十月二十一日(月) -11-
「一つは、ハチの言う愉快犯説。でも、今日の手紙でそれが消えた。来訪者は神有祭をキーワードにあげてきた。つまり、この日をターゲットにしてきたのが解る。『七人目の来訪者』では、最初の事件が起きるのは水曜日、次が金曜日。それ以降は曜日の指定はない。それでも水曜と金曜に拘ってきた」
「つまり、最後の事件、六人目の事件が神有祭の初日にくるようにしたってこと?」
「そうよ。水金と定期的に事件が起こることで、神有祭の初日に何かが起こるという雰囲気を作ろうとしたんじゃないかな。ところが、実行犯が暴走して、他の日に別の事件を起してしまった。だから最後の手紙で神有祭を強調しなければならなかったの」
「愉快犯がそこまで日付に拘るのは不自然だよね」
「で、可能性が消えたわけ。残り二つが神有祭をメインに置いた場合の仮説になるんだけど」
指を一本減らした。
「一つが神有祭を中止させようとしている。大袈裟に言えば一種のテロ的犯行ね。現生徒会の公約はアカデミー財政の建て直し、その必須となっているのが神有祭の成功だからね」
「もし、神有祭が中止になったら、財政が破綻して……」
「生徒会役員は本土強制送還ってシナリオね。これはなかなか悪意を感じるわね」
「許せないよ! そんなの絶対に!」
「こらこら、熱くなんないの。これも有り得ないんだから」
「ほえ? なんで?」
「会長様は、この事件に重きを置いてないからよ。ただの悪戯だから無視するってスタンスで一貫してるでしょ。だから犯人としては、犯行をエスカレートさせるか、脅迫を強めるかしないとダメじゃない?」
「そうだよね。同じレベルの事件を繰り返しても、神有祭が中止になんてならないよね」
「最後の手紙を見る限り、結局は今までの延長だしね。ということで、この線も消えたわけ。となると、残った可能性は一つ」
指を折った。
残ったのは、とうとう一本。
ごくりとハチの喉が鳴った。
最後に残った一つが、リアルの辿り着いた真実に違いないのだ。
「この一連の事件は、狂言だったのよ」
リアルの発した言葉の衝撃に、ハチは二の句が告げなかった。
しばらくの間をおいて、
「そんなの有り得ないよ。大体、なんのための狂言なの?」
そう返すのが精一杯だった。
「今回の来訪者事件は、本土でも噂になってるみたいなのよね。マスコミにも取り上げられているようだし」
アカデミーは未来のエリートを育てる特殊な施設。
一種の閉鎖空間であり、その内側について言及される機会は少ない。
そんな中、この手のゴシップが流れれば、多くの人間が好奇心を刺激されるであろう事は容易に予想が付く。
「この五つ目の手紙が見つかったりすれば、噂が噂を呼んで凄まじい騒ぎになるのが目に浮かぶわ。そうなると、神有祭には変な期待を持ったバカ共が大挙して押しかけてくるってわけ」
「つまり、神有祭の来客数を増やすためだって言うの?」
「そう。だから、六つ目の事件は起こらない。期待させるだけ期待させて終わり」
「そんなの無理があるよ。だって……」
「そうやって、人を集めても結果的にがっかりさせるだけだもんね。反動で来年以降の来客は、大幅に減っちゃう」
「うん。だから……」
「でも、それこそが来訪者の目的だとしたらどうする?」
「それってどういう意味?」
「さあてね。どういう意味なんだろ」
リアルが性悪な笑みを見せた。
これ以上、話す気はないのが解る。
「ここまできて、それは酷いよ。意地悪だよ」
「少しくらいは自分で考えないと楽しくないでしょ」
「楽しくなくてもいいから教えてよ」
「ダメ」
ハチがすがりつくように頼んでみるが、取り付く島もない。
「ほら、箱を戻して、手紙を入れておくわよ」
「そんなあ。酷いよ。あんまりだよ」
「ほら、さっさとする。時間がもったいないでしょ」
しぶしぶながらも逆さまにしていた箱を戻すと、リアルが自作の手紙に封をして口に入れる。
「さって、明日が勝負ね。遅くなるから、今晩はゆっくり寝ておくのよ」
「リアル、教えてよ。お願いだから。気になって眠れなくなるから」
「しょうがなわね。じゃあ少しだけ教えてあげるわ」
「え、ホント?」
「アタシの血液型はB型で、好きな食べ物はハンバーグ」
「そんなの聞いてないよ!」
目一杯頬を膨らませてハチが怒鳴った。




