十月十八日(金) -5-
「リアルはリアルだよ。ちょっと意地悪で、ちょっと口が悪くて、ちょっと捻くれてる、でも大切な友達。それで十分だよね」
そう告げると、えへへと笑う。
「実に低レベルでアンタらしいコメントね。でも、アタシにとっては一番嬉しい答えかな」
素直に笑みを返すと、腰を上げた。
「じゃあ、ちょっと早いけど、そろそろ行こっか」
「あ、もうそんな時間だね」
時計は八時過ぎ。
アカデミーのカリキュラムでは、八時四十分に朝礼が始まる。
「あ、風紀委員長からボタン受け取った?」
「うん。もう付けてあるよ。あ、リアルが借りた本を預かってるから、放課後に取りにきてね」
「すっかり忘れてた。迷惑掛けたわね」
「迷惑だなんて大袈裟だよ」
「ところでさ、ハチは米川純理の描いた漫画を読んだことある?」
「うん。持ってるよ。私、大ファンなんだ。読んでみる?」
「そうね。ちょっと見せてもらおうかな」
他愛のない話をしながら、鞄を持ち外に向う。
ドアを開けると真樹が立っていた。
ノックをしようとしていたのだろう。握った右手が胸の位置にあった。
「鷹壱先輩?」
「どうしたの? なにかあった?」
「四体目の人形が見つかった」
「そっか、今日は金曜日だもんね」
リアルが僅かに目を細めた。一方のハチは、ただ絶句するだけ。
「四体目ということは、焼身自殺の人形ね?」
「ああ、そうだ。ガーデンスペースで見つかった。発見者は、三年の三杉翔華、陸上部の生徒だ」
「百メートル十一秒台の記録を持つ期待のアスリートさんね」
「そうだ。その彼女が今朝のランニング中に発見したのだ」
「ふうん。随分と面白い話ね。どう思う、ハチ」
後ろのハチを振り返り、にぃっと笑みを見せる。
そのどことなく性悪な表情は。
「やっぱり小悪魔だと思う」
「ん、なにそれ?」
「あ、ううん。こっちの話」
※ ※ ※
ガーデンスペースは寮、この場合は第一から第五寮を指す、から西に少し歩いた場所にある。
半径五十メートルの円形になっており、二メートル弱幅の道が縦横斜めと、同心円状に走っている。
季節毎に趣を変えるここは、アカデミーで最も愛すべき憩い空間の一つ。
柔らかな朝日の下、秋の花が控え目な彩りを見せていた。
ちなみにガーデンスペースの管理は生徒会環境委員が行っている。
植物の手入れは重労働だが、それでも志望者の多い人気ある部署だ。
リアルとハチが真樹に案内されたのはガーデンスペースの裏。
肥料や道具等をしまっておく物置の前だった。
「表側からは全然見えない位置なのね」
「物置だからね。表にあるのはおかしいよ。あれ? じゃあ……」
「あれだ」
真樹の声がハチの思考を遮った。
「これは凄い状態ね」
リアルの感想通り、大の字に転がる人形はあちこちが焦げていた。
短い手足に分厚い胴体。頭髪もなく、丸い頭部をむき出しにしている。
その出来具合は美術資料室で見つかったニ体目や、駐車場で見つかった三体目より悪い。
燃え残った制服がなければ、人間には見えない。
リアルが人形の傍らに膝を付き、検分を始める。
人形の顔に当たる部分を撫でたり、スカートをめくったり。
しかし、物の数分で腰を上げた。
「手紙は胸ポケットにあったの?」
「ああ、幸運にも燃えずに残っていた」
真樹が手紙を差し出した。




