十月二十一日(月) -9-
「練り消しに差し棒、ペンライト、それにオペラグラスとルーペ」
リアルがポケットから出したのは、どれもコンパクトに持ち運べるタイプの物だった。
「すごい。本格的だ。ね、他には他には?」
「こんだけよ」
「だって、五つしかないよ。七つ道具なのに。残りの二つは?」
「あとは鋭い洞察力。それと、そうね。最後はアシスタントかな」
「えへへ、そう言ってくれるとなんか嬉しいな」
「まだまだ頼りなくて、ペンライトほどは役に立たないけど」
「うぅ、確かにそうかもだけど、でも酷過ぎるよ」
「褒めてあげてるのに」
「全然褒めてないよ!」
定番の遣り取りに、ハチがぷうっと頬を膨らます。
「冗談はこれくらいにしておいて。来訪者様からのお手紙を拝見しよっか」
微塵の迷いもなく封筒の口を破った。
中は鍵が一本と便箋が二枚。鍵は教室の施錠に使われるスタンダードな物だった。
便箋の方は、スタンダードな白と、不快感を催す濁った黒が各一枚ずつ。
「ハチ、イチゴショートのイチゴは先に食べるタイプ? 後に食べるタイプ?」
「え? どっちかって言うと先かな」
「アタシは、後に食べる。楽しみは取っておくタイプなの」
そう言うと、黒の便箋を手に取る。
「というわけで、くだらない方からね。どれどれっと」
がさがさと広げ、ハチにも聞こえるように内容を音読した。
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親愛なるアカデミーの皆様へ
五人目の愚者がその屍を晒した。
いよいよ次で最後だ。六人目の愚者、その屍が最後の鍵になる。
二日後、古の神の来訪を祭るという神有祭。
その日、私は永遠の闇から解き放たれる。
神の来訪を待つ諸君らの前に現れるのは、この七人目だ。
今から楽しみだ。私のもたらす狂気と絶望を、諸君らが恐怖と共に迎えるのが。
七人目より
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「リアル、やっぱり神有祭の日に、なにか起こるんだよ。どうしよう。大変だよ」
「ちょっと落ち着きなさいって」
「どうして、そんなに冷静でいられるの? やってくるんだよ、来訪者が」
「んなもん来るわけないでしょ。だって、六つ目の事件は起こらないんだから」
「どうして? どうして、そう言い切れるの?」
「簡単よ。六つ目の事件を、もっとストレートに言えば来訪者の出現を期待させるのが、この安っぽい騒ぎの目的だからよ」
リアルの指摘は、ハチの想像を遥かに超えた物だった。
「この手紙を見るまでは、推測の域を出なかったんだけど。これで確証を持てた。来訪者とやらの狙いがね」
「来訪者の狙いが解ったの!」
「まあね。でもその前に、もう一通の手紙を見てみよっか」
興奮するハチをじらすように、残っていた白い便箋を手に取った。
「こっちは無愛想に用件だけね。読むわよ」
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五番の箱に入った人形を置け。
箱の中にあるカミソリを左手に、血糊を全身にかけること。
また同封の手紙を胸ポケットに入れておくこと。
時間は水曜の明け方。場所は第四寮の裏。
七人目より
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「思ったとおり、水曜の朝に人形が見つかる手筈ね。寮の裏ってのが不自然だけど、これは仕方ないってとこね。で、これが人形を置いてある場所の鍵なわけだ」
封筒に入っていた鍵を見つめる。
「どこの鍵なんだろ」
「荷物が置いてあっても目立たない場所で、生徒が入っても怪しまれない場所。更に教師が滅多に入らない場所。となると、おおよその見当が付くわね」




