表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/114

十月十七日(木) -6-

「な、なんでそれを」

 

 リアルの指摘に反射的に声が漏れた。

 慌てて口を噤むが、時既に遅し。

 

「状況を考えると、この部屋を荒らした人間は昼休みに来たんだと思ってね。さて、一応だけど反論を聞いておこうかな」

「ぜ、全部ただの屁理屈じゃないか!」

「あら、アタシの分析を屁理屈扱いする気? 失礼ね」

「だって、そうじゃん。何か証拠でもあるの!」

「ほらきた。往生際の悪い犯人が口にする定番台詞だよ」

 

 リアルが深く重い溜息をついた。

 

「でも、それは一理あるかな。残念ながら、物証は今ないのよね」

「ほら、やっぱり。ただの理屈を捏ねてるだけじゃん。まったくバカにしてさ!」


 勢いを得た美佳子が言い放った。

 

「人を犯人扱いするなんてさ。絶対に許さないよ、生徒会に訴えて……って、何がおかしいの!」

 

 くすくすと笑いをこぼすリアルに、美佳子が吠える。

 

「いやいや、ごめんごめん。ついついね」

「その態度、人をバカにするにもほどがあるよ!」

 

 悪びれる様子のない口先だけの謝罪が、更に美佳子の怒りに油を注ぐ。

 

「あはは。まあ、そう怒らないでよ。言ったでしょ、今は物証がないって、だから探しに行ってもらってるの。アンタの鞄からある物を、ね」

 

 美佳子の動きが止まった。

 高潮していた頬から、瞬く間に血の気が引いていく。

 

「そして、見つけて戻ってきたというわけだ」

 

 女性にしては低い声と共に、百八十センチを超える分厚い身体が部屋に入ってきた。

 

「鷹壱先輩!」

「まったく遅いわね、ハラハラしちゃったわよ」

 

 ハチとリアルの声が迎える。

 

「人を引っ掛けるのは好きではないがな」

 

 そう言いながら、手にしていたビニール袋を美佳子の方に向けた。

 

「お前の鞄の中にあったネガだ」

 

 落ち着いた、それでも圧力のこもった口調だった。

 それは風紀委員長としてアカデミーの風紀を維持してきた自負と自信、責任感が生む物に他ならない。

 

「何故、これをお前が持っていたのか。納得のいく説明を聞かせてもらおうか」

「そ、それは、その、あの」

 

 勢いの削がれてしまった美佳子に抗する術はなかった。

 

「なんか、美味しいトコを取られちゃったわね」

 

 ハチにこっそり愚痴るリアルだが、その表情に不満は見えない。

 

「ダメだよ、そんな言い方しちゃ。でも、これで一段落だね」

 

 ハチが胸を撫で下ろしかけた時だった。

 

「そのネガはわたくしが借りていたものです。今日の昼休みにお返ししたのですよ」

 

 ドアから声が飛び込んできた。

 穏やかでどことなく人を安心させる色を含んだ物だった。

 

 全員が一斉に視線を向ける。

 その先に立つのは、福与かで小柄な少女。

 

「純理」

 

 美佳子がほっと安堵の息をついた。

 

「米川先輩」

「あら、八房さん、先日はどうも」

 

 ゆっくりと優雅に会釈した。

 慌ててハチも頭を下げる。

 

「なんだ、お前。ここは立入禁止だ」

「解っております。だから立ち入ってないではありませんか」

 

 ギロリと睨みつける真樹の視線を優しい微笑で受け流す。

 

 純理は部屋の外に立っている。彼女の主張は正しい。

 それ故に真樹の癇に障ったのだろう。

 

「邪魔をするなと言っている! 誰か、このバカを摘まみ出せ!」

 

 感情に任せて、外で待機している風紀委員に指示を出す。

 

「はい、ちょっとストップ」

 

 そこでリアルが割って入った。

 

「アンタ、米川純理ね」

「あら、年長者をアンタ呼ばわりするのは感心できませんよ」

「いいの、アタシは気にしないから。それよりもちょっと聞かせてもらえる?」

 

 そう言って、純理を室内に招き入れた。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ