十月二十三日(水) -10-
「まず、二人に聞いておくわ。犯行時刻の二十三時頃、どこで何をしてた?」
「私は来訪者の手紙に従って、待ち合わせ場所に向っていました」
「自分はアカデミーの見回り中だった」
「副会長は途中で風紀委員に会ったって言ってたわね」
「はい。見回り中の風紀委員の方達二人とすれ違いました」
「事実関係は後で確認するとして、とりあえずアリバイは問題なしね。となると、残ったのは」
真樹の方に目を向けた。
「まさか、自分を疑うというのか?」
「見回りをしてたということを証明できる人はいる?」
「自分は普段から一人で見回っている」
「つまり、アリバイはなしってことね」
「だが、自分は風紀委員長だ。その立場にある人間がこんなことをするはずがない!」
「それはどうでしょうかね」
冷たい一言を発したのは、純理だった。
「貴方は執拗なまでに、わたくしを犯人にしたがっていましたね。ひょっとすると、自身に追求が及ばないようにしたかったのではありませんか?」
「貴様! 言わせておけば!」
「止めなさい! 何をどう言おうと、真実は変わらないわ!」
細い指を突き付け、リアルが言い放つ。
「アリバイのないアンタが犯人よ!」
予想もしていなかった展開に全員が、直前に犯人説を口にした純理でさえ、ただ唖然とするばかりだった。
「なんてね。冗談に決まってるでしょ。アンタが来訪者なんて有り得ない。アタシが保証してあげる」
にんまりと犬歯を覗かせて、嬉しそうに断言した。
「来訪者は狡猾な人間よ。その来訪者がアリバイも準備しないはずがない。つまり明確なアリバイがないということが、犯人でない一番の証拠よ」
そう結論付けると、改めて全員を見渡す。
「さて、全員がめでたく容疑者から外れてしまったわね」
「では、ここにいない者の犯行ということでしょうか?」
尋ねる沙耶にリアルが小さく首を振った。
「来訪者は間違いなくこの中にいるわよ。私が来訪者ですって、ご丁寧にアピールしながらね。気付かない? この中にすっごく不自然な子がいるんだけど」
全員が視線を交わす。
だが、リアルの言う来訪者の証となる物が何を指すか解らない。
ぴったり一分。
明確な答えが出ないのを確認して、リアルが再び口を開く。
「少しポイントを変えてみよっか。来訪者はどうして、副会長を呼び出したりしたんだろ?」
最も根本的な問いに回帰した。
「沙耶に罪を押し付ける気だったんじゃない?」
「悪くない推測ね。でも、濡れ衣を被せるなら、米川純理だけで十分でしょ」
「捜査の撹乱を狙った、というのはどうでしょうか?」
「面白い発想だけど、副会長が現場に現れたからといって、撹乱効果は期待できないわね」
「副会長に桝村を発見させたかった。いや、それに意味はないな」
真樹の独り言に、リアルが頬を緩ませた。
「それが正解よ。来訪者は副会長に桝村美佳子を見つけさせる必要があったの」
「なんの為に、そんな必要があるんだ?」
「桝村美佳子を見つけた副会長は、間違いなく会長室に向かう。それが来訪者に必要な行動だったの」
「どういう意味だ?」
「まだ解らないの? いいわ。アタシが説明してあげる。その前に、火を消してくれる?」
「解った」
真樹が蝋燭を吹き消す。五つ目の火が消えた。
残りはハチの前にある一つだけだ。
「じゃあ、解りやすく流れを整理してみるわね。まず、来訪者は手紙を使って桝村美佳子を呼び出した。それから、やって来た彼女に背後から襲いかかり気絶させた」
「そして、手首を切って放置したわけだな」
「そう。これで準備は完了。後は副会長が桝村美佳子を見つけて、会長室に向かえば全て計画通り。ところが、ここで想定外のことが起こったの。なんだと思う?」




