表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/114

十月十五日(火) -1-

十月十五日(火)


 午後八時。第六寮、リアルの部屋。

 

 そのちゃぶ台では、厚みのあるハンバーグが柔らかな湯気を上げていた。

 箸を刺すと、じわじわと肉汁がしみ出る。完璧な焼き加減。

 

 適度な大きさに切り分けて口に運ぶ。

 もぐもぐと咀嚼。ごくんと飲み込んだ。

 

「うわぉ、やっぱりミノリのハンバーグは最高ね」

 

 リアルの歓喜に対面のミノリが目を細めた。

 

 今日の彼女は珍妙なスタイルではなく、室内着である紺色ジャージにエプロン姿。

 一方のリアルは、オバケカボチャがプリントされた橙のパジャマ。

 子供向けのデザインが似合っている。

 

「ハンバーグのコツは火の通し方なんだよ。蒸して仕上げればジューシーになるの」

「料理の腕だけは大したもんね」

「リアルも料理くらいできるようにならないと。いつもインスタントで済ませちゃうんだから」

 

 ゴミ箱に突っ込まれたカップ麺の容器に嘆息する。

 

「しょうがないでしょ。人間には得手不得手ってのがあるんだし」

「私が料理を作ってあげられるのは、リアルがアカデミーにいる間だけなんだよ。卒業したら、ずっと心配しないといけないじゃない」

 

 困った表情を見せる。

 

「解った解った。じゃあ、ミノリが教えてよ」

「え、私なんかの料理でいいの?」

「ミノリの料理だから教えて欲しいのよ」

「そう言われると照れちゃうけど、卒業までに全部教えてあげる」

 

 小柄な割りに豪快に食べるリアルを、湯呑みを手にしたミノリが見ながら世間話に興じる。

 一風変わっているが、リアルの部屋ではごく当たり前の夕食風景だ。

 

「ふう。美味しかった」

 

 ゆったり三十分。

 食事を終えたリアルが満足そうにお腹をさする。

 

「もう、行儀悪いよ。それに、足を組んで座っちゃダメだってば」

「大丈夫よ。スカートじゃないんだから。見えるわけじゃないし」

「だから、見える見えないじゃなくて、心構えの問題なんだって」

 

 食後のお茶を渡しながら、慣れっこになったやり取りをする。

 

「ところで、ミノリ。なんか解った?」

 

 湯飲みに砂糖を落としながら、調査を依頼していた件に入った。

 

「三十年くらい前までは調べられたんだけど。六つも事件や事故が起こった記録はなかったよ」

「妙ね。七不思議なんてのは、必ずベースになる伝承があるはずなんだけど」

「でもね、ちょっと変な事件があったよ。五人の生徒が、次々と退学したっていう話」

「なんか事件でも起こしたの?」

「ううん、全員が自主退学。しかも全員同じクラブに所属してた子達なんだよ」

「興味深いわね。どのくらい前? そのクラブって何だか解る?」

「うん。二十二年前、オカルト研究部って文化部。なんか如何わしい響きがあるけど、実際には集まって怪談話とかする程度の活動だったみたいだよ」

「オカルト研究部! ちょっと詳しく聞かせて」

「うん、いいよ。夏休みの終わり頃の話なんだけど……」

 

 二十二年前。

 夏休みの終わり頃だったとされる。

 

 長期休暇は本土で家族と過ごすのがアカデミー生にとっては普通である。

 しかし、オカルト研究部の五人は、帰省を一週間早く切り上げ、アカデミーに戻ったというのだ。

 そして、体育館を一晩借り切り、合宿と称するイベントを行ったそうだ。

 

 普段、運動部が交代で使っている体育館を、一般生徒が独占できるのは長期休暇しか機会がない。

 つまり、この合宿のために、アカデミーに早く戻ったと考えられる。

 

 その合宿の数日後、夏休みが明ける直前に五人がアカデミーへの退学届けを出した。

 理由は個人的な都合という事で、特に記録は残っていない。

 

「ただね。その退学届けを受理した先生が日誌に記してるの。彼女達はすっごく怯えていたって。顔色も悪くて、殆ど眠れていないようだったって。それにね」

 

 言葉を止めて、溜めを作った。

 ぐっとリアルの方に顔を近づけ、声のトーンを少し下げる。

 

「彼女達は、何かに追われているみたいだったって」

 

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ