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十月十七日(木) -2-

                    ※ ※ ※

 

 

 分厚いカーテンの掛かった室内を、弱い蛍光灯が照らしていた。

 教室と同じくらいの広さの床は、正に足の踏み場もない状態だった。

 一面に散らばったネガや長方形の小箱。現像が終わった写真もあれば、ケースに入ったフィルムも転がっていた。

 壁際に並んでいるはずの荷物棚達も引き倒され、中身をぶちまけられている。

 

「第一発見者は第五新聞部の生徒だ。放課後、明日の準備の為に部屋を開けると、この有様だったそうだ」

「ふうん。なるほどね」

 

 真樹の簡潔な説明に、リアルが頷く。

 

 商用部棟の二階にあるこの部屋は、第一から第五までの新聞部が、主にネガや原稿の保管室として使用している部屋だった。

 普段のこの時間なら、準備をする新聞部の部員が忙しなく出入りしているはずだ。

 しかし、入室規制が敷かれた今、室内にいるのはリアル達三人だけ。

 

「正確な時間は解る?」

「十六時過ぎだと聞いている。それまでにこの部屋を使った人間はいないそうだ」

「で、あれがメッセージなわけね」

 

 正面、飾り気のないコンクリートの壁を指差す。

 そこに大きく記されているのは、毒々しい赤ペンキで書かれた文字だった。

 

「これ以上下らぬ詮索を続けるな。これは警告だ。来訪者より、か。センスの欠片もないわね。来訪者様とやらも、ジョークを学ぶべきだと思わない?」

「発見者の生徒は今、保健室だ」

 

 無駄口に付き合う気はないのだろう。

 真樹が次の情報を告げる。

 

「かなりショックを受けたようだ。休んでもらっている」

「そりゃ、びっくりしたでしょうね。気の毒な話」

「落ち着けば話ができると思うが」

「いいわ。別に聞きたいこともないし」

 

 足元のネガを拾い上げた。

 小さなビニールに小分けされており、ビニールの端には①という文字と先週の日付がマジックで記入されている。

 次の一つを拾う、二日後の日付と③の文字。

 

「まったく、期待外れもいいとこね」

 

 ぼそりと呟いた。

 

 傍らのハチが、その真意を尋ねようと口を開きかけた時。

 

「ね、風紀委員長。事情を聞きたい人がいるんだけど、呼んで来てもらえる?」

「仕方ないな。遺憾ではあるが貴様に協力するよう頼まれている」

「随分と協力的な態度ね。嬉しくなるわ」

「で、誰だ」

「桝村美佳子。第四新聞部の部長さん。今頃なら部室にいると思うんだけど」

「部室なら同じ階だ。直接行けばいいだろうが」

「風紀委員に連れてきてもらう方が円滑に進むのよ」

「仕方ない。会長直々に協力を頼まれているからな」

 

 心底しぶしぶ感を出しつつ、部屋の外に待機していた風紀委員の一人を呼び付ける。

 

 リアルの視線が真樹からハチに移動した。

 

「さて、ここで問題よ」

「ほへ?」

「賢明な来訪者様は迂闊にも、大きなミスをしてしまいました。それはなんだと思う?」

「そ、そんなのいきなり言われても」

「制限時間は部長さんが来るまで、ね」

 

 一方的にそう告げると、嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

 

                    ※ ※ ※

 

 

 数分後、風紀委員に連れられて美佳子がやってきた。

 その顔は緊張で強張っている。

 

「うん、正解ではないけど、いい線いってるわね。ギリギリ合格ラインかな」

 

 ハチと話し込んでいたリアルが美佳子の方を向いた。

 途端に人懐っこい笑みになる。

 つられて美佳子の口元も微かに緩んだ。


 


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