十月二十一日(月) -10-
「生徒会の倉庫、かな」
「おそらくね。それについては、後で確認すれば問題ないとして。実はこんなのを準備しておいたのよ」
リアルが封筒を取り出した。
シンプルなデザインのそれは、目安箱に入っていた物と同じだ。
「そ、それって」
「先週、アスリートさんに封筒を見せてもらったからね。事前に準備しておいたの」
まだ封がされていない封筒から、白いシンプルな便箋を出してハチに手渡す。
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火曜の深夜零時。
この手紙を持って北校舎裏に来い。
七人目より
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ハチが衝撃で凍りついた。
「これって、ひょっとして」
「そう。これを読んだ実行犯がバカ面提げて来た所を捕まえるの。隠匿性の強い連絡手段は、逆手に取られたら終わりよ」
「でも、罠って見抜かれる可能性もあるんじゃ」
「米川純理なら気付く可能性があるわね」
「じゃあ」
「だから、彼女じゃなくて、桝村美佳子を狙わせてもらうの。今晩から米川純理の監視を増やすように、風紀委員長に頼んであるのよね。つまり動けるのは、桝村美佳子だけ」
「凄い! 凄いよ!」
「ま、こんな手が使えるのは、最後の時だけなのよね。最後なら今までと指示の内容が違っても、あまり不自然に思われないから」
「え、おかしいよ。だって、これは五つ目の人形だよ。六人目が最後になるんじゃないの? あ、でも、さっき言ってたよね。六つ目の事件は起こらないって。それが来訪者の狙いだって。あれってどういう意味なの?」
「ハチ、犯人特定に必要な三つの要素はなに?」
疑問符を目一杯浮かべるハチに、逆にリアルが質問を向けた。
「動機と手段と物証だって教えてくれたよね」
「じゃあ、今回の事件の手段は?」
「来訪者はこのポストを使って、実行犯に指示を出していた」
「うん。実行犯側が定期的に、おそらく月曜と水曜の深夜にポストを確認してたんだじゃないかな。それに対する物証は、来訪者からの手紙になるんだけど、いつまでも持っているはずがないわよね」
「だから、偽の手紙で呼び出して証明するんだね」
「そういうこと」
「でも、来訪者はどうやって見つけるの?」
「その点については心配ないわ。目星はついてる。それに物証も手に入った。で、最後は動機になるんだけど」
「なんの為に、こんな悪戯をしたかってことだよね」
「実行犯については、シンプルで解りやすい。なんだと思う?」
「あれかな、第四新聞部の経営状況」
ハチの言葉に、リアルが頷く。
「第四新聞部の経営状況は、限界に近かった。しかも、改善の兆しもなく、近いうちの破綻は間違いなかったわ。それに目を付けた来訪者は、取引を持ちかけたの。あの新聞部、インチキ心霊写真や偽物UFOを記事にするくらいだからね。迷いはあったかもだけど、乗ったんじゃないかな」
「桝村先輩はそうだとして、米川先輩は?」
「桝村美佳子が協力を頼んだか、米川純理の方からアプローチしたか解らないけど。頼りない友人の為に一肌脱いだってとこよね」
「いくら友達でも、そこまでするかな?」
「新聞部の保管庫での件を考えてごらん。あの利己的な米川純理が桝村美佳子の為に、あれほどのリスクを負ったのよ。それに新聞部の記事だって……。まあいいや、細かいことは、実行犯を捕まえてから、当人達に聞けばいいんだし。で、問題は主犯、来訪者の動機なんだけど」
「そこが解らないよね。ひょっとして愉快犯かな」
「その線が最後まで消えなかったのよね。アタシが可能性として考えたのは三つ」
ほっそりとした指を三本立てた。




