十月十五日(火) -6-
最近、七人目の来訪者についての噂が、ネット上で話題になっているらしい。
アカデミーではネットの使用には事前の申告が必要となっているが、完全に禁止されているわけではない。
いずれ外部に漏れるのは予想の範疇であった。が、想定以上に伝播が早く、かなり尾ひれも付いているそうだ。
ここ数日、興味本位の連中に混じり、マスコミからの問い合わせまで来ており、生徒会でも対応に追われているという。
この事態を打開するには、一刻も早く事件を解決せねばならない。
「神有際が近いってのに、副会長が頭を抱えていたわよ。まあ、会長さんは人の噂も七十五日って笑い飛ばしたらしいけど」
「そんなにかかったら、神有際も終わっちゃうね」
「まあ、変な噂が流れたら、怖い物見たさの来客も……」
ふと、言葉を止めた。
「どうしたの? あ、また誰か来たみたい」
「またなの。こんな夜中に迷惑な話よね」
リアルが不機嫌な顔になる。
「もう、面倒だなぁ。居留守しちゃおうかな」
「ダメだよ。ちゃんと出てあげないと」
ドンドンとドアが叩かれた。
「今、開けるわよ。まったく、夜遅くに騒いだら近所迷惑でしょ」
「と言っても、この寮にはリアルしか住んでないんだけど」
「はいはい、今、出ますってば!」
激しくなるノックに声を荒げながらドアを開ける。
「リアル!」
「ハチ、どうしたの? 何かあったの?」
飛び込んできたハチに、少々面食らった。
「リアル、ね、聞いてよ。あのねあのね」
「はい。ストップ!」
ハチの眼前でリアルが、ぱんと手を叩く。
いきなりの行動に、ハチがびっくりして言葉を飲み込んだ。
「まあ、上がって。一息ついてから話を聞くわ」
少し落ち着きを取り戻したハチが小さく頷いた。
部屋に上がり、いつもの通りちゃぶ台の前に座る。
「今日はお茶を入れ替えてばかりね」
暖かい湯気を上げる湯のみを、ハチと自分の前に置きながら一人愚痴る。
「さっきまで副会長が来てたのよ」
「副会長が、なんの用で?」
「まあ、世間話みたいなもんかな」
「リアルと副会長が世間話?」
ハチの知る限り、他愛ない雑談という単語が最も似合わない二人である。
それがこの狭い部屋で、どんな会話をしていたのか、想像すらできない。
「まあ、それはいいとして。何か用があったんでしょ」
「そうだ! リアル、もうこの事件に拘るのは止めようよ!」
「いきなり何言ってんの?」
「このままじゃ危ないんだよ! 二人とも殺されちゃうよ!」
「殺される? アタシ達が? 誰に?」
「来訪者に、だよ!」
「何を言い出すかと思えば、そんなメルヘンチックな話を……」
「ホントなんだよ!」
あまりの剣幕に、リアルが言葉を止めた。
「六人目は来訪者の邪魔をして殺されたんだよ! 私たちだって! 私たちだって!」
「解ったから。ちょっと落ち着いて」
ハチの両肩にそっと手を置いた。
優しい感触に少し安心して、ハチが大きく息を吐く。
「とりあえず、あったことを全部話してくれる?」
小さく頷くと、食堂での件を話した。
純理の忠告。自身が感じた不気味な気配。
やや感情が先行し、たどたどしくなる説明を、リアルはただ静かに聞いていた。
「なるほど、話は解ったわ。つまり、ハチはこの件から手を引きたいのね」
「うん。でも……」
「解った。アシスタントを解任するわ。短い間だったけど、すっごく助かった。ありがとね」
あっさりしたリアクションに、ハチは当惑してしまう。




