十月九日(水) -11-
「誰、こんな悪戯したの。人騒がせが過ぎるよ。先生に言いつけちゃうからね」
ぶうっと頬を膨らます。
しかし、その顔は騙された怒りよりも、投身自殺や事故でなかった事に対する安心の色が強く浮かんでいた。
「でさ、私がこれを片付けるわけ?」
「会長、生徒を代表してお願いします!」
「よおし、久しぶりの見せ場だね。みんな、私の活躍を刮目して見るように!」
「流石、会長!」
野次馬の無責任なエールに、手を振って応える。
こういう天真爛漫で冗談を解するところが、真面目一徹の生徒会長と違う部分だ。
とりあえず身体を引き起こそうと、肩の部分に手を掛けるが。
「うわ、案外重い。っていうかダイエットしなさいよ」
ぱちんと頭を叩いた。
「乙女にとって体重は最も大切な問題なのよ。アカデミーのモットーは、清く正しく、そしてスマートに。あ、デザートは和食中心でお願いします」
「そんなの初めて聞きましたよ」
「来年の公約に掲げる予定だからよろしく!」
どっと笑いが起こる。この場にいた全員が、この趣味の悪い悪戯が大成功で終わったと思っていた。
だからそれが響いた時、誰もが自身の耳を疑った。
「私は七人目。君らが来訪者と呼ぶ者だ」
ボイスチェンジャーで電子的に加工された重い声だった。
「一人目の愚者はその屍を晒した。これから五人の愚者が我が道を開く。もうすぐだ。もうすぐ私はそちらに行く。私のもたらす物からは、誰も逃げられない」
じんわりと間があった。
状況に理解が追いつくまでの残酷な時間。
「七人目? あんなのただの噂話よね」
「有り得ないわよね。来訪者なんて。ね、そうよね」
ゆっくりと動揺が広がる。
「来訪者がもたらす物ってなんなの?」
「来訪者が携えてくる物は、狂気と絶望……」
動揺は不安に、不安はより強い恐怖に変わっていく。
「冗談は止めて! 私、全然関係ないから! 関係ないんだから!」
ヒステリックな叫びが引き金になった。
今までコミカルに見えた人形が、得体の知れない不気味な存在に変わる。
それから逃れる為に、周りを押し退け、遠ざかろうとするのは当然の反応かも知れない。
誰もが我先にと駆け出し、その行為が更なる混乱を生み出す。
「みんな、落ち着いて! こんなのただの悪戯だから!」
彩音が懸命に声を上げるが、それも全く効果がない。
恐慌が瞬く間に生徒達を包み込む。悲鳴が、怒声がパニックを彩った。




