十月二十二日(火) -6-
「遅くに時間を割かせて悪いわね。生徒会長様」
「あはは、会長様は止めてってば。時間は気にしないでいいよ。今週末は神有祭だからね。あれこれしないといけないことがあってさ。毎晩、日付が変わるくらいまで残ってるんだ」
「そう言ってくれると助かるわ。ところで、副会長の姿が見えないみたいだけど?」
部屋をぐるりと見回し、いつも一緒にいるはずのクールビューティを探す。
「少し用事があるらしくてね。問題ないんでしょ?」
「まあね、会長様に報告できれば、それでいいんだし」
「リアルちゃんこそ、ハチちゃんは?」
「外で待っててもらってるの。聞かれたくない話もあるしね」
「じゃあ、本題に入ろっか。事件の真相についてよね」
「その前に一ついい?」
焦らすように、リアルが流れを変えた。
「これは好奇心で聞くんだけど。来年の会長選挙には、もちろん立候補するのよね?」
「その質問をする時点で、リアルちゃんは答えが予測できてるわけよね?」
「質問を質問で返すなんてルール違反よ」
「既存のルールに縛られるなってのが、現生徒会のモットーなんだ」
「なかなか面白いこと言うわね。悪くないわ」
「いやいや、ここは突っ込んで欲しいとこなんだけどさ」
のらりくらりとしたやり取りに、緩い笑いが起こる。
「さて、余談はこれくらいにして」
リアルがやんわりと本題に戻す。
「今日の話はこの下らない事件を企てた人間。一連の事件のバカバカしさに敬意を払って、来訪者と呼ばせてもらうけど、その来訪者についてよ」
「いよいよだね。私も楽しみにしてたんだ。第六寮の少女には、真実を見抜くその瞳には、何が見えたのかって」
「あはは。会長様に持ち上げられると照れちゃうじゃない。実のところ、期待に応えられるような話じゃないのよね。まあ、焦らしてもしょうがないから言わせてもらうけど」
すうっとリアルの顔から笑みが消えた。
瞳に鋭さが宿る。獲物を狙う猛獣の目だ。
「この一連の事件を企てた七人目の来訪者、それは……」
リアルがほっそりとした指を彩音の眼前に突きつけた。
その動きに彩音からも笑みが消える。
「それは藪坂彩音。アンタよ」
※ ※ ※
しばしの間があった。
永遠とも思える沈黙が、ゆったりと流れる。
やがて漂う緊張感に耐え切れなくなったのか、彩音が大きく息を吐いた。
「はい、そうですって訳にはいかないのよね。ちゃんと納得できる説明してもらえる?」
「もちろん、その為に来たんだから」
「まず、先々週の水曜。最初の人形落下事件が起こった時、私はここで執務に勤しんでいたわ。副会長の沙耶が証人よ。つまりアリバイがあるわけよね」
「確かに、アンタはここにいた。副会長が嘘をついて、アンタを庇う可能性もないわけじゃないけど、他にも証人がいるしね」
「そっか。事件を知らせに来てくれた子がいたもんね」
思い至った彩音が付け足す。
「だから、アンタが人形を落とすことはできない」
「あらら。いきなり行き詰っちゃったじゃん」
「単独犯ならね。でも複数犯なら可能よ」
「なるほど」
「この事件は複数犯による事件なの。プランを考えて指示を出す主犯格と、それに従い行動する実行犯二人。計三名のね」
「それならアリバイは意味を持たないね」
「会長様は聡明ね。説明が省けて助かるわ。風紀委員長みたいだと、一から十まで話さないといけないのよ。それはそれで骨が折れるんだから」
大袈裟に肩を竦める。
「あの日、実行犯の二人は与えられた指示に従って、西校舎の屋上に行き人形を落とした」
「ちょっと待って。実行犯って誰か見当がついてるの?」




