだな」
「二十二時五十五分前後、と記憶しています」
真樹の報告を、沙耶が補足する。
「よく近くに風紀委員がいたわね」
「少し前にすれ違ったのです。見回り中だったと思いますが、幸運でした」
「でも、どうしてこんな時間に桝村先輩が。それもこんな場所に?」
釈然としない彩音に、真樹が「実は会長……」と切り出す。
「ここで、その、もう少し後の時間に、なんというか」
「実は零時にね。来訪者事件の犯人を、ここに誘い出す手筈になってたの」
上手く説明できない真樹を、リアルが引き継いだ。
それを聞いた沙耶の目が厳しくなる。
「そんな連絡は受けていません。どういうことです?」
「だから、来訪者事件の犯人を誘い出して、取り押さえるつもりだったんだってば」
「どうして事前に連絡を下さらなかったのです! そんな重要なことを無断で進めるなんて」




