表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
109/114

十月二十三日(水) -14-

「何故、お前は意識がある? お前は本当に人間なのか?」

「アタシはね。人間とは違うの。こう見えても天使様なんだから」

「それは面白い。なら天使らしく飛んでみるか」

 

 無造作に放り投げた。

 

 放物線を描いて、部屋の奥まで飛ぶ。

 落下する寸前、頭部を抱えて、致命傷を防ぐのが精一杯だった。

 床に叩きつけられた痛みに、くぐもった声を漏らす。

 

「お前はここで死ぬ。お前が最後の愚者、六人目になるのだ」

 

 大股でゆっくりと来訪者がリアルに迫る。

 

「こんなんで、へこたれる、もんか」

 

 痛みにめげそうになる自分を叱咤しながら、なんとか身体を起こそうとする。が、立て続けに受けたダメージは大きく過ぎた。

 結局、転がったまま、来訪者を見上げるのが精一杯だった。

 

「さっきの威勢はどうした? ん?」

 

 狂気に満ちた笑みを浮かべながら、リアルの小さな左手に足を乗せた。

 そのままじわじわと力を加える。

 

 ぺきっと小さい音が、嫌にはっきりと響いた。

 

 指の折れる激痛を、リアルはぐっと奥歯を噛み締めて耐える。

 

「なかなかいい根性だ。だが、どこまで続くかな」

「随分と趣味が悪いわね」

「くくく、それはお前流の褒め言葉だったな」

「ね、簡単な質問いい?」

「この期に及んでなんだ?」

「アンタさ、ひょっとして勝った気でいるんじゃない?」

 

 痛みで血の気が失せた顔に、それでも勝気な表情を作る。

 

「正直、危機一髪だった。数で押せば蝋燭なんて簡単に消せると思ってた。まさか、あんな奥の手があるなんて、想像もしてなかった」

「今更、己の無力さを嘆いても……」

「ホントにどうしようかと思ったわ。どうやって、アンタを蝋燭から引き離せばいいのかって」

「ん?」

「アンタと一緒なの。伝承に縛られてるの」

「なんの話だ?」

 

 尋ねる来訪者に、右手の指を三本立てて見せる。

 

「だから、三つの条件を満たす必要があったの」

 

 まったく見えない話に、来訪者が眉を潜ませる。

 

「最初の条件は時間。夕方以降から日の出までの間であること」

 

 指を一つ折った。

 

「次に場所。ここ。六寮だけに限られる」

 

 更に一つ指を減らす。

 

「最後に目撃者。一人でないとダメなの」

 

 最後の指を折って、目蓋を閉じた。

 

「解る? これで、全ての条件が満たせたの。ここまで来たら、後はアンタを蝋燭から引き離すだけだったのよね。で、アンタは今、間抜け面してここに立ってる。これがどういうことか解る?」

「何を言っているのかと聞いているんだ!」

「まったく鈍いわね。後ろを見てごらん」

 

 振り返った来訪者が、その濁った目を大きく見開いた。

 

 視線の先、数メートル向こう。

 残された蝋燭の前に、黒いセーラー服の少女が立っていた。

 

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ