表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/114

十月十一日(金) -15-

「まあまあ、みんな褒めてるんだから」

「ぜっんぜん! 褒めてないよ!」

「あはは。怒らないでよ、ハチ。まあ、それはともかく」

 

 小さく咳払いして、真剣な顔に戻す。

 

「会長様、人形は生徒会の倉庫に運んであるって言ってたわね。ちょっと調べさせて欲しいんだけど」

「いいよ。今から直ぐに……」

「月曜でいいわ。今日はもう遅いしね」

「え? 月曜?」

 

 意外だったのだろう。彩音の声が半音上がった。

 

「今からでもいいよ。ね、沙耶」

「そうですね。まったく問題ありませんが」

「もう、遅いしね。今日はこれくらいで十分でしょ」

 

 既に日は完全に沈んでいた。

 時刻は午後七時になろうとしている。

 

「んなわけで今日は解散。お疲れ様でしたってことで」

 

 一方的にそう告げると、踵を返して昇降口に歩を進める。

 と、ドアに手を触れた所で足を止め、首だけで振り返った。

 

「あ、そうだ。アタシへの依頼は犯人達を捕まえる、でいいのかな?」

 

 今更の確認に沙耶が怪訝な表情を浮かべる。

 

「もちろんです。できるだけ速やかに……」

「違うわ」

 

 彩音が沙耶を遮った。いつになく真面目な顔で続ける。

 

「事件の真相を明らかにして欲しいの。誰が、何の為に、こんな悪戯をしたのか」

「了解よ、生徒会長様。じゃ、また月曜日に」

 

 挨拶代わりに軽く右手を上げて、そのまま階段の下に消えて行く。

 

「待ってよ、リアル。あの、じゃあ私も失礼します。ね、待ってってば」

 

 ぺこりと頭を下げて、ハチが追い掛ける。

 

「あの態度、なんと身勝手な」

「しかし、凄い方ですね。頼りになると言えばなりますが」

「頭の回転は早いし、大したもんね」

 

 残された三人が、リアルの印象を交換した。

 

 

                    ※ ※ ※

 

 

 ぽんぽんと小気味良く階段を駆け下りていくリアルに、ハチが追い付けたのは一階だった。

 そこでリアルが足を止めてハチを待っていたのだ。

 

「酷いよ。先に帰っちゃうなんて」

「ちゃんと待っててあげてるでしょ」

 

 ハチの不満を、涼しい顔で受け流す。

 

「で、なに? アタシに聞いておきたいことがあるんでしょ」

「リアル、どうして来訪者は二枚目の手紙を隠してあったのかな?」

「どういう意味?」

「来訪者からの手紙だよ。ポケットに入ってたよね。メッセージを伝えるなら、背中に貼り付けておくとか。もっと目立つ方法にするのが普通なんじゃないかなって」

「そこに気付くなんて、なかなか鋭いわね。いいわ。寮に戻りながら説明してあげる」 

 

 そう告げると返事も待たずに歩き始める。

 取り残されないようハチは急いで左に並んだ。

 

「ハチの言うとおり、来訪者は二枚目の手紙が見つかりにくいように隠していた。これについて、アタシは風紀委員長が原因だろうって睨んでる」

「え?」

 

 風紀委員長である真樹は、ハチにとっては直属の上司にあたる。

 融通の利かない厳しい人間ではあるが、職務に忠実で信頼できる。

 その真樹が如何なる理由になるのか。話が見えない。

 

「誤解しないで。アタシはあの子を気に入ってるの。頭はガチガチで話になんないけど、実にからかいがいのある貴重な人材ね」

「その言い方は酷いよ」

「褒めてるつもりなんだけど」

「褒め言葉になってないから」

「あはは。でもね、あの子は忠実で頭が固すぎるのよね。もし、風紀委員長が最初にメッセージを見つけたら、どうすると思う?」

「それは、ちゃんと会長に報告を……」

 

 ここまで言葉にして別の可能性が浮かんだ。

 

「……しないかも知れない」

「そうね。会長に余計な負担を掛けまいとして握り潰す。ただの悪戯ってことにして、あとは風紀委員で調査すればいいって判断するわ。野次馬が集まる前に対処できるし、風紀委員なら緘口令を敷くこともできる」

「だから見つかりにくいように隠したってこと? でも、それだと、メッセージを伝えられないかも知れないよ。実際、私がいなかったら、誰も気付かない可能性もあったんだし」

 

 ハチがちょっと自慢気に胸を反らす。

 

「それはないわ。絶対に誰かが気付くことになる」

 

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ