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十月二十二日(火) -7-

「漫画制作部の米川純理と、第四新聞部の桝村美佳子よ」

「そりゃ、無理があるね。あの人形はかなりの重さだったんだよ。鷹壱先輩みたいな力持ちでもない限り、他の生徒に見つからない短時間で屋上に運んで、柵の外に放り出すなんて不可能だよ」

「米川純理は初等部の頃、空手をやってたのよ」

「でも、今はやってないでしょ。体力って直ぐに落ちちゃうんだよ」

「そう言われると、あの重い人形を屋上まで運ぶのは、か弱い女の子では無理があるかも」

 

 そう言って首を捻るリアルを見て、彩音の口元が緩んだ。が。

 

「仕方ないわね、運ぶのは諦めて、事前に置いておくことにするわ。偶然にも資材置き場があるし。箱とか袋に入れておけば、短期間なら誰にも気に留められないわよね」

 

 彩音の表情が僅かに強張った。

 

「他の荷物と一緒に運ばせれば、苦労することもないしね」

「じゃあ、運ぶのは問題ないとして、どうやって柵の外に出したのかな。そんな簡単にはできないと思うんだけど」

「簡単に出来るわよ。台車を二台使えばね。まず両方に荷物を積んでおくの。できれば箱がいいわ。どこかの部が余剰に買い込んだ紙材でもあれば調度いいわね」

 

 両手で拳を作って、それを台車に見立てて説明を始める。

 

「一台は底にワイヤーを括りつけて、人形と結ぶ。それを屋上の中央くらい置くの。これが錘ね。で、もう一台。こっちは荷物の上に人形を乗せ、柵の側に寄せるの」

 

 右の拳を、横に移動させる。

 

「柵の高さは一メートルくらいだから、それ以上の高さに人形を積んでおけば、非力な二人でも柵の外に出せる。これを証明するのは簡単よ。屋上にある台車の底を調べれば……」

「ワイヤーで傷がついてるわ。凄いわね。いつ思いついたの?」

「西校舎の屋上に出て時にね。台車が三台もあったでしょ。荷物の整理に台車は必要だけど、三台ってのは多過ぎる。それとワイヤー。使った道具が解れば、手段は簡単に導き出せるのよ」

「でも、何も言わなかったよね? 黙ってたよね?」

「誰も聞かなかっただけよ」

「うわ、性格悪いなぁ」

「それは褒め言葉として受け取っていいのかな?」

「ご自由に。でも、そのトリックを解いただけじゃ、私が犯人だって証明にならないわよね」

「もちろん、本題はこっからよ」

 

 リアルがポケットから紙を出した。

 

 不快感を誘うどす黒い紙に、気持ち悪いほど鮮明な赤い文字が並んでいる。

 

「来訪者から最初に届いたお手紙よ。副会長から預かってたの」

「ははん、さては持ってるのが怖くなったんだな。沙耶ってさ、実はすっごく怖がりなの。肝試しで泣いたこともあるんだよ」

「あら、意外ね。霊なんて非現実的な妄想の産物です、下らない。とか言いそうなのに」

 

 声色を変えて、眼鏡を上げる仕草で口調を真似てみるが、「あんまり似てないね」と評価は芳しくなかった。

 

「で、その手紙がどうしたの?」

「この内容を見る限り、生徒会長宛の脅迫めいた物に思える。でも、そうじゃないの」

「どういう意味?」

「だってこれは、副会長に宛てた手紙なんだからさ」

 

 彩音が小さく息を飲む。明らかに動揺のサインだった。

 

「最初の事件、来訪者はレコーダーを使って、センセーショナルに始まりを宣言した。これは秀逸な方法よ。最初に大きなインパクトを与えておけばいい。アカデミーのような閉鎖社会なら、尾ひれが付いてあっと言う間に拡散する。あれ、おかしいわね」

 

 リアルがわざとらしく首を捻る。

 

「このやり方、どこかで見た記憶があるわね。確か春頃に……」

「白々しいなぁ。私の選挙戦略と一緒って言いたいんでしょ。髪を染めて、日に焼けた活動的なキャラクターで登場。改革を声高に叫んで注目を集める。後は話題性を保っていくだけでいいの」

「そうすれば新しい物を好む生徒達の支持が集まって」

「ご覧の通り、改革的な生徒会長の誕生ってわけ」

 

 

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