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十月二十一日(月) -6-

「ギリギリだと思ったんだけど、待たせちゃったかな」

「あの、こんにちは」

 

 右手を軽く上げフランクに挨拶するリアルと、律儀にぺこりと頭を下げるハチ。

 

「いえ、時間はぴったりです。私が五分前行動を基本としているだけですから」

 

 近づいて来る二人に、軽く会釈した。

 

「手間掛けさせたわね」

「いえ、お気遣いなく。これが頼まれていた配置図になります」

「助かるわ。ありがと」

 

 クリアファイルに入った数枚の紙をリアルが受け取る。

 

「リアル、配置図ってなんの?」

「後で説明してあげるから、ちょっと待ってて」

 

 好奇心に後押しされるハチに一言残して、沙耶に視線を戻した。

 

「副会長、念の為に聞かせてもらうけど、この件については……」

「はい。他言無用ということでしたので、誰にも口外していません」

「会長様にも?」

 

 リアルの問いに、沙耶が頷く。

 やや後ろ暗い物があるのか、浮かない表情になる。

 

「腑に落ちない点もあると思うけど、協力して欲しいの」

「解っています。この事件を解決する為であれば、どんな協力も惜しみません。惜しみませんが、しかし」

 

 言葉を切り、やや俯いて思考を巡らせる。

 

「一つだけ、よろしいですか?」

 

 顔を上げた時には、既に迷いは消えていた。

 

「アタシが答えられることならね」

「この一連の事件について、彩音の、いえ、会長の関与を疑っておられるのですか?」

 

 メタルフレームの眼鏡がきらりと光を反射、レンズの奥の瞳が鋭さを増した。

 

「もちろん、疑ってるわよ」

 

 沙耶の射抜くような視線に臆する事無く、リアルはきっぱりと言い切った。

 

「副会長、アンタもよ。それに風紀委員長も。それだけじゃないわ。この事件は、生徒会に属する人間でないと出来ない点が多い。だから、生徒会の人間は全員疑うべきだと思ってる」

 

 リアルの言葉に沙耶だけでなく、ハチすらも息を飲んだ。

 重い空気が漂い始める。

 

「失礼しました」

 

 沈黙を破ったのは沙耶だった。

 

「私の力は、リアルさんに遠く及びません。私ができるのは、生徒会副会長としてバックアップすることだけです」

「損な性格ね。もう少し感情的に振舞っても罰は当たらないんじゃない?」

「性分ですから」

 

 力ない笑みを浮かべる。

 

「でも、安心して。アタシは犯人を吊るし上げて楽しみたいわけじゃないの。依頼主である生徒会に真相を報告するだけ。その上でどうするかまでは興味ないから」

「解りました。その点については留意させていただきます。では、私は生徒会の職務がありますので失礼します」

 

 軽く頭を下げると、踵を返した。

 そのまま校舎の中に消えていく。

 

「あの子も辛いわね」

「それってどういう意味?」

「人には色々事情があるってことよ。さ、アタシ達はアタシ達のすべきことをするわよ」

 

 不安気に尋ねるハチに、リアルが殊更明るく答えた。

 

「さて、副会長に用意してもらったこれ、見たことある?」

 

 先程、受け取ったクリアファイルをハチに渡す。

 

 取り出して見ると、アカデミーの見取り図だった。

 あちこちに丸印が記されている。各階におおよそ二つずつ、校舎の外や裏側にも書かれていた。

 

「目安箱の配置図だね。これを見ながら、昼休みに回収してるんだよ。生徒会のメンバーが交代で」

「校舎裏とか目に付き難い場所にも置かれてるのね」

「うん。生徒会への批判とかもあるし、生徒間のトラブル解決のお願いとかもあるから。人目を避けて利用したい人もいるんだよ」

「なるほど。で、これは土日にアタシが調べた分、つまり実際に目安箱が置かれている場所になるんだけど」

 

 懐から紙を取り出して、ハチに見せた。

 同じくアカデミーの見取り図に印がされている。

 

 二つの図をそれぞれの手に持って見比べる。

 


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