表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/114

十月十一日(金) -10-

「こんな悪戯は自分達風紀委員だけで十分。こんな奴に……」

「これからは協力して捜査にあたってください。これは生徒会の決定です」

 

 沙耶の冷たい言い方に、真樹が言葉を飲んだ。

 押さえきれない感情が顔を赤黒く染めていく。

 

「先輩、そんな怖い顔しないで」

 

 慌てて彩音が割り込んだ。

 

「私も沙耶も鷹壱先輩を、すっごく頼りにしてるんだから。私達生徒会が運営できているのは、風紀委員が支えてくれているからだって、いつも感謝してる」

「会長……」

 

 お世辞を含んでいるのは解る。

 それでも、朴訥な真樹には嬉しい言葉だった。

 

「リアルちゃんの件は私と沙耶で決めたことなの。でも、鷹壱先輩が反対だと言うなら」

「いえ、自分はただの風紀委員、生徒会の決定に異を唱えるつもりはありません」

「ありがとう。でも、もし私達の判断に誤りがある思ったら、どんな時でも注意して欲しいの。良き先輩として」

「勿体ないお言葉。胸の奥にしまっておきます」

「ふうん、なるほどね」

 

 二人のやり取りを聞いていたリアルが小さく呟いた。

 

「人心をコントロールするのに長けているのね。一年で生徒会長になる人は違うわ」

「リアル、失礼だよ。褒めてるのよって言うのは解ってるけど」

「褒める、ね。まあ感心はしてるわよ」

 

 真樹が、ひそひそ話しているリアルの方に向き直った。

 その顔からは幾分か怒りが引いている。

 

「不満がないと言えば嘘になるが、協力できることは協力しよう」

「静かに黙ってくれていれば、それが最大の協力になるから」

「では会長、中にどうぞ」

 

 挑発めいたリアルの言葉を流し、四人を中に通した。

 

 分厚い遮光カーテンが閉められた室内は、蛍光灯の弱い明かりだけで薄暗かった。

 

 壁際の棚にはデッサン用の石膏像が並び、部屋の隅にはイーゼルが畳まれた状態で置かれている。

 窓際に積み上げられたダンボールの中身は絵の具や画材。

 分厚い紙で丁寧に包装され、床に重ねられているのは、生徒達の描き上げた作品だろう。

 

 部屋の中央に六段ステップの脚立が立っていた。

 高さ二メートル近くになる最上段の足場から人形がロープでぶら下げられている。

 

 ロープは人形の首に結ばれていた。

 首吊りを模しているのが誰の目にも解る。

 

「二人目は首を吊る。やっぱり、七不思議の通りなんだ」

 

 そうこぼしたハチの顔は完全に色を失っていた。

 

「ハチ、七不思議ってなに?」

「え、リアル知らないの? 『七人目の来訪者』だよ。アカデミーの七不思議の」

「ふうん、そんなのもあるんだ。アタシが知ってるのは『第六寮の幽霊』くらいね」

「鷹壱先輩、痛ましいから、下ろしてあげて欲しいんだけど」

「ちょっと待って」

 

 彩音の指示をリアルが遮る。

 

 不愉快な顔を見せつつも、真樹が動きを止めた。

 

「もうちょっと見せて欲しいのよね」

 

 脚立の周りをゆっくりと歩きながら、人形を注視する。

 

 人形と言っても一昨日の物ほど精巧ではなかった。

 アカデミーの制服を着ている点は同じだが、身体つきも不自然に細身。

 袖口から覗く手にしても、指先までちゃんと作られてはいない。

 どんな状況でも人間と見間違う事はないだろう。

 

 リアルの右手が軽く触れると、人形がふらふらと揺れた。

 

「ずいぶんと軽いわね。前の人形はかなり重かったと聞いたけど?」

「うん。私だけじゃ運べなかったくらいね。三十キロ近くあったんじゃないかな」

「なるほど、ね」

 

 彩音の答えにリアルが頷く。

 

「リアル、その人形の胸ポケット、何か入っているよ」

 

 脚立から離れて見ていたハチが、恐る恐る声を掛けた。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ