表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/114

十月二十一日(月) -4-

「そうね。全部で七つ。アカデミーの七不思議は、その伝承に数字を持つのが特徴ね。ところで、この中で一番新しいのはどれだか解る?」

「え? そんなの解らないよ」

「『第六寮の幽霊』なのよ。この噂が生まれたのが寮の改装がされた二十年前。その前は、『六人目の来訪者』と『揃わない七不思議』だったのよ」

「来訪者が六つ目だったの?」

「七不思議なんて噂は時代と共に移り変わっていく。これはさっき米川純理も言ってた通り。本来は『第六寮の幽霊』が生まれたせいで、消えた話だったの。そうよね?」

 

 小さく肩を竦める純理に、リアルは話を続ける。

 

「『揃わない七不思議』。アカデミーの七不思議は六つしかない。これが最後の七不思議になるんだけど。これじゃあ、インパクトに欠けるわよね」

「だから、七つ目の話を付け加えた。本当にそうなんですか、米川先輩」

「ふふ」

 

 小さく含み笑いをこぼすと、ぱちぱちと手を叩いた。

 

「見事な推理です。感嘆しました。真実を見通す瞳というのは、冗談ではないみたいですね」

「あら、アンタにそう言ってもらえると嬉しいわね」

「では、わたくしから質問させていただいてよろしいですか?」

「いいわよ」

「わたしくしが七不思議を一つ付け加えた。それが今回の事件にどんな関係があるのでしょう。わたくしが来訪者のフリをして、下らない悪戯を繰り返して喜んでいるとでも?」

「まさか。アンタはただの協力者。指示を受けて動く実行犯に過ぎない、ね」

「どんな確証があって仰っているか解りかねますが、言い掛かりにしか聞こえませんね」

「改めてお願いするわ。来訪者からの手紙を見せてくれない?」

「これは困りました。持ってない物をどうやってお見せすればいいのでしょう」

 

 リアルと純理がしばし無言で見つめ合う。

 

 漂う緊張感に圧倒され、ハチがごくりと喉を鳴らした。

 

「まあ、いいわ。ところで、先週の火曜日、アンタはハチと食堂で話をしたわね」

「ええ、少しですけれど」

「ハチと別れてから、どこで何をしていたか。教えてくれる?」

「寮に戻って漫画を描いていました。神有祭に向けての新作です。それが何か?」

「ううん。ちょっと事件があったもんでね」

「つまりわたくしを疑っていると?」

「さあてね。ところでさ、ずっと気になってたんだけど」

 

 純理の胸元を指差した。

 

「それなに?」

「あ、これですか」

 

 シャツについていた小さな灰色の紙片を指でつまむ。

 

 紙ではなく薄いフィルムだった。

 小さな点が細かく並んでいる。

 

「これは、スクリーントーンという物です。漫画原稿に貼り付けることで、色や模様を表現できるのですよ。こんな風に」

 

 机に置かれていた原稿用紙を手に取って二人に見せる。

 

「漫画の模様って、こうやって出来てるんだね」

「ふうん、これは知らなかったわ」

「まあ、普通の方には珍しい物ですよね」

「それをシャツに付けていたのは、なにかのおまじないなの?」

 

 リアルの質問に、純理が苦笑する。

 

「いえいえ、トーンはナイフで切って使うのですが、こういう破片があちこちに付いてしまうのです。裏面に接着剤がついているので」

「もうちょっと見せてもらっていい? 触らせてもらっていい?」

「もちろん、構いませんよ」

 

 好奇心に瞳を輝かせるリアルとハチの手にそれぞれ、シャツから取った破片を置いてやる。

 

「すごく薄いね。ホントだ。裏にノリが付いてるよ」

「これは、使えるわね」

「使えるとは?」

「あ、ううん。なんでもないの。こっちの話。気にしないで」

 

 慌てて両手を振って話題を散らす。

 

「さ、ハチ、そろそろ帰ろっか。いつまでも邪魔してちゃ悪いし」

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ