十月十七日(木) -3-
「わざわざごめんね。近くなんだし、直接訪ねるからって言ったんだけど。風紀委員長さんが現場に呼べって言うからさ」
すらすらと嘘をつくリアルに、ハチは感嘆半分、呆れ半分の複雑な顔になる。
「いや、いいよ。金曜はそれほど忙しくないから。それにしても酷いね。話には聞いてたんだけど、ここまで散らかされてるとは思わなかったよ」
「ここまで散らかさなくていいのにね」
「ホントにそうだよ。ところで、これってさ」
美佳子がちらりと真樹の方に目をやった。
「来訪者関連の事件においては、風紀委員とこいつは協力するよう、生徒会長に厳命されている。こいつの質問は風紀委員と同等の調査権限に基づく物だと思ってくれていい」
「つまりは取り調べってこと、だよね?」
「そう言ったつもりはない。それとも取り調べられるような心当たりがあるのか?」
「そんなのあるわけないよ」
「どうかな。第四新聞部は低俗なゴシップ誌だ。今回の事件に関与している可能性がある」
真樹と美佳子。
二人の間で緊張感が高まっていく。
「そういう言い方は失礼でしょ。まったく」
リアルが割って入る形になった。
「ごめんね。少し確認したいことがあるだけなのよ」
美佳子に手を合わせて、リアルが小さく謝罪を述べた。と真樹に向かい、
「アンタさ、少し離れててくれない?」
パタパタ手を動かして追い払う仕草を見せる。
「ふん、勝手にしろ」
あまりに人をバカにした態度に、真樹がむっとして背中を向ける。
そこで近くのハチと視線が合った。途端に小さく苦笑を浮かべる。
「こういうのは苦手だ」
声には出さず口だけで、そう伝えた。
警戒してくる美佳子を一芝居打って引っ掛けるのが、リアルの提案だった。
嫌がるかと思った真樹もあっさり了承し、安っぽい茶番を即興で用意したのだ。
真樹が距離を置いた事で、美佳子には安心した様子が見て取れた。
リアルの目論見通り。
「で、とりあえず質問いいかな?」
「うん、いいよ。ウチで答えられる範囲ならだけど」
「大したことじゃないから楽に答えてね。この部屋ってさ、五つの新聞部が共同で借りてるって聞いたんだけど?」
「うん、新聞部全体で保管庫に使ってるんだ。ネガとか原稿のね」
「家賃はどうなってるの?」
「家賃? ああ、部屋の使用料だね。それも皆で折半だよ」
「そりゃ、売れ行きの悪い新聞部には辛いとこだね」
「それってウチらのことかな。ハッキリ言わせてもらうけど、すっごく辛いよ」
大袈裟に肩を竦める。
リラックスしてきたのか、美佳子らしい快活な受け答えだ。
「施錠はどうしてるの? 共同で使うから鍵を掛けないとか?」
「それは有り得ないよ。放課後、誰か人がいる時以外は、ちゃんと鍵を掛けてるから」
「でも、それじゃ困るんじゃない。放課後以外に急に写真が必要になったりしたら」
「鍵は各新聞部にあるんだ。それぞれの部長が責任持って保管することになってる」
「じゃあ、昨日も施錠されていたのね」
「確証があるわけじゃないけど、されてたはずだよ」
「そうなると犯人は昨日部員達が引き上げてから、今日の放課後までの時間に侵入して、力一杯散らかしたわけだ。でも、何が目的だったんだろ」
腕を組んで、大きく首を捻った。
「あの落書きなんだけどさ」
やや遠慮がちに美佳子が壁を、書かれた赤い文字を指し示す。
「下らぬ詮索を続けるなって書いてあるよね。警告なのかも知れないよ」
「そういう風にも解釈できるんだ。ジャーナリストの勘ってやつ?」




